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終焉での世界での始まり10

長い廊下を一人の男は歩いていた。

白髪をオールバックにし、銀色の眼鏡を掛け、黒色のロングコート、その下はグレーのカッターシャツ、黒のネクタイ、スラックスを身に着けていた。

年齢は20代前半。それが地なのだろうか…常に眉間にシワを寄せて厳しい表情をしていた。男は…進藤青葉は《関西》の《代表候補者》の一人だった。

《代表者》《代表候補者》とは基本的に己の実力、経験、知識、それらを全て兼ね揃えた上で決まる。

実力とは…《国》全ての人間を動かせる人望…指揮能力の高さ。経験は互いの魔術師同士の争いの対処の仕方、自分の《国》を相手の《国》に奪われない為、または奪う為の相手の本来の意図と目的を読む力。そして知識は魔術における大量の知識と政治に関しての最低限の知識。

最低でもこの三つが必要となってくる。これらを全てを揃えて《代表者》《代表候補者》となる事は口で言う程簡単な事ではなく、難しい事に等しい。

《代表候補者》とは大体が《代表者》が選んだ人間……もしくはその適正に合った親族などがなるパターンが多い。

仮に《代表候補者》が存在せず、選ばれた人間、親族がいない場合は魔術師の中から選ばれる事がある。

選ばれた魔術師はその適正と条件を全て満たしているとされ、いくら優秀な人間、魔術師がいたとしても条件と適正をクリア出来ていなければ、それは《代表候補者》になる資格が無い者とみなし、また《代表者》が選ばれる方法でもそれと同様になってしまう。

進藤の場合は《関西》の《代表者》が彼の魔術師での力に目をつけ、直々に《代表候補者》の地位へと任命した。

進藤としては願ってもない事だった。

彼は何れこの国のトップになりたいと願い、常に己の魔術を高め、行く行くは《代表候補者》《代表者》の地位に就き、自分の理想の《国》…誰一人すら自分に逆らわない、逆らう事すら許されない《国》を作ろうとしていた。

それは歪んだ想いに果しなく近い事だった。

優秀な人間が無能で下等な人間の上に立つ。

それは当然で、当たり前の事だと思い、疑問すらも抱いた事は今まで一度もなかった。

それにこの《関西》は市民達に対する扱いが甘い。

自分のやり方ならば今のようにはいかない。

使える人間は使い続け、使えない人間は容赦なく切り捨てる。

そのようなやり方をしなければ自分が理想とする《国》は築けないだろうし、他の《国》に対しても引けを取るだろう……。

それと同時に彼は、行く行く先々は現在の《代表者》寺田秀水てらだしゅうすいの命を狙い、殺害し、その後の自分に振りかかってくる《代表者》としての地位を狙っていた。

今は《代表候補者》と言う立場に収まりはしてはいるが、何れはこの《関西》を乗っ取り、寺田秀水に取って代わる。そう思っていた。

コツと靴の踵の音を鳴らしながら一枚の隔たれた扉の前に進藤は立ち止まった。

そして彼はその扉を2、3回程ノックをする。

暫くして「入れ」と言う男の短い声が聞こえた。それに従い扉のドアノブに手を掛け、「失礼致します」と口にしながら彼は室内へと入る。

室内は広い空間となっており、床一面は濃い赤黒い絨毯が敷かれ、周囲には所々インテリアなどが置かれており、正面には大きな机があった。

一見パッと見、社長室の作りに何処と無く似ていた。その机に一人の男が座っていた。

白シャツにその上からグレーのVネックニットソー、黒パーカー、下はデニムのズボンを履いており、ニコニコとした表情と穏やかな雰囲気を兼ね揃えた、見た目20代後半だが、実年齢は40代に近い茶髪の男…《代表者》寺田秀水がそこにいた。

進藤が寺田の前に来ると寺田は穏やかな口調で彼へと話し掛けた。

「急に呼びつけて悪かったな」

「いえ、丁度手が空いていたものですから。それでお話と言うのは……?」

寺田は軽い口調で、

「あ、いや、別に大した事ではないんだ。ただ……」

そう言ったのち、スッと目を細め、そして真面目な表情をした。

「《関東》の小僧を始末したって話は本当なのか?」

進藤は《代表候補者》だった彩和月智也の事を言っているのだと直ぐに察して、平然とした様子で口を開く。

「そうです……ですが、何も問題は無いはずです。私と彼は《代表候補者》と言う立場と同時に魔術師です。もとより《代表候補者》が魔術師の場合その戦闘は条例契約に基づき認められているはずですが……」

寺田は左右に首を振り、そして、くつくつとどこか可笑しそうに笑った。

「いや、誤解するなよ。お前を責めている訳じゃない。ただの確認だよ。それに彩和月智也は危険な存在だった…。色んな意味での、な」

寺田は一度言葉を切り、そして続けた。

「危険で邪魔な芽はとっとと摘んでいた方が良い。あの彩和月和也の後継者ならば尚更だ。それに今《関東》は《四国》と同盟を結ぼうとしていると言う噂が流れてるしな……」

そう言いながら、そして寺田はふとを思い出したかのように話の話題を変えた。

「そう言えば、彩和月智也の代わりに弟の彩和月拓哉と言う《生命の源》の力を持つ小僧が《代表候補者》になる可能性があると噂が流れているのだが、そっちの方は今どうなっている?何でもあの彩和月智也の魔術師、神宮時アリス自らあの小僧の護衛をしているとか、だか?」

進藤はその問い掛けに低い声音で微笑を浮かべながら答えた。

「彼の方には私の魔術師……結城亜利砂を放っております。例えあの神宮時アリスが関わっていようとも彼女ならば問題なく、神宮時アリスに引けを取る事はないでしょう。神宮時アリス諸とも彩和月拓哉を始末出来るかと思います。それに彼はまだ《契約》をしてはいない……。簡単に事は進むかと思います」

寺田はその言葉を聞き、軽くふっと口許を緩めた。

「さすがは用意周到だな」

「お褒めにに預かり光栄です」

「確かに、結城亜利砂ならばあの小僧達の始末は問題ないかもしれないな……。何せ彼女は、この日本でもっとも有名なあの陰陽道の末裔……《朝霧》の人間だからな」

「それに、してもだ。何故そんなにお前は彩和月拓哉と言う小僧をさっさと始末したいんだ?《生命の源》を持つ人間だからか?それともお前と同じ立場だった彩和月智也の弟だから…か?」

寺田は進藤を真っ直ぐに見ながら、試すように、そしてニヤニヤと意地の悪い顔をしながら言った。

進藤は眉をピクッとさせ、寺田の言わんとしている本来の意図に気づきながらも敢えてそれを無視した。そんな明らさまで単純な意図に乗ってやるつもりはないと言うかのように、代わりに彼は眼鏡のブリッチを軽くクイッと押し、嘲笑を浮かべて一言放った。


「その両方ですよ。それに、嫌いなんですよ……、自分の理想だけを掲げながら甘い意思で戦おうとする人間なんかが……」








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