第二百八十三巻目 階段にて
「ではどうぞ、教祖様のもとへ」
「……分かったよ」
俺はこいつに言われるがまま、扉を開くことにした。確かにこいつの言う通り扉の向こうには階段がある。会談の傾斜は非常に急だが、その分階段の明かりがしっかりとしているから、ここから踊り場が確認できる。
俺が一段一段階段を下っていくと後ろから扉を閉める音が聞こえた。これで完全に戻れなくなってしまったことになる。もちろんやろうと思えば戻れるのだが、そんなことをしてしまってはなぜだかいけないような気がする。別に俺がこれをしなければいけない義理も義務もないのだが、一度はやるといったことを成し遂げなければ人間として何か間違っているような気がしてしまう。もちろん、戻るというのも一つの選択肢であり、その行動によって他者から非難を受けたとしてもその非難というのは無意味であり、俺が俺の信念に基づいて行動しているのだから別に構わないのである。
しかし、そうはいってもここは俺のもと居た時代それよりもずーっと未来の世界である。前いた2015年でも世界の構造や人間の感情というのが分からなかったのだから、ここはもしものことを避けるために、有言実行をしたほうが正しいと考える。
ゆえに、俺はこの階段を下り続け教祖というやつが待っている部屋へと行かなければならないのだ。教祖というからには、あいつらをまとめられるだけの才があるやつだと考えられる。
とりあえず教祖とやらに文句も言いたいからさっさと下ってしまうことにしよう。




