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file26:呼び出し音

千博の通うフリースクールへを見ようとした貫太郎。しかし、そこで目にしたのは中学生らしき男子にチョコレートを渡す彼女の姿だった。とっさに、悪態が口から飛び出し、貫太郎は後悔した。

 フリースクールが不登校になった生徒達の受け皿だということは知っていた。だから、吉田というあの中学生も何かしらの問題を抱えているのかもしれない。イジメが原因だろうか。

 僕は無意識のうちに差別していた。フリースクールに通う彼らを弱い奴らだと蔑んで、壁をこしらえていた。だから間違われるのが怖くて敷地に入れなかったのかもしれない。そんな卑しさが心のどこかにあったから、簡単に言葉となって出てしまったに違いない。

 慌てて逃げ帰った夜、モヤモヤとした気持ちを抱えきれず、僕はとうとう鈴原の家へ電話をすることにした。

 父親が受話器をとるかもしれない。運良く鈴原が電話に出ても、こちらが誰かとわかったらすぐに通話を切られてしまうかもしれない。それでも挑んでみたかった。ただ真剣に謝りたかった。

 トゥルルルル。トゥルルルル。トゥルルルル。三回目の呼び出し音の後、電話に出たのは鈴原だった。

「今日のこと、ゴメン。謝ろうと思って」

 たとえ、たどたどしくても、決して不必要な言葉は使わないように。僕は率直な気持ちを伝えようと努力した。

 そして一方的な謝罪の後、鈴原は気にしていないと落ち着いた口調で返した。それから、吉田が恋人ではないと否定した。父親に堅く禁じられていて、今まで電話ひとつできなかった、とも言っていた。

 幸いにも鈴原の父親は残業でいなかった。いつもはフリースクールへの送り迎えもしているらしい。

 僕らはもう一度会う約束をした。



 待ち合わせの場所は町外れの神社だった。街灯はあるものの、何か出てきそうで夜の境内は薄気味が悪かった。だから、明かりの下で待つ鈴原を見つけたとき、僕はホッと安堵の溜め息をついた。

「クリスマス以来だよね」あらためて鈴原は言った。「二ヶ月くらいかな」

 僕が会いたくて仕方がなかったように、鈴原のほうも思ってくれていたらしい。彼女のそれが友情なのか、また別の気持ちなのかはわからない。それでも充分だった。

 学校のこと。そしてフリースクールのこと。会えなかった空白を埋めるかのように、僕らは夢中で平凡な毎日を話し続けた。それはお互いに息継ぎを忘れるほどで、二月の寒さも気にならなかった。


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