始まりの時
全世界にダンジョンが現れてから、五十年の月日が流れた。
ダンジョンが出現した当初、各国は軍隊や自衛隊を派遣し、内部の探索を開始した。そこで人類は初めて「魔物」という存在を目にすることになる。
魔物を討伐した者には、不思議な現象が起こった。
目の前にステータス画面が現れたのだ。そこには名前や能力値とともに「LV」という項目が表示されていた。魔物を倒すことでレベルが上がり、身体能力も向上する。
この事実が判明すると、各国は軍隊を中心にダンジョンの探索と魔物の討伐を進めていった。
しかし、世界中に出現したダンジョンの数はあまりにも多すぎた。圧倒的に人手が足りない。
そして――最悪の事態が起こった。
ダンジョンブレイク。ダンジョン内部に存在していた魔物が地上へと溢れ出したのだ。
各国の軍隊だけでは対応しきれず、多くの犠牲者が出た。この事件をきっかけに、ダンジョンは軍や自衛隊だけが探索するものではなくなった。一定の条件を満たした一般人にも、ダンジョンへの立ち入りが認められるようになったのである。
もちろん、誰でも生きて帰れるわけではない。興味本位でダンジョンへ入り、そのまま命を落とす者も少なくなかった。
だが、魔物を倒してレベルを上げれば身体能力は向上する。レベルが上がるほど生存率も高くなり、やがてダンジョン探索は一つの職業として社会に定着していった。
さらに、ダンジョンからは地上には存在しない未知の鉱石や素材、魔道具などが発見された。一攫千金を狙う者たちが現れ、ダンジョンには毎日のように多くの探索者が訪れるようになった。
そして、ダンジョンが出現してから一年ほど過ぎた頃。
一人の探索者が、レベル10へと到達した。その瞬間――ステータス画面に、見慣れない文字が表示された。
『これ以上、レベルが上がることはありません』
探索者は困惑した。レベル10が限界。それが、この世界における人類の限界なのだと思われた。
ところが――別の探索者がレベル10へ到達した時、まったく違う現象が起こった。
『レベル10に到達しました』
『ジョブを選択してください』
その人物の前に複数の選択肢が表示された。戦士、剣士、格闘家、盗賊、黒魔道士、白魔道士……男は悩んだ末に「戦士」を選択した。
その時、身体能力が飛躍的に向上した。筋力、耐久力、敏捷性。それまでとは比較にならないほど、ステータスが上昇したのだ。
この出来事によって、人類は一つの事実を知る。
レベル10が限界ではない。レベル10に到達することで、初めて「ジョブ」という新たな力を得られる者が存在する。そして、それは全員ではなかった。
レベル10に到達した者の中でも、ジョブを得られる者と得られない者がいる。
レベル10。
それは、人類が次の段階へ進めるかどうかを決める、一つの大きな境界線となった。
それから五十年。
ダンジョンとレベル、そしてジョブは、人類の生活に当たり前のものとして定着していた。
これは、そんな世界で暮らす一人の青年の物語。




