第二百七十五巻目 たどり着いた
人の事をおんぶという行為自体、俺が今まで生きてきた中で二回しかない。今回を入れて三回目だ。正直、俺は後ろに人が居るだけで嫌な気分になる人間なのでおんぶzをすること自体余り好きではないのだ。ただ、人間を運ぶとなったら台車や荷車がない限りこうやって負ぶって運ぶしかないのだ。これはもう、仕方のないことだ。
「……第二の教祖よ。意外にもあなたは筋肉質ではありませんね。少しがっかりです」
「少しは黙ってろ。……何が『少しがっかりです』だ」
「あっ、そこの角を右です」
素性の分からない奴をおぶり、どこ絵連れて行かれるかも分からないのにそいつの指示を聞きながら歩くというのは、どう考えても頭のおかしい行為だ。正直な話、今すぐにでもこの頭のおかしい行為を辞めたいのだが、立てないのが演技だとしても少し傷つけてしまったのは本当のことだし、それに第二の教祖と俺のことを呼称しているのも少し気になる。第二というからには第一がいるわけであるから少しそいつにも会ってみたくなった。だから、俺はとりあえず素性の分からない奴の指示を聞くことにしているのだ。
・・・・・・随分と訳の分からない理屈を並べているが、とりあえず俺の理性をうならせるには十分なこじつけだろう。
さて、どんどんと道を進んでいきたどり着いた先というのは昔、杉原と道具を買いに来たビルだった。と、言っても前に来たときは何処に出もあるような汚い雑居ビルだったが、今は随分と外壁がきれいに塗り直されていた。
「ここでいいのか?」
「はい。ここの二階に我らの本部があるのです」
「二階か……」
二階。確か、杉原と来た店も二階にあった気がする。それにしても、俺はこいつを負ぶたまま二課まで登らないといけないのか……未来に来たのだから階段が全てエスカレーターになっていてもいいと思うのだが、いかんせんそうもいかないものだなぁ……




