第二百八十三四巻目 扉前にて
階段を一段一段進むたびに、なんとも言えない嫌な雰囲気を感じる。
もちろん、この階段は晴れた日の外のような明るさはないが、そこそこの明かりで無用な不安に襲われるような装飾もなく、かといって無機質な感じもない。たまに造花の花瓶が壁のくぼみに飾られているので、どことなく気持ちも落ち着く。だが、なぜだか嫌な雰囲気を感じるのだ。本当に不思議だ。
「……ここか」
階段をいろいろとじろじろと見ながらゆっくりと降りていき、ようやく長い廊下に差し掛かる。その廊下をゆっくりと歩くと、ようやく扉が見えてきた。
俺の想像では重厚感のある、茶色い思い扉があるのだとばかり思っていたのだが、今ここに見える扉は正直どこにでもあるような会議室にある入り口の扉のようなものだ。ご丁寧に扉の上部には『教祖のお部屋』と書かれている。ここまでの隠し部屋を作っているのだから最後の部屋の入口ぐらいは簡素に作って、わかりやすくしようと思ったのだろうか。
まぁ、そんなことはどうでもよく、俺はこれからこの扉を開けて中に入り、その中にいると思われる教祖に会わなければならない。
もし、俺が思う通りの扉であればすぐにでも入ろうと思ったが、なんだかこの扉だから拍子抜けだ。
……どうしようかな……このまま戻ろうかなぁ。




