影が薄いって言わないで 1
宜しくお願いします
看病してくれたアモンから、一緒に暗殺者に襲われたエルフの少女(リリアナという名前らしい。)が身体を張って助けてくれた事を聞いたユキナリは、お礼を言う為に彼女が休んでいるという部屋へと向かった。
手をひらひらと振って見送ってくれるアモンがいる部屋を出ると、長い廊下に出た
廊下の左右には多くのドアが並んでおり、突当りの部屋であったユキナリが休んでいた部屋から、階段までの間に12部屋もあるようだ。
風俗店である龍宮城の空き部屋を貸して貰って休んでいたのだから、勿論ここは龍宮城の中である。仕事柄、個室が必須の職種の為これだけの部屋数があるのだろう。
南地区の巨大な風俗街の中でも、最大の規模を誇る【龍宮城】は店舗の規模も大きく、五階建ての豪邸である。
1階は受付と待合室、休憩用のラウンジなどのスペースがあり、2・3・4階は接客用の個室が計36室完備。そして5階は従業員である風俗嬢達のプライベートスペースとなっている。
ユキナリが居た部屋は4階の最奥である。1階で倒れてから運ばれたというのになぜ最も離れた部屋に運ばれたのかは謎である。
「えっと、確かアモンさんが言うには、リリアナちゃんが休んでいるのは2階の3号室だって言ってたな。」
取りあえず廊下の反対側に見える階段に向かおうと歩を進めようとした時だった。
ドッカーン!!
3つ先の扉が爆音と共に勢いよく吹き飛んだ。強烈な爆風がユキナリを襲う。
すると、吹き飛んだ入口から小柄な人影が飛び出してきた。
小柄な人影は焦ったようにキョロキョロと辺りを見回すと、状況を飲み込めないで立ち尽くしていたユキナリに気が付くと、勢いよく突進してきた。
「見つけたわよ!ユキナリ!」
シュバっと飛びついて来た人影は、ガシッとユキナリに抱き付いてきた。
影の正体は、お尻から3本のフワフワの尻尾を生やして、頭の上の狐耳を忙しなくピコピコ動かしている【タンポポ】であった。
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