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第101話:白いごはんが食べたくて

この物語の「現実世界」は、西暦2025年の日本をイメージしています。

101話を書いた頃、ちょうど米不足だったので、物語に組み込みました。

挿絵(By みてみん)


 現実世界、職場のドラッグストア隣のスーパー。

 ドラッグストアでの仕事を終えた後、俺は白い米を求めて馴染みの店内を歩いていた。


(雑穀米も美味いけど、たまには白飯も食いたいんだよなぁ)


 久々に買う白米は、随分と値上がりしている。

 そういえば、今年はお米が不作だとかパートのお姉さんたちが言ってたな。

 よく見れば、売ってる米もほとんどが今年のじゃなくて2~3年前のやつ?


「あれ? 来栖くんも買い物?」


 聞き覚えのある声がして振り向くと、隣の棚の前に御堂さんがいた。

 麦飯用のもち麦を手にしているのは、健康のためか白米節約のためか?


「はい。お米を買いに来たんですけど、随分値上がりしてるなぁって見てたところです」

「白米高いよね~、私はもち麦を混ぜてコストを下げてるわ」


 御堂さんが買うもち麦は、1キロ500円程度。

 俺の目の前の棚にある白米は、今年産のものは5キロで5000円、つまりキロ単価はもち麦の2倍くらいだ。


「俺、最近は雑穀ごはんを食べてるんですけど、白いごはんが恋しくなっちゃって……」

「わかるわかる、だって日本人だものね」


 俺が苦笑しつつ言ったら、御堂さんは同意して笑う。

 白いごはん、やっぱり食べたい。

 俺は比較的安価な古米を買って帰宅した。



 ◇◆◇◆◇



 異世界、神の島の自宅。

 一番安い古米を買って帰宅した俺は、何故古米が安いのか察した。


 なんか、変な臭いがする。

 油っぽいような、古新聞や段ボールみたいな臭い。


(これは美味しく頂けないなぁ……。高くても新米を買った方が良かったかな?)


 一瞬そう思った。

 けど、よく考えたら、俺にはあの魔法があるじゃないか。


 無属性魔法・時戻し。

 対象の「時間」を巻き戻す。


 以前にユガフ様が使ったところを見たときは、キャットフードを分解してできたコーンミールを、1本のトウモロコシに戻していたっけ。

 古米を新米にできるかな?

 わくわくしながら魔法を使ってみた。


(…やらかした……)


 結果、古米は新米どころか玄米……いや、種籾(たねもみ)になってしまった。

 時を戻し過ぎたようだ。

 籾殻や胚芽やぬかを取り除けば米として食べられるけど……まてよ?


(異世界で米を栽培できるかも?!)


 米作りに適しているのは、豊富で良質な水が確保できる、温暖で日照時間が長く、昼夜の寒暖差が大きい気候。

 あと、肥沃で保水性・通気性・排水性のバランスが良い、川が運んだ土砂などでできた広い平地。

 神の島は昼夜の寒暖差がほとんどない。

 それに俺は農業をやる気がない。

 米はどこかの農家さんに栽培して頂きたい。


(どこか向いている国はあるかな? 星の精霊たちに聞いてみよう)


 俺は種籾まで時を戻してしまった米を異空間倉庫に入れて、日没と共に西島へ空間移動した。



 ◇◆◇◆◇



 神々の諸島(アケト・マヌ)、西島。

 ライオンサイズのフサフサ銀猫に変身した俺は、星空を見上げて問いかける。


「星の精霊たちよ、この世界に温暖で日照時間が長く、昼夜の寒暖差が大きい気候の国はあるかい?」

「はい、それならここから遥か南方のシュッド国がそうですね」


 夜空からキラキラ煌めく星の精霊たちが降りてきて、すぐに教えてくれた。

 俺は更に問いかける。


「そこに豊富で良質な水が確保できる地域はあるかい? 肥沃で水はけがよい土壌で、近くに川があればいいな」

「それでしたら、シャン地方がそうですね」


 良さそうな地域があるらしい。

 更に聞いてみよう。


「そこで農業を営む人はいるかな? できれば新たな作物の栽培に挑戦しそうな人がいるといいのだけど」

「それなら、領主のデフィがいます」

「デフィは貴族ですが、作物を育てるのが大好きなんです」

「新たな作物の研究もしていますね」

「おぉ! 条件ピッタリだ」


 星の精霊たちの情報量が凄い。

 早速案内してもらおうと思った直後、別の精霊がハッと気付いて慌て始める。


「イリの神様! 大変! そのデフィが餓死しかけてます!」

「えぇっ?!」


 話を聞いた俺も焦る。

 とりあえず駆けつけて何か食べ物をあげよう。

 俺の異空間倉庫にはサントルの街や現実世界のスーパーで買った食材がたっぷり入ってるぞ。


「すぐ案内して!」

「はい、シュッド国のシャン地方、デフィが倒れている傍に空間を繋ぎます」


 領主が餓死しかけて倒れるって何なの?!

 困惑しながら、俺は星の精霊が開いた異空間トンネルに駆け込んだ。

挿絵代わりの画像は作者の保護猫たちです。

閲覧やイイネで入る収益は、保護猫たちのために使います。

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