お嬢様の夏
「(・・・暑い・・・・)」
頬を伝う汗を拭い、空を見上げる。どこまでも続く青空に入道雲が点々と浮かぶ。まるで空に白い王宮が何個も浮かんでいるような光景に私は目を細める。
ふわ、と熱気を含んだ風が私の前髪をさらっていく。
屈み込んだままぼんやり空を見上げる。ああ、あの雲に寝転んでみたい。寝転んで、雲に頬を寄せて好きなだけだらだらするのだ。だけど太陽に近すぎて暑いんだろうな。と太陽の日差しを手で避ける。
そうしているとまた額から汗が頬を伝っていった。地上で温められた熱が空へと向かって手を伸ばし姿を変化させる姿はとても美しいが、この暑さは尋常ではない。
「・・・・・・」
薬草を植えている庭も、朝水を与えたばかりだというのに土は既にからからになっており、どことなく草たちの元気もないように見えた。中には暑さに弱い薬草もあるので、また植え替えが必要かもしれない。
あとでケイトでも呼ぼうかな、と専属使用人の姿を思い出し、私は立ち上がると一度研究室へと戻ることにする。煉瓦でつくられた祖父の研究室はひんやりとしている。その研究室には薬品など温度調節が難しいものもある。人間よりも薬品のために用意された場所と言っても過言ではないそこは、夏は涼しいが冬はとても寒い。
今は夏なのでありがたいとしか思わないけれど、冬になったらいろいろ着込まないといけないなぁなんて思いながら研究室の椅子に座り、テーブルに広げていた文献を手に取る。その文献には氷属性の魔力を含んでいる魔鉱石について書かれており、なぜそんなものを読んでいるかと言えば暑いからだ。
壺の中に魔鉱石をいくつか入れ、それを抱えて涼もうと考えたからである。もしくは桶を水で浸し、そこに魔鉱石を入れて足を冷やすという手も考えた。つまり、何がなんでも暑いのが嫌なのでどうにかしたいというわけである。
ケイトも言っていたが、今年の夏はとても暑い。スペンサー家の面々はだらだらと扇子で顔を扇いだり、椅子にもたれかかって冷えたジュースを飲むという毎日を送っている。「もうこんな生活嫌ですぅ」とケイトが泣きついてきたので仕方なく始めた調査だったけれど、いつの間にか自分のために調べ始めていることにも薄々気づいている。
「・・・・・暑い・・・・」
文献で顔を扇ぐ。研究室は外よりも涼しいが、太陽の下にずっといたので体が火照っている。窓を開けても涼しい風なんて入ってこないし、むしろむわっとする。
私はその窓をじとっと眺めると、誰もいないのをいいことに商人の息子のような服のシャツに手を向ける。そしてボタンを一つ二つと外すと、そこを文献で扇いだ。いくらか涼しくなる。調子に乗って袖のボタンも外し、捲りあげる。いいぞいいぞ、とどんどん風を送り込んでいく。
「(あぁ〜涼しい・・・・)」
「お嬢様っ・・・・・!」
「わぁっ!」
「きゃあ!」
急にバンッと研究室のドアが勢いよく開かれる。そしてケイトが私を呼ぶ声が聞こえる。その声に驚いて慌ててそちらを見れば、私のはだけた様子にケイトが顔を手で覆って隠した。だけどちゃっかり目の前だけは手を退けている。
それから頬をほんのり赤らめたケイトが一度研究室から視線を外す。そしてなぜかギョッとした。わたわたと手を振って誰かをこちらへ来させたくなさそうな仕草を見せる。その様子を私は怪訝な顔をしながら眺める。誰だろうか、父はもう仕事に出ているし、執事長のジョージさんは朝から忙しそうにしていた。他の執事や使用人たちは私の実験道具になりたくないとあまり近寄らないし。
誰だ、と思いながらぼんやりケイトを見る。ケイトはどんどんこちらに近づいてくる誰かへと必死に合図を送るが結局思いは伝わらなかったらしい。
ひょい、とその誰かが研究室のドアからこちらを覗き込む。そして美しすぎてもはや人間ではない天使が驚いたように眉を上げ、私の瞳を見る。
「あ・・・・・」
「だ、っ・・・・なっ・・・・!」
なんでここにウィリアム様が。私はその場で肩を大きく揺らすとそのまま椅子から落ちる。人間って本当に驚くと椅子から落ちるんだなぁなんて他所で思いながら少し埃が舞っている天井を見つめる。
いや、何をそんな悠長にしているのだろうか。
「(ウィリアム様が来てる・・・・なんで、連絡なかったはず・・・)」
「ジェニファー?」
「・・・っ・・・・・!」
ひょい、と倒れたままの私をウィリアム様が顔を覗き込む様に身を乗り出す。私は目にも留まらぬ速さではだけたシャツを整えると、床から立ち上がりウィリアム様を見る。できるだけ遠くから。
研究室の隅に身を縮めている私にウィリアム様が眉を上げながらムッとする。腰に手をおいて「怒ってますよ」というポーズを取られても顔さえ見ることができない。
その様子に事情を知らないはずのケイトがにししと笑う。ケイトの顔は普通に見ることができるのでその表情に私もムッとする。だけど笑われている理由がなぜなのか『普通のお嬢様』の気持ちが分かるようになってからというものの、すぐに予想がついてしまって余計に顔に熱が集まった。
「(なんで『好きです』なんて言ってしまったんだろうか・・・!)」
中央司令部で魔獣使いとして働く魔術師のティミッドさんが思い人である王宮使用人のモディリーさんに告白をするということでサポートした件について。
ティミッドさんの応援をしていたはずなのに、なぜか自分の気持ちに気づくという摩訶不思議な出来事が起きた。あまりにもファンタジーな感情が急に募って溢れた。
熱に浮かされていたとはいえ、考えはまともだった。むしろいつもより頭の回転は早かったと思う。
だからこそ、私は自分の感情がただ熱に浮かされたから勘違いしたと言えない状況に混乱する。意識すれば意識するほどウィリアム様を見ることができない。というか同じ空間にいるだけで心臓が壊れそうである。
両頬を手で掴んで眉を下げる。その表情にケイトが「早く婚約しろ」と思っていたなど知らず、暑いからなのかそれとも恥ずかしいからなのか不明な額の汗を拭う。そうすると商人の息子のような服のシャツがじっとりと濡れた。
「ジェニファー」
「・・・・・・・・」
「挨拶もしてくれないのかい」
「・・・ご、ごきげんようウィリアム様」
「うん。こっちにおいで」
「・・・・い、今汗をかいているので・・・着替えてから向かいます」
「構わないよ」
「(私が構います・・・・!)」
全く動こうとしない私にテーブルの傍に立っているウィリアム様が腕を組んでため息をつく。それから
長い足を動かすとこちらへと歩み寄ってきた。すぐに逃げ出そうとするが、ウィリアム様から離れようと選んだ場所が悪く動けない。
そうこうしている間にウィリアム様が前に立つ。私はすぐに顔を俯かせるとその汗ばんだ頬にウィリアム様のひんやりとした手が触れた。
「お人形さん」
「・・・・・・・」
「・・・・汗、かいてるね」
すり、と親指の腹で頬を撫でられる。それが恥ずかしくてぐっと顔に力を入れて俯こうとする。それをぐぐっと力を入れてウィリアム様が押さえ込む。そうするとどうしても眠たげな瞼の下に転がる宝石のような深緑の瞳と目があってしまって心臓が跳ねる。
それが嫌で右手を上げて顔を隠そうとする。だけどその腕をウィリアム様が掴むとそっと自身へと引き寄せた。それからウィリアム様の肩に腕を乗せられる。今までよりもずっと近い距離に人間のものとは思えないような美しい顔が見える。前髪から覗く深緑の瞳が細められる。そして片方の口角だけ上げた。
な、何か悪いことを考えている。
その表情をウィリアム様が見せる時は、だいたい何か悪いことを企んでいる時だと最近覚えた。私は必死に離れようとするが身を寄せたウィリアム様が私を壁に押し付ける。煉瓦の壁がひんやりと汗ばんだ私の背中を冷やした。
「・・・・・・・」
「ふふ・・・・・」
そしてうっそりと生温かい瞳を向けると、その顔を傾けて私の肩に顔を埋める。ふわりと薫るウィリアム様の香水が鼻に届く。艶やかな髪が頬に触れてこそばゆい。
研究室のドアでこちらを凝視しているケイトと目が合う。というか見るな!
その目を見ていると恥ずかしくて死にそうなのでぎゅうと瞑る。それからごく、と喉を鳴らしてつばを飲み込むとウィリアム様にそれが伝わったらしく首元でクスと微笑まれた。
吐息が汗ばんだ首に触れる。それがこそばゆいというか気味の悪い感情を呼ぶ。変な声が出そうになって掴まれていない左手で口を覆う。その声を必死に抑えるような仕草にウィリアム様が煽られているとも知らず、なんとか離れようとするけど壁に押し付けられてしまってはどうすることもできない。
「・・・・っ・・・・」
「・・・・・・」
ウィリアム様のひんやりとした薄い唇が首に触れる。そしてそのまま食まれる。いつもなら、い、いやいつもという表現は嫌いだ。食まれる時はすぐに離れることが多いのに、今日はそのまま唇を首に寄せる。
どく、どくと脈が首を走る。その音を唇で感じているらしいウィリアム様が目を細める。もうこの方の本気なんて見たくない。今まで本領の少しを垣間見てきただけだったのに、最近はもう本領発揮をしているのではないかと思う。もうこの婀娜やかな仕草や目つきに耐えられない。
そっとウィリアム様の顔が離れる。やっと解放された私は壁に寄り掛かったままずるずると崩れる。
くすくすと上から声が聞こえるので笑われているらしい。どうぞ好きなだけ笑ってくれたらいい。私だってこんな腰が砕けるような格好をする私自身を嘲笑ってやりたい。
「お人形さん」
そう呟きながらウィリアム様が私と同じ視線まで屈み込む。膝の上に左腕を置いて、右腕をこちらへと伸ばす。そして真っ赤な顔で浅く息を繰り返す私の頬に手を添え、うっとりと頬を赤らめる。私の熱が移ったのかと思う様に頬を少しだけ赤らめるウィリアム様がニヒルに微笑む。
「今まで崩れ落ちるなんてなかったね?」
「・・・・・・」
「どうして今日はそこまで動揺しているんだろう」
「・・・・・」
「いつもしているじゃないか」
「・・・・・・!」
『いつも』と強調するように言うウィリアム様にこれ以上ないほど動揺する。き、気づいている。この方は気づいている。私が今まで顔を赤くしてもピシッと固まるだけだったのに、今日はやけに反応しているということに。
ウィリアム様が私の手を取る。そしてその手をご自身の頬へと添えると、少し顔を傾けながら眉を下げ、ゆるゆると唇を上げた。な、なんだその凶器のような美しさは。
わなわなと震えながらウィリアム様を見る。その色気がありすぎて人を殺しそうな表情に言葉を失う。代わりに伝えたいことがあると言いたげなウィリアム様が私の手を頬に押し付けながら口を開く。
「ジェニファー」
「・・・・・・」
「そこまで動揺する理由が分かるかい」
「・・・・・・・」
「・・・・言ってごらん」
「・・・わ、分かりません・・・・」
「・・・ふふ、そうだね、君は浅はかだから教えてあげないと分からないよね」
「・・・・・・・・」
「君が私を好きだからだよ」
「・・・・っ・・・・」
床に手をつき身を乗り出したウィリアム様が目の前まで顔を近づける。まだ何もしていないのに深緑の瞳がぐちりと揺れた気がした。それが嫌で顔を背けようとするが、その前に美しい顔をこてんと傾けたウィリアム様が唇に触れる。ひんやりとする唇が下唇を食む。
小さなリップ音を残して離れた顔が耳に寄せられる。
「私を好きだと気づいちゃったね」
「・・・・ウィ、ウィリアム様」
「私も君を好きだから何も問題ない」
「・・・・・・」
「私ももう我慢しなくていいんだよね。またこうやって倒れても起こしてあげるよ」
「・・・〜っ・・・ウィリアム様!」
耐えきれなくなってウィリアム様の肩を押す。するとやっとのことで離れてくれた。それからすぐにケラケラと笑われる。や、やっぱりからかっていたのだ。私はムッとしながらウィリアム様を見上げる。するとケラケラ笑うのを止め、ウィリアム様が幸せそうに顔を綻ばせながら頭をぽんと撫でた。
「ごめんね、あまりにもいじらしいから」
「・・・・・・・」
「はは、ほら立って」
ウィリアム様に腕を掴んでもらい、起き上がる。そして今更気づいたがケイトがドアに項垂れて浅く息を繰り返していた。ウィリアム様の色気にあてられたらしい。
「ケ、ケイトは孕んだかと思いました・・・・」
「(その表現止めたほうがいいと思う・・・・)」
「もうケイトはウィリアム様が研究室を立ち寄ることがあるならこの愛の巣には近づきません!」
「ケイト!」
愛の巣とはなんだ。じとっとした目をケイトに向けるがぷるぷる震えながら自分の体を抱きしめているので声を掛ける気にもならなかった。
そのケイトを見てウィリアム様がケラケラ笑う。そして私の汗ばんだシャツに触れるとそっと背中を押した。
「着替えておいで、ブライトの店に行こう」
「え・・・今からですか?」
「ん?私は構わないよ、さっきの続きをしても」
「・・・・・ケイト、今すぐ着替えの準備を」
「いいえお嬢様っ!どうぞ続行なさってください!」
「・・・・・・・・」
「ふふ・・・・・・」
全く意見の合わない専属使用人を睨みながらそれでもぐいぐいと背中を押して研究室を出ようとする。
だけどそれより前にウィリアム様がテーブルに置いていた文献を手に取りながら私の名前を呼ぶ。もう名前を呼ばれることすら恥ずかしい私は顔を赤くしながら振り返る。
「ジェニファー」
「は、はい」
「着替えたら、ジェニファーのお母様に私からも報告しようと思う。君が熱を出して言うタイミングを逃したままだったし、あれから忙しくて手紙も送れていないから」
「・・・・・な、何を報告するのですか」
「え?何って私たちがーーーー」
「・・・・・・・!」
「む・・・・・」
それ以上言うな、と言わんばかりに私は足早にウィリアム様に近づくと口の前に手を翳す。ふ、触れると苦しいのでちゃんと隙間を作る。
だけど急に不思議な行動をした私の様子にウィリアム様が『家族に知られたくないから言っていないんだな』と気付き、眉を顰める。
「・・・・ジェニファー」
「・・・・・・」
「まだ言ってなかったの?」
「(言えるわけない・・・言ったら家族は狂ってしまう・・・・)」
「・・・・・・」
「・・・・・」
お互い眉をぴくぴく動かすだけで会話をしない。その様子にケイトが『なにあの二人もう会話もいらない関係にまでなったの』と思っていたらしいが知らない。というか知りたくない。
ウィリアム様がため息をつく。そして私が翳していた手へ身を寄せると掌にキスを落とした。驚いてバッと離し眉を吊り上げるが顔が真っ赤なのであまり意味はなかった。
そんな私にウィリアム様はにこりと笑うと手を上げる。
「ほら、行っておいで」
「・・・・・・」
「早く行かないと私が先に報告してしまうかもね」
「・・・・い、行ってまいります」
「うん、行ってらっしゃい」
手を振って私を見送るウィリアム様がまた文献に目を戻す。私はきょとんとしているケイトの背中を押して一気に屋敷まで戻る。給仕室を抜け、廊下を走り、自室に戻ると自分から素っ裸になって湯船に入る。
その様子にケイトが何やら尋常じゃない事件が起きていると気づいたらしく、ぱぁと顔を綻ばせると手をわきわきさせながら私の体を洗っていく。私も自分で腕や足を洗うと早々に部屋へと戻り、ローブを着込むとドレッサーへと向かう。
複数の使用人の手では足りないと私も自分の髪を乾かす。その間にケイトが今日の洋服を用意しているようだった。夏にも入ったということで袖なしのワンピースにするらしい。涼しげな黄緑色のワンピースは亜麻布と呼ばれる薄い生地で作られているようだ。それだけでは体が透けてしまうので裏地にはさらりとした布がつけられていた。
それを頭から被り、急いでケイトを呼んで髪をセットしてもらう。夏の暑さが首元に籠もらないよう、編み込みをした髪を一つにまとめてお団子にする。最後に前髪を一度ばさっと顔にかけると、いつもより深く分け目を入れていく。七三分けよりも深い分け目により、私の額は前髪で隠される。
そして私の両肩をぽんっと叩くと鏡越しにケイトが声を張り上げる。
「次はお化粧ですっ!」
「はい、お願いします」
「お嬢様っ、今日は口紅何色にしましょうかね!」
「ケイトにお任せします」
「では淡いピンクにします!」
「はい。急いでください」
「(なんだか気合入ってるわね・・・あとで奥様に報告しなくっちゃっ・・・・!)」
そうケイトが思っているとも知らず、私はどんどん飾られていく顔をじっと見つめる。決してケイトの技を盗もうというわけではない。この間にもウィリアム様が私よりも先に『衝撃の事実』を家族に知らせてしまった場合を想定し、最悪の事態に備えられるだけの考えを巡らせていただけだ。
確実に、母とケイトがそれを知った場合スペンサー家は震撼する。
瞬く間に屋敷中に話が広まり、毎夜お祭り騒ぎをするに違いない。そんな中ウィリアム様を好きだと知られ毎日からかわれるなんてご免だ。心臓がもたない。
「終わりましたっ」
「行きましょう」
「うふふっ、早く未来の旦那様に会いたいんですねっ」
「そうではありませんが、そうです。・・・っ先に行きます!」
「・・・・・まぁ・・・・」
ケイトが私の様子に頬へ手を添えて驚く。中央司令部に行くようになってから、ウィリアム様に対しての感情に変化があると気づいていたケイトではあったが、その間に何かあったのだろうか。と考えを巡らせる。
事件の匂いがするわね。
そう思ったケイトがわくわくしながら自室を勢いよく飛び出し私の後を追う。毎日研究室に入り浸るお嬢様と日夜屋敷の掃除をしたり動き回る使用人の足では脚力が違う。足早に廊下を進む私に追いつくと、ケイトが胸の前で手を合わせにこにこと微笑む。
その表情に私は一抹の不安を抱きながら階段を駆け下り、エントランスへと向かう。すでに執事長のジョージさんがエントランスのソファの前で待機していた。ジョージさんは私のワンピース姿を見ると皺くちゃな顔をさらに皺くちゃにして微笑んだ。
「お嬢様、今日も可愛らしいですね」
「ありがとうございます。ウィリアム様はどちらに?客室ですか?」
いつもならジョージさんがすぐにドアを開いてくれるのだが、そうはしない。今は夏で日差しも強いのでもしかしたら客室で待っていただいているのかもしれない。そう思った私が客室へと視線を向けると、ジョージさんが首を横に振る。
「リビングで奥様と涼んでいらっしゃいますよ。あそこが一番涼しいので」
「リビ・・・・お母さ・・・・・」
「おやおや、今日は騒がしいですねぇ」
ジョージさんの言葉に私は眉を下げると急いで二階にあるリビングへと向かう。ケイトはとても楽しそうに後ろをついてくる。ジョージさんも私の様子に何か勘付いたようでケイトの横を歩く。だけど歳のせいか少しずつ遅れをとって行った。今日は申し訳ないが待っていてあげられない。
ほとんど走るようにしてリビングへと向かう。そしてそのリビングのドアを開けると、母とウィリアム様がリビングの大きなテーブルに向かい合って楽しそうに会話をしていた。
母はウィリアム様の姿にうっとりとしており、鼻の下を伸ばしている。もうお願いだから脳内お花畑になるのはやめてほしい。
私はすぐに母へと近づくと、眉を上げたまま見下ろす。娘の表情に母はきょとんとする。その様子に、まだウィリアム様が何も言っていないのだと気づく。もし言っていたのなら確実に私を抱きしめただろうから。
これ以上ここにウィリアム様をおいておくわけにはいかない。
私はウィリアム様へと視線を向ける。ウィリアム様もこちらを見てにこりと天使のように微笑む。その笑顔にゔ、と言葉を詰まらせる。
先ほどから仕草の忙しない私に母が立ち上がる。そしてなぜか私の腕を引いて隣に座らせた。なぜ座らせる!
「あらあらジェニファー、そんなにお母様がウィリアム様と話しているのが嫌なの?」
「(そうですと言いたいけど違う意味に捉えられそうだから言えない・・・・)」
「ほら、お出かけ前に涼んで行きなさいな。そして二人の熱いトークを聞かせてちょうだいっ」
「・・・・・・・」
「ケイト、ジェニファーにもジュース持ってきてあげて」
「はいっ奥様!」
「(もう出たいのに・・・・・!)」
どうして、と頭を抱える。その様子を見てウィリアム様がテーブルに肘をつきながらクスクスと微笑む。その笑顔に母が胸の前で手を合わせてうっとりする。そして私へと視線を向けると、なぜか顔を寄せてきた。
「ジェニファー、ちゃんと分かってる?」
「な、何をですか・・・・」
「ウィリアム様、髪を切ったんですって」
「え・・・・・」
初めて母に言われて気づく。
夏の暑さを避けるためか、ウィリアム様の襟足が少しだけ短くなっていた。前髪や横の髪はそのままにしているようだが、すっと長い首筋はすっきりとしている。だからだろうか、耳より上にある髪がふわふわと揺れているように見えた。
前髪から覗く深緑の瞳が窓から差し込む光で輝いて見える。
あれ?か、格好いい。
「は・・・・・」
「なんだか最近一段と色っぽくなったと思わない?」
「え、・・・・え?」
「何かしらねぇ、こう、もう一歩大人になったっていうの?今までも色っぽかったけど、艶やかさが増したというか・・・・」
「お、お母様・・・いいです、解説しなくて・・・」
「あ、分かった!ジェニファーを愛しているからね!」
「ぐっ・・・・・」
母の言葉に腹部を殴打されたような圧迫感があった。ウィリアム様の夏仕様のお姿を格好いいと思ってしまったところへ母からの追撃を受け、打ちのめされたような気がする。
私は胸を押さえ、テーブルに腕を乗せる。まるで毒薬を飲まされたような表情にウィリアム様が眉を上げる。それから何か声をかけようとウィリアム様が口を開くが、それよりも前に母が顔を綻ばせながらウィリアム様に声をかける。
「ウィリアム様っ、そうなんでしょう?」
「・・・・えぇと、どれについてでしょうか」
「今ジェニファーと話していたんですが、ウィリアム様が一段とお美しくなったなと思いましたのっ」
「はは、私がですか・・・?」
「ええ。髪を切られたからかと思ったんですが、それ以外にもありそうだなと。なのでどうしてそう思うのか話し合っていたんです」
「は、話し合ってないですお母様・・・一方的にお母様がーーーー」
「きっとウィリアム様が娘を愛しているからだという結論に至りました」
「お母様・・・・!」
もうこれ以上醜態を晒さないでくれ!と私が身を乗り出して母に声をかける。しかし母は胸の前で手を合わせるとにこにことウィリアム様を見ている。
気恥ずかしいと思いながらウィリアム様へと視線を向ける。するとウィリアム様は何かを考えるように顎に手をおき、どこかへ視線を向けたあとゆっくりと私へ顔を向けた。
「そうですね・・・あまり自分では意識していませんでしたが、そうかもしれません」
「まぁっやっぱり・・・!」
「・・・・・・・」
両手をテーブルに置き、俯いたまま私はぷるぷると震える。その様子を横目で眺めながらウィリアム様がくすくす笑っているが聞こえない。母はすこぶる嬉しそうにきゃっきゃと騒いでいる。
そんな母にウィリアム様が息をつきながら微笑む。そして項垂れる私へ視線を向けると薄い唇を開いた。
「軍の関係者と知り合いになったのですが、その方に実践的な魔術や体の鍛え方など教えていただいているんです」
「・・・・・・」
「まぁ、そうなんですか?」
「はい」
知らなかった。おそらく軍の関係者で、かつ魔術に詳しい方ということなのでコンフィアンス様から教わっているのだと思われるが、まさかお会いになっているとは思わなかった。仲が悪そうに見えたし。やはり男心というものはよく分からない。
「・・・・・・・・」
そこで最近、ウィリアム様とあまり外出をしていなかったことを思い出す。私は外出が減ったことを実験ができるしウィリアム様を見て胸を痛めることもないからと喜んでいたが、その間ウィリアム様は中央司令部に通い鍛錬をしていたらしい。
何のために?と思うが、公爵家のご子息ともなればいつ誰に命を狙われるか分からない。特にお美しい姿を見たお嬢様からの熱意は凄まじいからその対策だろうか。
とにかく、実践的な魔術をコンフィアンス様から教えてもらうなんてすごく羨ましい。私も行きたい。思わずいいなぁ、とウィリアム様を見る。その視線を受けたウィリアム様が私を眺める。
「そのおかげか筋力もついたんです。そういう意味ではたくましくなったかもしれません」
「ああ、だからだったのね・・・・残念・・・」
「ふふ、ジェニファーを愛しているということも理由には入りますよ」
「・・・・・!」
「やだもうっウィリアム様ったら!娘のこと大好きなんだからっ」
乙女な母が照れ臭そうに私の肩をばしばし叩く。その揺れを感じながらも、私はウィリアム様の言葉が頭に響いて顔を真っ赤にする。
ウィリアム様が私を見てにっこりと笑う。頬杖をつき、首を傾けながらこちらを見る仕草はあまりにも美しい。その表情に私がさらに顔を赤くする。そうすると余計にウィリアム様が微笑む。
そして頬杖をついたまま、艶やかな唇を薄く開いた。
「はい、大好きです」
「・・・・・・」
「キャーッ!」
「キャーッ!」
いつの間にかジュースを持って戻ってきていたケイトまで参戦し歓声を上げる。ジョージさんも棚の取っ手を握り締めてぷるぷる震えていた。あなたたちはどれだけウィリアム様が好きなんだ。
私の前にケイトがどんっとジュースの入ったグラスを置く。だけどその視線はウィリアム様へと熱く注がれている。一応私がケイトの主人であるはずなのだけど、どうしてこんな対応を取られなくてはいけないのだろうか。
やけになった私は勢いよくジュースを飲む。オレンジジュースのようだ。酸味が口いっぱいに広がっていくが、あまり喉越しを楽しむ余裕もない。すぐにぷは、と言いながらグラスを離すと口を拭う。
もう嫌だ。早く屋敷を出よう。
そう思い足に力を入れるとウィリアム様のいる方へと足を向ける。それからウィリアム様を見下ろすと、じとっとした目を向けた。
「・・・・ウィリアム様、行きましょう」
「はは・・・・ああ、そうだね。行こうか」
「えぇ〜ジェニファーもうちょっといいじゃなぁい」
「そうですよっ、もっとウィリアム様の惚気を聞きたいです!」
「(もう黙りなさい・・・・!)」
知らない。聞かない。完全に母とケイトを無視してウィリアム様が席を立つのを待つ。ゆっくりと長い足を動かしてウィリアム様が立ち上がると私を見下ろす。そして頭を撫でると可愛らしく微笑んだ。
その仕草に私がゔ、と言葉を詰まらせる。母とケイトは幸せすぎて散ってしまいそうと思いながらこちらをのほほんと見つめる。
もういい加減にしてくれ、と母とケイトへ何か言ってやろうと口を開く。だけどその時、誰かがリビングのドアを開いた。
誰だろうか、と思いそちらへ視線を向ける。するとそこに父と同じ瞳の色の兄がいた。
「え・・・・お兄様・・・・?」
「ああジェニファー、ただいま・・・って何でウィリアム様がここに・・・・!?」
兄が大きな荷物を持って入ってくる。声をかけた私に気付き、兄が挨拶をするが、その顔を上げた先に私だけでなくウィリアム様がいることに気づくと分かりやすく肩を跳ねさせた。
以前、王宮の図書館で顔を合わせているウィリアム様も兄に気づいたのか、胸に手を当てると丁寧にお辞儀をする。そして愛想の良い笑みを浮かべる。
しかし兄はその笑みを見るやいなや眉を顰め、ずかずかと歩いて私の腕を掴んで引き寄せた。
「ウィリアム様、いや、君は僕より年下だからウィリアム殿と呼ぶ」
「はい、どうぞ好きに呼んでください」
「・・・・・どうしてウィリアム殿がここにいるんだ」
「いやぁねぇラーク、久しぶりに帰ってきたのにお母様に挨拶もしてくれないの?」
「ああごめん母さん、ただいま」
「おかえりラーク」
母がお兄様に歩み寄り力一杯抱きしめる。兄が屋敷に戻ってくるなんて何ヶ月ぶりだろうか。年末も顔を見せなかったし、ずっと忙しかったのだろうけど少し心配していた。
兄も母を抱きしめると、久しぶりの母の顔に安心したように微笑む。その微笑みはどこか父に似ていた。
それから兄が再びウィリアム様を睨み上げる。その視線にウィリアム様はただただにこりと微笑む。
「それで、どうしてウィリアム殿が?」
「これからジェニファーさんと外出する予定なので」
「だったら外で待っていればいいじゃないか」
「ラーク、外で待っていたら暑いでしょ、お母様がこちらまでご案内したの」
「だったら客室でいいじゃないか。なんでリビングなんだよ、家族じゃあるまいし」
「あら、もうウィリアム様は私たちの家族同然よ」
「は・・・・・」
母の言葉に兄が言葉を失っている。その兄がなぜかこちらを見る。そして私の両肩を掴むとがくがくと揺らした。急なことに私は驚いて兄を見る。その兄の表情はとても深刻なものだった。
「ジェニファー、あ、あれは本当だったのか」
「本当・・・とは」
「ウィリアム殿に会ってからすぐに父さんと母さんに手紙を出したんだ。ウィリアム殿が妹を誑かそうとしていると。そうしたら・・・・そうしたら・・・」
「・・・・・・」
「もう婚約寸前だって言うじゃないか!しかも母さんなんてウィリアム殿をべた褒めしてくるし」
「こっ・・・・」
「兄さんが助けてやるって言ったのに兄さん以外みんなウィリアム殿の味方なんだ。話も聞いてくれない」
「(それは兄さんだけでなく私も味方がいません・・・)」
「兄さんは分かってる。この男に誑かされてるんだよな?そうなんだよな?」
「・・・ま、待っ・・・お兄さ・・・・」
がくがく揺らされすぎて気持ち悪くなってくる。早くどうにかしないと兄が壊れてしまう。そう思いそっと兄の肩に触れようと手を伸ばす。
だけど私の手より先にウィリアム様が兄の両肩を掴む。そしてぐい、と引っ張る。兄が驚いてウィリアム様を見上げる。すぐに眉を吊り上げて怒鳴ってやろうと思ったらしいが、そのウィリアム様の冷え冷えとした微笑みに固まる。
「ラーク殿」
「・・・・・・」
「誑かそうと考えたことは一度もありません」
「・・・・う、嘘だっ・・・妹は今まで誰かを好きになったことなんてーーー」
「いいえ、好きになっていますよ」
「・・・・・・!」
「・・・・・は?」
ぽかんとしている兄を見てウィリアム様がにっこり笑う。私は嫌な予感がして兄とウィリアム様の間に入る。しかしウィリアム様はその私の肩を掴むと、ぽすんとご自身の胸へと引き寄せる。そして私の手を掴むと指先にキスを落とした。
まるで兄に見せつけるように。
私はウィリアム様が兄の言葉を利用して今ここで報告しようと企んでいると気付き、急いでウィリアム様へと振り返る。だけどそこには片方の口角を上げる天使の皮を被った悪魔がいるだけだった。
一瞬、ほんの一瞬だけ、ウィリアム様の瞳がぐらと若紫に変わる。それは僅かな時間であり、私にしか見えるものではなかった。だから母やケイトにはただ二人で見つめ合っているようにしか見えなかったと思う。
だけど私はウィリアム様のその一瞬の行為に動けなくなる。
『私が君のものになっていくよ』
あの言葉を思い出してしまう。
確実にあの言葉に反応を示している私の様子を満足げに見下ろし、ウィリアム様は兄と、それから母やケイトへと視線を向ける。
「・・・・ご報告が遅れました」
「・・・・・・」
「私とジェニファーさんは、お互いに好き合っています」
「は・・・・」
「・・・ね?ジェニファー」
そう言ってウィリアム様が私へと視線を落とす。それから頬に手を添えると瞳を近づけてくる。なんとも言えない婀娜やかな雰囲気に母とケイトが口を押さえてぷるぷると震える。もう爆発寸前である。
私はその様子に『ああ、終わった』と思った。それから本日中に屋敷の者全員が私とウィリアム様の関係について知ることとなるだろう。
わなわなと唇を震わせる。どうしよう、恥ずかしい。と顔を真っ赤にさせる。どうしてこんなに自分の気持ちを知られるのが恥ずかしいのか分からない。父や母の画策通りにことが運ばれていることを恐れているはずなのに、それ以上に恥ずかしいと思う。
好きって難しい。そもそも好きって何なんだ。
自分の感情に驚いている私をウィリアム様がぼんやりと眺める。それでも今言わなければ一生言わなさそうな私に眉を下げると、そっと肩をぽんと叩いた。
「ほら、言ってあげないとお兄さんが困惑してしまうよ」
「・・・・・・」
「大丈夫。何も恥ずかしくないよ」
「・・・・・」
「ほら、言って」
「・・・・私は・・・・」
私はそう言われ、母やケイトへと視線を向ける。二人の顔を見ていると恥ずかしすぎて泣きそうになる。だけど私の肩に置かれているウィリアム様の手がぽんぽんとあやすので少しだけ勇気が出る。だめだ、まだこうやって補助を受けないと言葉が出ない。悔しい。
眉を顰め、顔を真っ赤にし震える私に母が『娘がなんか色っぽい!』と頬を赤らめているとも気づかず、少しだけ顔を背けながら母とケイトを睨む。
母とケイトがごくり、と唾を飲み込む。ジョージさんがわざわざ老眼鏡をかけてこちらを眺める。
「ジ、ジェニファー大丈夫よ。お母様たち・・・っ・・・ただ聞くだけだから。聞いたらすぐ忘れるから気にしないで・・・」
「はぁ・・・そうですよお嬢様・・・大丈夫です。ほらウィリアム様も大丈夫とおっしゃっています」
「(な、なんか二人が変態に見える・・・・!)」
「お人形さん、お母様もすぐ忘れてくれるって。だから一度言ったらもう終わりだよ」
じりじりと寄ってくる母とケイトをいやいやと首を横に振りながら拒絶する。後ろに下がろうとしてもウィリアム様がいるので、ただ体を押し付けることしかできなかった。
そんな私の仕草にウィリアム様が仄暗い感情を燃やしているとも知らず、私はもうこれ以上変態の母とケイトに近づいてもらいたくなくて顔を背けながら小さい声で呟く。
「私は・・・ウィリアム様を・・・す、・・・」
「す・・・・ジェニファーなに、その『す』のあとは・・・・」
「お嬢様・・・どうぞゆっくりでいいので言ってください。ケイトは怒りません・・・・」
「・・・・す、ーーーーーー」
「す、すごく賢い方だと思っているんだな!ジェニファー!」
「え・・・・・?」
好きです、の一言がどうしても出てこなくて困っているところに、兄が叫ぶ。そうすると母とケイトが分かりやすく舌打ちをした。ウィリアム様は微笑みながら鋭い視線を兄に向けた。
その視線にも怯まず、兄は腕を組むとウィリアム様を見上げる。
「そうだな、ウィリアム殿はすごく賢い方だと僕も認識している」
「・・・・・・・」
「ジェニファーがそう思うのも無理はない。だからさっきウィリアム殿が言っていたことを僕は忘れる!」
「・・・・ラーク殿」
「いいか、僕は絶対!ウィリアム殿を認めないからな」
「ラーク!あなたって子は!あとちょっとでジェニファーから言質が取れたというのに!」
「(言質って・・・お母様、あなたは娘に向かって何を・・・・)」
「母さんも母さんだよ。ウィリアム殿が美しいからって」
「あら、ウィリアム様を美しいとは認めているのね」
「なっ・・・・・!」
母にそう言われ、兄が固まる。自分がウィリアム様を美しいと表現したことにぞっとしたらしい。兄はおろおろとしながらも、こほんと咳払いをするとウィリアム様を見上げる。そしてビシッと指差した。
「認めないからな。妹は僕が守る」
「・・・・・・」
ウィリアム様が微笑んだまま固まった。
その様子に母とケイトが顔を見合わせて「まぁ」と言う。いやもうあなたたちが煽ったからこうなったのではないのか。
「・・・・・・・」
違う、私がもたもたしていたから兄が間に入ってきてしまった。
ウィリアム様からしたら、やっと報告できると喜んでいたと思う。思うだけなので違うかもしれない。だけどこれだけ愛情表現をされると、多分間違っていないと思う。と解釈するだけで心臓が痛い。
「外出するんだって?だったら僕もついていく」
「・・・・どうぞ、ご案内します」
よく分からないままウィリアム様と兄が先にリビングを出て行く。
その様子をぽかんとしたまま私が見送る。い、いや見送ってどうする。兄を止めなければ。
ちゃんと、ちゃんと言わなきゃ。
「(私がしっかりしないと・・・・)」
今年の夏は、その日差しだけでなく何か別の熱も運んできたような気がした。
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これより第七章スタートです。どうぞお付き合いください。
随時『活動報告』にて1話ごと解説入れているので、お時間ある方はご覧ください。
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