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悪役令嬢は背中を押す

その日の護衛はダグラスだった。

学園からの帰り道、もちろん馬車の中には二人きりだ。

私の心臓はやっと通常運転を思い出している。


正直ドキドキしないわけではないけど、それよりも気になることが今はあって。


「陛下が何とおっしゃったのか聞いても?」


ダグラスはここ数日密かに王城に通っていた。

どうやって陛下に会っていたのかとか細かいことは聞いていない。


いやだって、世の中知らない方がいいことってあると思うんだよね。

本当、余計なことは知らないに限る。


「陛下は学園でのライアン殿下の言動や行動をご存知だ」


ほう。

ということは、曲がりなりにも婚約者がいるにもかかわらず、他のご令嬢と仲睦まじくしていることも知っているということね。


「もともとライアン殿下の資質に関しては心配されていたようだが、今の状況では心配は払拭されるどころか増すばかりで頭の痛い問題だと仰っていた」


となると、陛下としてはこのままライアンを後継者としていいのか迷っているということよね。

そこに今までずっと王城に近づかなかったダグラスがわざわざやって来た。

陛下がダグラスに対して王位継承の可能性を見いだしてもおかしくない。


陛下としては能力的にも心情的にもダグラスに継いでもらいたいだろな。

王妃との仲が不仲だと聞いたわけではないけれど、陛下が側妃をより愛していたことは当時から有名だったらしい。


最近私は側妃が亡くなったあたりのことを調べている。

陛下もダグラスも、いったい誰に側妃が毒殺されたか、真実を知りたいだろう。

とはいえ当時だって調べたであろうことを今更私が調べ直したところで簡単に新事実が発覚するとは思っていない。

それでも、時間が経ったからこそ犯人側が油断したり、もしくはそのことに関して何か知っている人が出てくる可能性はある。


現に当時何もことを起こさなかった両親が今レンブラント家に対して動いている状況を考えれば、何かしらのことが起こったのでなければ説明がつかない。


それに側妃を殺害した犯人やそれを企んだ者がいまだにどこかにいると思うと恐ろしさを感じた。


ダグラスの存在は秘匿されているけれど、その存在を知る人はそれなりにいる。

もちろん今のダグラスと結びつけられる人は限られるとはいえ、だ。


「……そして第一王子として戻ってこないかと聞かれたよ」


ああ、やっぱり。

陛下がそう希望するのもわかる。

どう考えたって、ライアンよりもダグラスの方が有能なのだから。


「ダグラスは陛下に対してわだかまりは無いのかしら?」

「わだかまり?」

「ええ。側妃殿下を亡くして八歳で王宮を出て以降は側妃殿下の伝手を頼って生きてきたんでしょう?父親でありながら守ってくれなかった陛下に対して何か思うところはないのかと思いまして」


母親を失ったら普通は父親を頼るものだ。

なのにダグラスは父である陛下を頼ることなく王宮を出ている。


「王だからといってすべてが思い通りになるわけではない。もし何でも思うようにできるならそれは暴君でしかないだろう。ま、たとえどれだけ護衛なりをつけてもらったとしても、魑魅魍魎の巣窟の王宮では完全なる身の安全は確保できない」


つまり、どれだけ陛下が手を尽くしたとしても命を脅かされる危険性があるくらいなら王宮から出した方がいいってこと?


「それに、母が頼れと教えてくれていた人たちは陛下からの命を受けていた。その後の影の存在といい、気にかけてくれていたことは確かだろう」


なるほど。

だからダグラスの中に陛下に対するわだかまりは無いのね。


「ならば陛下のお申し出を受けるおつもり?」

「どうだろうな。以前は気楽な身分で生きていきたいと思っていたが……。ライアン殿下があの状態で、さらには陛下からも戻ることを希望されている」


「王族として生まれ落ちたからには国を治める一助になるべきではないかと思ってはいるのだが……。母の事件を解決しない限りは戻れないとも思う」


結局のところダグラスはどこまでいっても王家の人間なのだ。

きっと側妃はノブレスオブリージュをちゃんと行ってきた人。

それはダグラスにも染みついていて。

ならばきっとやれることは一つだけ。


「解決すればいいのではなくて?」

「どういうことだ?」

「ダグラス、あなたの中でもう答えは出ているのよ」


だから私はビシッとダグラスを指差すと言った。


「側妃殿下の事件を解決し、陛下の元に戻るのでしょう?」

数多の作品の中から読んでいただきありがとうございます。


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