憧れの空間
バタンッ!!!
隣の家のドアが音をあげる。
あー、やっぱりか。
結局はこうなるだろうなって予想していた。予想していたからこそ、今まで動かなかったことに期待もしていた。
もしかしたら私の言うことを聞いてくれたのかな、なんて。
でもやっぱりあいつはそういうやつで、そんなやつだから心配で気になってしまうのだ。
3年前の夏ごろ、旅人は道に迷って暑いなかずっと歩き回っていたという知らない女性を家にあげた。
疲れてしまっていたので、冷たい飲み物でもと軽い気持ちだった。
そんな気持ちを踏みにじるように旅人はその女性に襲われたらしい。襲われたっていっても性的にとかじゃなくて、暴力的に、なんとかそれはすぐにその女性も捕まって、ほぼ未遂で終わった。
となりの家からガッシャン!!と大きな音がしたため様子を見に行った私が見た光景は、私を見て逃げたしていくその女性と、鍵のかかった廊下奥のトイレにこもっていた旅人の姿だった。
そんなことがあってから旅人は人を家にあげなくなった。私や透以外では、友達ですらあまりない。ほんとに用があるときくらいだ。
私はそれに優越感にひたっていた。それだけ旅人に信頼されているのだと。他の人とは明らかに差がある対応、そりゃあ表向きには感じられないが、心の余裕というのがあった。
でもそんなものは今日でなくなってしまった。
旅人が女性を再び家にあげたのだ。本人は親戚だとか言っていたけれど、そもそも旅人に外国の親戚なんて、そんなこと聞いたこともなければいるはずもない。
嘘をついて誤魔化していることがさらに不安をあおる。私に旅人の嘘なんて通用しないのに。
きっかけがあれば関係性なんて勝手に進むものだと思っていた。
きっかけさえあれば、そうにげつづけて幼なじみにはきっかけなんて来なかった。それはそうだ、お互いにいることが当たり前となってしまった中で進展なんてそう起こらない。
「あの二人の方がよっぽど運命的な出会いじゃん………」
一人なのに声に出してしまった。
旅人が気絶している間、気まずかったがルセラさんとしゃべっていた。確かにとても変な人だけれど、悪い人ではなかった。
ただただ、旅人との出会いを聞いたら、
「私が空から落ちてきたのをキャッチしてくれた」
どんな状況だよ!!!たとえそれが嘘であったとしても、二人はそれに比喩されるレベルの出会い方をしたのだろう。そうでなければ、旅人が家になんて招かない。
羨ましいーーー。
ただ家が隣だから、小さい頃からずっと一緒で、みんなにも優しいけれど私には特別心開いてくれていて。
楽しくなかったら今まで一緒になんて絶対にない。一緒にいることが幸せだったからここまで続いてきた。
それでも私の知らないところで運命とも呼べそうな出会い方をしてしまった。
別にお互いになんとも思っていなかったとしても、意識はしてしまう。
胸の痛みを感じて、やはり実感する。
ーーー私は旅人のことが好きなんだなってーーー
よし!
くよくよじめじめなんて私の性分じゃない!人を羨ましがるのはやめて、私は私にできることをしなくちゃ!
どうせならこの状況を私のきっかけにしてしまおう。
まだむこうは始まってすらいないのだから。
そう思って自分の家を出て、旅人の家へ。
「誰もいない家の鍵もかけずに飛び出していくなんて、」
胸はチクリと痛むが、もうそんなことは考えない!
しっかり帰りを待っていてあげなきゃ!




