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猫神様のペット可物件【完結・猫画像あり】  作者: BIRD


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第92話:エリクサーを作ろう

 神の島・森の中。

 傘のように枝葉を垂れさがらせた大樹の下で、大粒のサクランボみたいな果実を採りながら、俺はロティエル様を救助したときのことを考えていた。


 世界樹の実は、瀕死の人間でも全回復させる力をもっている。

 でもその効果を発揮するには、対象となる者が実を咀嚼したり飲み込んだりする必要があった。

 あのときのロティエル様は意識が無く、実を食べさせることはできなかった。

 意識があったとしても消化器官が損傷していたら、飲み込んでも吐いてしまったかもしれない。

 固形物ではなく液体なら、少しずつ流し込んで飲ませてあげられるかな?


(この実でポーションを作れないかな? 薬師のサヤさんなら分かるかも)


 俺は採集した世界樹の実を異空間倉庫に入れて、王都サントルに空間移動した。

 日没より少し前、サヤさんは玄関前に立ち、仕事に出かけるセーヤを送り出すところだった。


「クルスさんいらっしゃい。今日も卵採集に行くの?」

「あ、いや今日は違う用事で。薬師のサヤさんに頼みたいことがあって来ました」

「お薬の御相談かしら? じゃあ隣の建物へどうぞ」


 サヤさんはセーヤを送り出した後、自宅に隣接する建物を指し示す。

 まだ新築のログハウスは、サヤさんの仕事場だ。


「これを使ってポーションを作ることはできますか?」

「えっ、世界樹の実?! それもこんなにたくさん……クルスさん何者なの?」


 俺はログハウス内に設置された丸テーブルの上に籠盛り果実を置く。

 サヤさんは早速驚いている。


「ただの渡し屋ですよ。神の島に行ったときに採集してきたんです」

「神の島は選ばれし者しか入れない筈だけど……ううん、追及するのはやめておくわ」


 俺はあくまでも普通の人を装う。

 神の島に行けるどころか住んでるけど。さすがにそんなこと言えないからね。

 サヤさんは一瞬怪訝な顔をしたものの、苦笑して追及をやめた。


「結論から言うと、世界樹の実からはエリクサーが作れるわ」


 お仕事モードになり、サヤさんは薬師として何が作れるかを語る。

 エリクサーというと、現実世界のゲームでは体力と魔力を全回復させる希少なアイテムだ。

 この世界ではどんな効果があるんだろう?


「エリクサーは、どんな効果がありますか?」

「生きてさえいればどんな状態からでも完治する奇跡の薬よ。魔力も完全回復してくれるの」


 サヤさんの説明によれば、この世界のエリクサーも似たような効果をもつらしい。

 いざというときのために、辺境の騎士たちに渡しておこう。

 邪神の眷属討伐に行く冒険者たちにも持たせてあげたいな。


「じゃあ、この実を全部使って、作れるだけ作ってもらえますか?」

「はい。でも、もう1つ素材をお願いできるかしら? 果汁に混ぜる蜂蜜を切らしてしまって……」


 サヤさんはエリクサーの調薬に蜂蜜を使うらしい。

 蜂蜜か……異空間倉庫に常備してる世界樹の花蜜でいいかな?


「蜂蜜は今手元に無いですが、これならありますよ」

「え……えぇっ?!」


 異空間倉庫から瓶詰めした蜜を取り出してテーブルに置いたら、サヤさんは尻尾が膨らむほど驚いている。

 何故そんなに驚くんだろう?

 世界樹の実を持ってるなら、花蜜も持ってても不思議じゃないよね?


「そ、それは世界樹に集う妖精が持つという花蜜?」

「はい、お願いしたらいつも分けてくれるので、蜂蜜代わりに使ってます」

「……クルスくんそれ、死者蘇生効果があるって知ってる……?」

「?! ……ま、マジっすか……」


 世界樹の実と葉の効果は教わってたけど、蜜については何も聞いてなかった俺。

 ユガフ様はオリゴ糖や蜂蜜代わりにオススメしてくれただけだったし。

 知らずに蘇生薬を甘味料代わりにしてたことを、今初めて知った。


 おいおい、ヨーグルトにかけて食ってたよ蘇生薬……。

 御堂さんとデートしたときに、紅茶に入れて飲んだりもしたな……。


「この蜜を使うのなら、生きてても死んでても完全回復する【完全復活薬(レアルミナシオン)】が作れるわ。但し死んでから何日も経った死体には効かないけど……」


 驚きながらも、サヤさんはこの素材でできる薬の効果を教えてくれた。

 完全復活薬か……ゲームでラスボス戦頃に手に入れるようなアイテムだね!


「それ、騎士や冒険者にあげたら驚きます?」

「……間違いなく腰を抜かすと思うわ」


 神の島に住む俺にとっては身近な素材が、とんでもなく希少だったようだ。

 サヤさんはもう驚き過ぎて思考が1回転して落ち着いたのか、半目でツッコミを入れてくる。


「まあでも効果が高いのは良いことですよねっ? 足りなければ補充できるので、この蜜も使って調薬お願いします」

「はい、承りました」


 苦笑しつつ依頼する俺。

 サヤさんは冷静になりすぎて受付嬢みたいな口調で承諾する。


「夜明け前までには全部作り終えるから、その頃に受け取りに来てね」

「はい」


 その後、黙々と調薬作業を始めるサヤさん。

 邪魔をしないように、俺は補充用の蜜を貰いに神の島へ空間移動した。


挿絵(By みてみん)

挿絵代わりの画像は作者の保護猫たちです。

閲覧やイイネで入る収益は、保護猫たちのために使います。

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