第二百四十七巻目 カギ
「そんな大層ことをしてほしいわけじゃないんだ」
「何をすればいいんだ?」
「ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ注意を惹きつけてほしいんだ」
「いったい何の注意を……」
「敵以外になんの注意を惹きつけるんだい?」
「………」
「言っただろ? 僕らは、特に僕は国に狙われていると」
確かに言っていた。
「君は確かここにはタクシーで来たはずだ。タクシー出来て、うちのものが迎えに行き、ここまでやってきた」
「あぁ……でもなんでそれを?」
「秋葉原という町はね、ほんの十年前、僕がこの国のトップをやっていた時に一度消滅したんだ。そのあと、この街に僕が新しく街を作り直した。国に追われるようになってからは、ここを見えない要塞として利用しているんだ。それに、僕ら以外の人間なんてほとんどいないから、大抵の人は秋葉原というもの自体を忘れてしまい、個々のことを気味悪がっているんだよ」
だから、タクシーの運転手はあんなことを言っていたのか……
「そんな要塞に、今数千もの警察の公安機動隊と警備隊が、おおよそ警察の装備とは言えないであろう重装備で、僕らのところに向かってきてる。もちろん、僕らはこれを徹底的に叩き潰す。でもそれには、一つ条件が必要だったんだ」
「……それが俺だってことか?」
「その通り。君は僕らにとってもカギなんだよ」
「それじゃあ、作戦会議をするから、僕の子供たちのところへと行こうか」
…………
十年前
「総理、やはりあの計画はまずかったようで……」
「まずかったようで……?」
「……町が一つ消えました。というか、人々の記憶の中からも」
「いったいどこなんだ?」
「……秋葉原というか、末広、本郷、湯島、神田の周辺を含め消えてしまいました」
「原因はやっぱりあれなのか?」
「はい……研究所から緊急事態宣言が出されましたので確実化と」
「私は報告は受けてないぞ?」
「それは……研究所ごと消えてしまいましたので、非番の人間が確認をして宣言を出したということです……」
「そうか……」
「いかがいたしますか?」
「……当面の間、この事案を国家第一級の機密として、周辺はダミーの工事案内をして、関係者以外はいらないようにしておいてくれ」
「かしこまりました」
「予定がつき次第優先的に視察をする。予定だけ作るように心がけてくれ」
「はい、わかりました」
……
部屋を出てまた、ひたすらに長く暗い階段を行く
「やっぱり、ここら辺ちゃんと掃除してないからほこりがたまっちゃってるね」
「いつもはここを歩かないのか?」
「そうなんだよ。いつもはエレベーターで行ってるからね。まぁ、今日は信長君がいるから、こうやってイメージ重視で行ってるけども」
「……」
そこは効率性重視で行ってほしいものだ。




