第二百六十九巻目 置き土産
やるべきことをやった後、私はふと天井を見つめた。この家と言うのは実に面白い造りをしていて、ずいぶんと近代的な造りをしていると思ったらどこか現代的でどこか古風を感じる造りだ。天井には、信長様かそれともあいつが買ってきた金魚の飾りが吊るされていて、風もないのにゆっくりとくるくると回っていた。
そうやってボーっとしていると、スマートフォンの着信のベルがなったのだ。
私が電話をとると、電話の向こう側からこんなことを言われたのだ。
「ようやく帰れそうです。明日には多分、必ず」
そう言うと電話の向こうの相手は私の有無を聞かずに切ってしまった。普通であればこんな電話がかかってきたらいたずら電話か、悪質な嫌がらせだと思ってしまうも知れない。ましてや、私の様な中流階級のアイドルにこんな電話がかかっているのだから、事が事なら警察に通報しなければいけない案件なのだ。
だけれども、そんな危ない電話が私にとっては今どこかこの不安定な心の気持ちをなだめてくれるものになっているのだ。
「ようやく、ちゃんと帰ってくるのか」
彼の帰還は間もなくと言ったところだ。それまで、ゴロゴロと泡盛を飲みながら待つとするか。
※※※※
ゲツヨウビマデニスベテヲアツメヨ。という言葉に理解しがたいと悩んでいたが、そもそも2115年に飛ばされているという現実をしっかりと受け止めている私が、自分でも自分のことが末恐ろしく感じてしまう。
しかし、ジョンの置き土産らしいものにあったQRコードを読み取りテキストを見てみると、ジョンの本当の置き土産がそこにはあったのだ。
『ノブ。きっとこれを見ている時には私はいないでしょう。でも心配はいりません。私は元気です。とても元気です。さて、私がノブにヒントをプレゼントしたいと思います。きっとノブのことですからこれだけ言えば理解は出来ると思います。もしそのことに気が付かずにこれを見ているのであれば、それは織田信長としての自覚をもっと持ってほしいところです。これは、とりあえず一時的な私からあなたへのお勤めご苦労様という慰労のプレゼントと言うことで理解してください。なので、お返しは不要です。もし、何か返したいのであれば、新しいDVDの方を買ってください。ブルーレイはダメですからね』
・・・・・・と、まぁ最初は下らないことしか書いていないのだが、次からが本文になる。
『ノブ。私があなたにプレゼントするヒントは三つです。一つ目は動物を動かす新しい物体。二つ目は2020年。そして最後は、この前見せた写真です。それぞれのヒントはすべて別の事柄についてのヒントです。集めるというのは何もものを集めることでは無いのです。ただ、それに気づかなきゃいけないのです。それでは、あとは頑張ってくださいね』
文章はここで終わっていた。ジョンのことだから変な画像とかでも入れていると思ったが、そう言うこともなかった。
「……」
ヒントと言われても、それらが何を意味するかを確実だって表すものはなかったが、どちらにしてもジョンらしいと思う。
少なからず、この情報のおかげで俺はようやく動くことが出来る。たとえ2115年だとしても、俺は俺だ。やる事はいつの時代だって変わりわしないさ。
「……とりあえず、動物を動かす新しい物体っていうのを探してみるか」




