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史上最強の初恋  作者: えみお


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1-1

「好きな人が出来たんだ」


 10年来の友人であるギルドの受付嬢マリアにそう言うと、彼女は一瞬呆けたような顔をした後、口に含んでいた酒を盛大に吹き出した。

 料理が運ばれてくる前で良かった・・・と思いながら、私は通りかかった店員を呼び止め、台拭きを持ってくるように頼む。

 そして、むせて苦しそうな親友の背中を片手でさすりながら、もう一方の手で机を拭いた。

 机の上が綺麗になるのと、マリアが回復するのはほぼ同時だった。

 私は彼女が落ち着いたのを確認すると、話を再開する。


「マリア・・・私はそんなに可笑しなことを言っただろうか?」


「言ったわよ!え・・・好きな人!?それって異性としてってことよね!?」


「そうだが・・・」


 私だって1人の女なのだ。

 好意を寄せる相手がいる・・・それ自体はとても自然だと思うのだが。

 

「何言ってんのよ!あんたココに来てからダンジョン以外のこと、一切眼中にないような生活してたでしょうが!それが・・・ここにきて男!?」


「今までそういう風に思った異性がいなかっただけだ」


「・・・あっそ。まあ、そうなると気になるのはそのお相手なんだけど・・・誰!?」


「・・・実は分からないんだ。今日はそれを相談したかったんだ」


「はぁ?分からない?」


「好きになったとは言ったが、話したことがあるわけではない。偶々通りすがった時に見かけただけなんだ」


「・・・はぁ」


「・・・それで・・・好きになったんだ」


「・・・・・・・・・」


 このとき親友マリアは胸中で、コイツ相当拗らせているな・・・と思った。

 だが、10年来の友に意中の相手が出来たというのであれば、ここは背中を押してやるべきであろう。

 マリアは気を取り直し、会話を続ける。


「で・・・アンタは私に何を相談したいの?その相手をオとす方法とか?」


「・・・オとすとか言うな。好意は抱いているが、名前は勿論、容姿以外、具体的なことは何1つ分からないんだ」


「・・・そんな状態を好きだと言うのか分からないけど」


「だから、お前にその人の情報収集を手伝って欲しいんだ」


「はぁん。なるほど。お相手は冒険者なのね」


「多分な。ギルドに入っていくところまでは見たのだ。だからおそらくそうなんだろうと思う。帯剣もしていたしな」


「確かにそれなら冒険者の可能性が高いわね。依頼を発注しに来た一般人という可能性も無くはないけど・・・」


「それでだな・・・明日なんだが、お前、仕事休みだったよな」


「なんで、アンタ私のスケジュールを知ってるのよ・・・」


「やはり休みか」


「・・・このオンナ、カマかけおったな!」


「それでだな・・・」


 私がマリアに明日の計画を伝えると、彼女はえらく渋ったので、今日と次回の分の飲み代を奢ることで手を打ってもらった。

 休みの日にまで職場に顔を出すなんて・・・と彼女は意気消沈していたが、友人思いな性格と、私の気になる人を知りたいという興味が勝ったようだ。

 好きな人が出来た。

 それは嘘ではない・・・しかし一抹の不安もある。

 来る日も来る日もダンジョンに向かい、モンスターを倒し、返り血に塗れる日々を送ってきた私には、今日までその手の話など1度もなかった。

 だから、私の目が節穴で、この思いも何かの勘違い・・・それこそ、普通の人が子供の頃に罹患し、耐性をつけるような幼児風邪のような症状が、遅れに遅れて、ようやく私にも現れただけなのかもしれない。

 ・・・だからこそ、数多の男性と浮名を流す親友に、自らが気になっている相手と・・・そして私自信を見極めて欲しいと思ったのだ。

 アルコールも手伝い、何処かフワフワした気持ちのまま、この日は彼女と分かれた。

 彼の朝は早い。

 寝過ごすわけにはいかないのだった。

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― 新着の感想 ―
 果たしてデュランが好きになった相手は誰なのか。応援しています!
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