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第七章

   第七章☆紫・Light is Right

 一方、プリズム星のジラルドは…。

再び訪れた無人島の遺跡で石版を発掘中、いきなりあの扉が今度は内側から開くのを目撃した。

「ジ・ライヤー!あなたがまた姿をみせるなんて思ってもみなかった!」

「この星に危険が迫っている。今こそ地上人たちを我々の地下都市へ避難させようと思う」

「地下都市?そんなものがあったんですか」

「本来、この星は内部にのみにんげんが生存できる空間のある巨大な宇宙船だった…」

「ええ?」

「永い、永い時を経て、現在の姿になった。地表の世界を改造して、いくらかの人々が移り住んだ。地下のにんげんと地上のにんげんとでは進化の過程にかなりの違いがあるが、もともとは同じ起源のにんげんたちだ。我々地下世界の住人は地上人の危機を見過ごすわけにはいかない」

「この星の前身は、惑星型宇宙船か…。…そうだ、危機、って言いましたよね?」

ジラルドは、はっとしてジ・ライヤーを見た。

「巨大な星がかなりの速さでこの星に向かってきている。地上に残れば、十中八九助からないだろう…」

「まさか、ぶつかるわけでもないんでしょう?」

「…。それはわからぬよ」

「でも、地上人は少なくとも、あなたたちのこともこの世界の真実も知らされずに生きてきている。それを地下世界へいきなり避難させるからにはよっぽどの…」

ジラルドは自分で言っていることの重大さに、青ざめ、口をつぐんだ。

「本当に、お前はこの星のことを調べ尽くしたのか?」

ジ・ライヤーはなにか含みのある物言いをした。笑ったようだった。

「?」

「まあ良い。全ての地下へ続く路を開放して、地上人たちを地下都市へ避難させる決断が下された。…我と同じ名前の称号を冠する者よ。お前は違う世界から来たと言ったが、そこへ帰らずにここにいる。お前もともに地下へ避難するが良い…」

 ジラルドは、無人島に一緒に連れてきていた妻のオ・ランジュと娘のジ・フィを呼びに行き、遺跡の扉を抜けて、ジ・ライヤーの示した路へ向かった。

深い深い地下へと続く路は真っ暗闇だった。

「道が見えるのか?」

こころぼそいライターの火で足元を照らすジラルドと対照的に、妻と娘は危なげなく歩いて行く。

オ・ランジュが言うには、ある種の光源が空間を照らしているので暗くないとのことだった。

「赤外線か紫外線の一種かな?波長まではわからないけれど、俺の可視光線の範囲とずれて、オ・ランジュたちには見える可視光線がこの空間にあるんだろう」

と、ジラルドは思った。

やがて、路は他の路と合流した。

「ジ・ラルドさん!あなた、こんな所にまでたどりついたんですか?」

聞き覚えのある声だった。

それは、ジラルドがクロスの出資を受けて発掘をしていた時の現場監督だった。

「ジ・ライヤーがあなたにここへ入る許可を与えたのであれば、私はあなたに教えても差し支えはなくなったわけだ!…いや、その前に、まず謝らなければ」

「どういうことだ?」

「地上には表向きの語り部と、真実の語り部の両方がいるんです。あなたたち…とくにクロスという商人は実に油断がならなかった。様子を見て、絶対に真実を教えるわけにはいかない、と決まり、私たちはわざとなにもない場所にみせかけの遺跡を造ってあなたたちを欺いていました」

「なんだって?」

それでは、あの場所でクロスたちと袂を分かつ決意をしないままだったら、ジラルドは永久にこの場所には来れなかったのだ。

「…あの時俺は、迷いがあって、そしてそこに歌姫が…現れて…」

ジラルドは、手探りでオ・ランジュの手をとり、握りしめた。

「すみません。…けれど、ジ・ラルド。あなたがここにいるのは、あなたには真実を知る資格があった、ということでしょう…」

それきり現場監督だった男は口をつぐんだ。

おそらく、ひっきりなしに増えてきている地上人の波にまぎれ込んでしまったのだろう。

路が合流する度、ジラルドは目に見えないながらも、人の気配が増加してくるのがわかった。

地下へ続く路は永久か、とも思えたが、やがて、ジラルドの目にも見えるなにがしかの光が下方から差してきた。

ジラルドは、ほっとしてライターの火を消した。

「いや…まだこれは序の口なんだ。この星の秘密とやらは、これから、わかる」

不思議な実感がジラルドの探求心を刺激した。

「あの、あのね、ジ・ラルド」

その時、オ・ランジュがふいに立ち止まり、言いにくそうにジラルドに語りかけた。

「私たち、別れた方が良いと思うの」

「なぜだい?」

いきなりの申し出にジラルドはショックを受けた。

「あなたと私、同じ時間を過ごしてみて気づいたの。あなたの時間と私の時間、進み方がずれているみたい。このままだと、あなたは若いままなのに私だけおばあちゃんになってしまうかもしれない…」

「そんなことは…」

そう言いながらも、ジラルドは理解しかけていた。

プリズム星の、少なくとも地上人たちの成長速度は、彼のそれよりもとても早いのだった。

ア・イリスや、ア・キラにしても、あっというまに出会ったころの幼さはみられなくなってしまった。それをジラルドは気のせいだと片づけていたのだが…。

「私がまだ若くて見られる姿のうちに、その想い出だけを持って、あなたはあなたの世界へ帰って。…ジ・フィは私がちゃんと育てるから」

オ・ランジュの目から涙がぽろぽろこぼれた。

ジラルドはオ・ランジュを力いっぱい抱きしめた。

オ・ランジュの胸元で、ジラルドが結婚記念に渡したオパールの首飾りが揺れた。その輝きはいつも彼女のひとみの輝きに似ていた。

「俺の大事な奥さん。この先何があったって、俺は生涯君一人を愛しているよ。…それに、俺たちの娘のことも大切に思っている」

ジ・フィがきょとんとして、まんまるい目で両親の姿を見ていた。

「ええ…」

涙をぬぐいながらオ・ランジュは言った。

二人はいつまでも三人一緒にいられたらいいのに、と願わずにはいられなかった。

   ☆

 アルフレッドは仔猿の引き綱をほどき、自由にしてやった。

「これからちょっと野暮用があるんだ。お前まで危ないめにあわせる義理はないから、どこでもお前の好きなところへ行って良いんだぞ」

しかし、地面に下ろされた仔猿は綱無しでも、いつものようにアルフレッドの肩の上にのぼり、両手をアルフレッドの首にまわしてつかむと、ちょこんと座りこんだ。

「…しょうがないな」

アルフレッドは本当にそう思って言った。

「お前の分も無事に戻ってこなきゃ、浮かばれないよな。ははは」

自嘲気味な笑いが、少しずつ落ち着いた笑いにとってかわった。

「…そうだな。お前に名前をやろう。俺の長ったらしい名前の一部をやるよ。お前の名前は『ヴァン』だ」

『Alfred E V L』

アルフレッド・エルトン・ヴァン・ライト。

彼は自分の名前を噛み締めるように、思った。

 攻撃艇用として並んでいる宇宙船はどれも同じように傍目からは見えたが、一機だけ、ライト博士の設計の肝心な、重要な要素を取り入れて造られていたものに彼は近づいた。

アルフレッドはその宇宙船の人工脳に外部からアクセスして、絶対答えのでない数学の問題をわざと問いかけてコンピュータを迷走させた。

「ひらけ、ごま」

コンピュータが自己回復する前に、すばやく宇宙船のハッチを開けて転がりこんだ。

マザーコンピュータから出撃命令を解除されていた宇宙船は沈黙していたが、アルフレッドの手にかかると、息をふきかえしたように動き出した。

「荷物はできるだけ軽くしなきゃな」

外部に装備されていた大型の武器を取り外した。文字通り丸腰になったが、アルフレッドはそれで良いと考えた。

「…できれば、お客さんにもここで降りてもらいたいんだが…」

振り向きもせず、彼が言うと、

「なんだ。知ってたのか。あとでおどかしてやるつもりだったのに…」

拍子抜けした様子で、ウィルが姿を見せた。

「降りる気がないんなら、どこでもいいから着席してシートベルトをつけろよ。すぐ、発進だ。時間がないんでね」

肩をすくめると、ウィルはおとなしく従った。

そうして、アルフレッドはプリズム星を目指して宇宙船を発進させた。

 「いつから気づいてたんだ?」

ウィルが聞いた。

「この宇宙船がすっかり組みたてて置いてあるのを見たときから」

アルフレッドは肩をすくめてみせた。

 ウィル・バートンは、初めてコロニーに到着したとき、マザーコンピュータと取り引きをしたのだ。

身の安全と引き換えに情報を提供し続ける、という取り引き。

そうでなければ、人々の脅威となりうる殺人アンドロイドをコロニーが野放しにしておくはずがない。

それに、いくらなんでも、アルフレッドがここまでたいした障害もなしにたどりつけたのも変だ。おそらく泳がされていたんだろう、と知りつつ、他にどうしようもないので今こういう状況になっている。

「コロニー政府はそんなに、あの発明が気に入っているのかい?」

「正確には、マザーコンピュータが、だよ」

ウィルは答えた。

「俺はあんたがこの宇宙船を見て逃げ出す方に賭けてたんだが、あちらの言う通り、このざまだ」

ウィルの声はおだやかだった。

アルフレッドは何度も命を狙われたのに、不思議と怒りが沸いてこなかった。

「あのとき。俺が宇宙船から放り出されたとき、俺は絶対お前を許さないと思っていたんだがなぁ…」

アルフレッドはぼんやりと言った。

「俺だって好きで人殺ししたわけじゃない。最初はなんでもないありふれた事故の責任でスクラップにされそうになって、逃げようとしたはずみで巻き添えが出たんだ。それからどういうわけか、むこうから殺されにやってくるようになって…。俺は自分を守っていただけだったんだがなぁ」

「普通、アンドロイドは、人が死ぬ現場に居合わせたら自分からスクラップ化を希望するように仕向けるプログラムが組みこまれているはずなんだが」

「ああ。それは俺自身も知ってる。…狂ってるのさ」

あんまりあっさりウィルが認めたので、かえってアルフレッドはぎょっとした。

「俺が狂ってるって本当に気づいたのは、この前お前からスプレー缶の火をかけられたときだよ。前からうすうす気づいていたんだが、それが確信に変わった。人をなぶったりするときにあんなにぞくぞくするほど興奮するなんて知らなかった!」

ウィルは不気味な笑みを浮かべた。

「お前はアンドロイドじゃないな…」

アルフレッドが言うと、

「そう。俺はアンドロイドじゃないんだ!」

と、ウィルが激昂して言った。

「にんげんみたいだよ」

アルフレッドがそう言ったとたん、ウィルの顔から表情が消えた。

「俺が…にんげん?」

「ああ。アンドロイドにしては、感性が豊かすぎるし、なによりも自分を守ろうとしている姿はそう見えなくも無い」

ウィルは、一人でなにやら考えにふけっているようだった。

 巨大な彗星がおそろしい速度で近づきつつあった。

アルフレッドの操縦する宇宙船はプリズム星をかばうように、彗星と対峙した。

まだ、わずかだが時間がある。

アルフレッドは胸のポケットから、ヒロキにもらったホログラムオルゴールをとりだした。

しんとした船内にまだ幼さを残していた頃のア・イリスの歌声が響いた。

その曲は、Light is Rightだった。

「このままだと、あの惑星がぶつかる前に、この宇宙船が彗星とぶつかっておしゃかだぜ」

あまりにのんびりして見えたので、みかねてウィルが言った。

「ああ。…光は軽い。軽やかだ。そして明るい。…この宇宙帆船の帆は空間内の光量子を集めてエネルギーに変換する。あの彗星からも光をわけてもらうんだ」

「そのエネルギーを発生させる機関に『なにか』を施すと、爆発的なエネルギーが生まれる。マザーコンピュータは、そのエネルギー発生装置を欲しがってるんだ」

「そしてその『なにか』を施すきっかけになるパスワードを、ウィル、お前は知りたがっていた」

「ああそうだ」

いきごんでウィルがうなずいた。

アルフレッドは、ふっと笑った。

「皮肉だよな…」

「なにがだ?…俺はあらゆるやりかたでやってみたんだ。でも、答えは一つしかなかった。決まったパスワードを入力しなければ、この宇宙船自体が使えなくなる仕組みだった!」

「エネルギー発生装置じゃないよ。厳密に言えば、無限大のエネルギーが放出されるものだ」

「?どう違うっていうんだ」

一人だけ真実を知っていてせせら笑っている男を、ウィルはがくがく、と揺さぶった。

「おい!『ライト博士』」

アルフレッドが、びくり、とした。

「ライト…Light…光。Bright…明るい。Light is Right…ライト博士は俺」

そう言うと、アルフレッドは…、いや、ライト博士は宇宙帆船に組みこまれたコンピュータに唯一のパスワードを入力した。

『Light is Right』と。

   ☆

 「だましやがったな」

ウィルはむすっとして言った。

「誰が?」

アルフレッドはおもしろそうに言った。

「ああ、ちくしょう!腹のたつ。パスワードが合っていても、今度はエネルギーの放出がとまらなくなって、どっちにしろ最後は壊れるしかけだなんて!あんたは狂ってる」

「狂ってるのはお互い様だろう?」

「いや…、あんたは狂ってない」

「へえ?」

「エネルギーの塊になったこの宇宙帆船を巨大彗星にぶつけて、軌道をそらすつもりで、実際、パスワードを入力してしまった!」

「それがなぁ…、本当に思ってる通りにいくかどうか、ぜんぜん自信がないんだ」

「なにぃ?」

「まさか無限大のエネルギー放出がどのくらいの規模になるかなんて実験できたわけもないだろう?」

「おいっ」

ウィルは、

「最悪の場合、リゲル恒星系自体危ないのでは?」

と聞きたかったが、やめた。

「一応、脱出用ポット、っていうのもあるにはあるんだが…乗ってみるかい?」

その口調が、まるで遊園地でジェットコースターにのらないか、とでも誘われているような気さえして、さすがのウィルもあきれかえってしまった。

「助かる確率は?」

「他の場所より最悪、とだけしかわからない」

「あんた、仮にも博士なんだろう?」

「その称号は、地球を出るとき捨ててきた」

「…。アルフレッド」

「なんだい?ウィル」

「また会おう…」

もごもごと口の中で言って、ウィルは一人用の脱出用ポットに乗りこんだ。自動操縦の目的地点をコロニー付近にしておいたから、たぶん、マザーコンピュータが見捨てない限り、ウィルはコロニーに帰還できるだろう。

「俺はもうお前さんには会いたくないんだがな。…さて、と」

ウィルを乗せた脱出用ポットが無事宇宙船を離れたのを確認してから、アルフレッドはヴァンを連れて、別の脱出用ポットに乗りこんだ。

アルフレッドを乗せた脱出用ポットは、ウィルのとは別の方向に向かって宇宙船から排出された。

   ☆

 プリズム星に刻一刻と、巨大彗星が近づいていた。

 コツン、コツン、コツン…。

静かな中、杖をつく音と足音が響き渡った。

「ジ・ライヤー?これからこの星はどうなるんです?」

ジラルドが顔をあげて尋ねた。

「どうもなりはせんよ」

先を行くジ・ライヤーは肩をすくめてみせた。

地下都市は広大な広さだった。

その中核にこの星の心臓部ともいえる場所があった。

興味深く観察するジラルドは、やがて、ジ・ライヤーの真意を知った。

「ここは『操縦室』なんですね!」

ジ・ライヤーは微笑みながらうなずいた。

惑星型宇宙船であるプリズム星は、今、危機を回避するべくその軌道を変えようとしていた。

しかし、ジ・ライヤーは、その行為が時間的にぎりぎりであり、彗星を避けられる可能性が低い、という不安な要素を皆に隠していた。

なぜ、ぎりぎりになったのかを言えば、地上人を地下へ回収するのに時間がかかりすぎたことがあった。

中でも、全く真実を知らされていなかった人々の思わぬ強い抵抗により、地上に残ると言い張る者を説得するのに時間がかかってしまったのだ。

地上にまだ人々が残っている段階では、様々な危険が予測されるので、プリズム星の軌道を変えることができなかった。

「運を信じるしかなかろう」

ジ・ライヤーは一人ごちた。

一方、ジラルドは、というと、星図に時間ごとのリゲル恒星系の軌道を示すシミュレーションを手持ちの小型コンピュータで計算してみていた。

「これは…。このままじゃ…」

ジ・ライヤーに抗議しようか、と思ったが、彼が危険を承知の上で、他の者に余計な混乱を招かないためにあえて黙っていることを、わざわざ知らせる必要は、ない、と思った。

それでも。自分が知りたかった未知の惑星の秘密をこうして細部にわたって見せてもらえたことが、ジラルドは嬉しかった。

「これで、生きてコロニー世界へ帰還できたらばんばんざい、なんだけどな…」

へへ、と笑って、鼻を人差し指でこすった。

「ジ・ラルド!こんなところにいた」

ふいに、ア・イリスの声がした。

「ここって、誰でも出入りできるんですか?」

ぎょっ、としてジラルドはジ・ライヤーに聞いた。

「いいや。…この娘は、あなたをここから連れ出すためにやってきたのだよ。今から起こることをあなたの家族の元で過ごせるように、迎えにきてもらった」

「…せっかくの配慮なんですが…」

ジラルドはうなだれて、オ・ランジュが彼に別れを告げたこと、そしてその理由が、彼らの成長速度の違いにあること、をジ・ライヤーに語った。

「だから俺は家族の元には行けません」

ジ・ライヤーは何も言わず、ジラルドの肩に手を置いた。

ア・イリスはジラルドの話しを目を見開いて聞いていた。

「ごめんなさい。私ちっともそんなことだなんて知らなくて…」

「ア・イリスのせいじゃないよ」

ジラルドは鼻をすすった。

「でも、きっと大丈夫!なにもかも、元通りにおさまるはず。神話が現実になって、『あの人』が空から助けに降りてくる!」

「終末神話か…。地上人は特にそればかり唱えておる」

ジ・ライヤーが言った。

ジラルドは狂信的に神話について語るア・イリスをびっくりして眺めていたが、やがて、良い事だけ、良い所だけ、は信じてみてもいいかもしれない、と微笑んだ。

それが、希望、というものなのかもしれなかった。

   ☆

 無人になった宇宙帆船は、その帆で狂ったようにエネルギーを生み出し続けていた。そのまま放っておかれたら、いつか星雲さえも飲み込むエネルギーを放出する危険をはらんでいたが、ライト博士が計算しておいた時間と位置によって、まともに巨大彗星に衝突した。

衝撃で、帆のエネルギーのそれ以上の放出は打ち消されてしまった。

やがて、リゲル恒星系に爆発的な衝撃波がおしよせた。

しかし、巨大彗星は進むことをやめなかった。

わずかに生じた軌道のずれが、誰かの希望を支えていた。




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