(21) 馬車の中
『なあパグ子』
「はいニート様」
『自由ってなんだろう?』
「あともう少しのところだったんですけどね」
『おまえなんで断らなかったんだよ』
「あんなたくさんの人たちに平伏されて、足にすがって頼まれたら、パグ子に断れるわけないじゃないですか。そういうニート様こそ」
『俺がなんだよ』
「パグ子の代わりに断ってくれたらよかったんですよ。またあの格好いい声で」
『だからもう無理だってば。あんな恥ずかしいこと俺はもう二度とやらないからな』
「そんな人事みたいに言わないでください。パグ子が王都に行く羽目になったのは、ニート様がやり過ぎたからですよ? 我は一億の聖霊を統べる王なりぃって」
『は? 聖霊一億とか言い出したのは元々おまえじゃないか。大教主に教徒百万人って言われたからってムキになって百倍も盛りやがってこいつ』
「それはそうですけどぉ……」
『おかげでこっちは恥ずかしいったらありゃしない。なんだよ一億って。馬鹿ですか。中二ですか』
「う、うぅぅ……。そ、そうだニート様。パグ子はニート様にひとつお尋ねしたいことがあったんです」
『おまえ今必死に話題を変えようとしてるだろ』
「……」
『それでなんだよ俺に尋ねたいことって』
「ごほん……。ええと、パグ子はずっと疑問に思っていたんです。ニート様って最近たくさんお買い物をしましたよね。おーでおぷれいやあとか、高級すぴいかあとか、れいざあぷりんたあとか」
『おお、さすがは異世界天才少女パグ子。そこに気がついてしまったか……』
「はい。ニート様って貧乏なはずなのに、お金とか大丈夫なんですか? まさか何か悪いことを」
『してねえよ! ただな、臨時収入があったんだよ。どうせあぶく銭だし、おまえのお陰で稼いだカネでもあるし』
「パグ子のお陰で臨時収入って、どういうことですか?」
『いやなに、ちょっとおまえの動画をアップしてな……』
「ちょっとニート様! 動画ってあれですよね? 時代劇みたいに絵が動いてたくさんの人が見るやつですよね?」
『はい……そのとおりです……』
「そんな! まさかパグ子のあんなところやこんなところを勝手に動画にして、知らない人に見せてたんですか?」
『はい……そのとおりです……』
「ニート様ひどい! いつから! そんなこといったいいつからやってたんですか?」
『えーと、牛乳をペロペロしてた頃?』
「めっっちゃ初期からじゃないですか!」
『はい……そのとおりです……』
「じゃあ、パグ子がいっぱい泣いてるところも、たくさんの人たちに見られているんですか?」
『はい……そのとおりです……』
「ひどい! ニート様ひどい! 最低です!」
『でもほら、そのお陰で臨時収入があって、いろいろ準備できたわけですし……』
「な、何人ですか?」
『はい?』
「だからパグ子の恥ずかしい姿を、いったい何人の人が見たんですか?」
『ええと、アクセス数で言いますとだいたい……これくらい?』
「指一本じゃ分かりません! 十人ですか?」
『……』
「百人……、千人ですか?」
『……』
「ニート様……、まさか一万人とか言わないでしょうね?」
『……』
「じゅ、十万人とか、百万人とか言ったら冗談でも許しませんからね」
『いちおくにん……』
「はあぁ? ニート様、今なんと言いました?」
『だいたいざっとで一億人です。パグ子さん』
「いちおく……。はああぁ? パグ子のいっぱい恥ずかしい姿を見た人が一億人て……。ニート様! なんですか一億人って! 馬鹿ですか! 中二ですか!」
次回からは新展開




