第二百七十九巻目 未来技術党
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―――信長がやって来た時代より十年前、日本、有明コロシアム前
『我が国日本はオリンピックの閉幕と同時に、経済発展の速度というのもなくなってしまった。それは、我々が先進国であることを過信しすぎた故のことである。そして、いま我々が直面している現実というのは、ひどく暗く、一寸先も見えないような闇であり、この闇を払うことは現政府では不可能なのである』
街宣車の上に立ち、演説の集会に集まった多くの聴衆を前に饒舌に語る男。この男こそ未来技術党党首、鈴木宗一郎だ。
『我々、未来技術党は現政府を倒しさらに現政府のことを正当に批評することが出来ず、ただの税金を喰うだけのゴミムシと成り下がっている野党とも共闘せず、第三の勢力、現在マスコミ等でも多く取り上げられている日本中央党と手を組み、政権を奪取することを、ここ幸運の裁き事件が起きた有明コロシアム前に集まっていただいた皆さん、そして全国民に約束いたします』
未来技術党は近年第三政党と呼ばれるようになった、新興系の政党であり日本の電脳ネットワークの構築と、人工知能による裁判の実現を行うことを公約にしている政党であり、現在の与党や野党に不満をもつ若者に強く支持をされている。そして、日本中央党は、地方分権を廃止し、中央ですべての政治を行い、余分なものを排除して日本を再び強い国へと復活させることを目的に活動をしている政党である。両党の党首は非常に仲が良く、そして政党の理念が一致しているために、政権を奪取することを共に目指している。
『しかし、我々は党員が少なく党員を増やしたくとも政党交付金などが廃止された現在、現在の人数で党を維持するのが精いっぱいな状況であります。だが、われわれは皆様に約束をした以上、政権を奪取しなければならない……いったいどうするのか』
聴衆は鈴木氏の演説に唾を飲む。
『資金がなければ、協力者を作ればいい。いったって簡単なことでありました。そして、皆様が今回ここにお集まりいただいた理由というのが、その協力者の紹介というわけなのであります』
有明コロシアム前には、数えることが出来ないほどの群衆であふれている。
『協力者とは、幸運の裁き事件を起こしこの日本を変えようとした、中央技術研究所の所長……安藤氏であります』




