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第13話 志姫、成り行きで遊撃部隊の指揮を執る

次話投稿です。

真面目ぶっててもやはりぼろが出始めてます。

 風が吹き荒ぶ荒野、そこには篝火に照らされて、馬だけでなく地を走る竜モドキ(竜種ではない)や口から自分が認めた乗り手に限り、火を噴いて援護するフレイムダチョウなど、様々な生き物に騎乗をしている冒険者が総勢150名揃っていた。


「改めて今回の作戦を説明する。オーク共は、基本こちらを気にすることはなくライテックに向かい直進している。進行方向から攻撃すれば、相手の勢いに飲まれる可能性はあるが、背後から強襲すれば亜種以外は反撃を受けることなく殲滅が可能であろう。


 我々は都市全域をカバーするために、各10名ずつに分散して事に当たる。部隊にはそれぞれ最低1名は回復要員を配置、骨折などの重傷者には私が治療を施すので、無理せず安全圏に離脱すること。これは、自らが乗っている騎馬の負傷に関しても同様である。今作戦は、散発して次々にやってくるオークをまとまらないうちに背後から強襲して各個撃破していく作戦である。心するように。


 私はパーティーメンバーと共に都市の周りを周回する形で遊撃に当たるので、負傷者はその際に名乗り出るように。以上、質問はあるか?」



 ライテックの冒険者ギルドでのギルド長やアカデミー長との打ち合わせの中、オークが次々に押し寄せている事実が確認された時点で、私の作戦が決行されることとなった。


 決断さえしてしまえば後は早い物で、他の都市への冒険者派遣の緊急要請の準備。書状を私が持っていくことになるかと思っていたのだが、ギルド内での指示を長髪眼鏡の職員に任せたギルド長が私に随伴しすることになった。


 結果的には、ギルド長がいてくれて対応が早く済んだのはよかったが、あの長髪眼鏡の職員さんは血反吐吐いてないといいけど。


 あと、嬉しい誤算があった。本来戦闘にさせないつもりであった未成年組のアカデミー生達が、ベテランの冒険者の戦闘を見れるということで、都市の周りを覆っている城壁の上から弓矢魔法で援護をしてくれることになった。危険が全くないわけではないが、正直な話ありがたい。


 都市をいくつか回って冒険者を一度ライテックに集結させ、プリライトの梺に転送をさせようと準備をしていたところ、ユミール、ティアミー、エリシア、セティリアの4人が私についてくる旨を宣言。少し悩んだが、この遊撃部隊で唯一の重症治療の出来る者を一人にさせるのはまずいだろうとのギルド長の一言で連れて行くことを決定、そして今に至る。


 細々とした作戦に対する質問に返答をして、作戦開始の時が訪れた。


「城壁の上からはアカデミーの子供達が我々の戦いを眺めることになる。未来の冒険者達に我々ベテラン勢の実力を見せつけるぞ。作戦開始だ、総員、散開して突撃!」


 私のかけ声に応じて、冒険者達は各地に散っていった。これからが本番である。


「あんた偉そうなこと言ってたけど冒険者になったの昨日じゃん。」


「なに、こういうのははったりが大事なんだよ。そのためにわざわざこんな格好までしているんだからね。」


 そう、いくら貴重なアコライトとはいえランクの劣る冒険者相手の指示に従うのに難局を示す者がいるかもしれないと、倉庫から退魔のローブを取り出し、着込んでいた。装備の見た目がださくなる前の中期の装備ではあるが、オーク程度ならたとえ亜種でも私の防御力を突破は出来まい。


 このローブ、自分の魔力量に応じてローブに縫い込まれているミスリルの繊維から淡い光が漏れ出すので、結構目立つ。高級品であることと、ベテラン冒険者の何人かはこのローブの存在を知っており、光の量を見て私の実力を理解したようで積極的に下についてくれたのが助かった。


「さて、我々はこれから都市の周りを周回しつつ遊撃だ。借り物の騎乗だがみんな大丈夫かい?」


「それは大丈夫ですが、志姫って何者なんですか? ベテランの冒険者を従わせるような妙なカリスマといい、その装備といい。」


「ただの流れのアコライトだよ。有名人だったら各都市から冒険者連れてきてる段階で誰かが気づいていただろう? ギルド長もそれを確認するために他の都市へ付いてきた節もあるしね。」


「えっ、ひょっとして、志姫の事を詮索をしないと約束したから遠回しな方法で情報を集めようとしてたとか? ずっこい・・・」


「はっはっはっ、いいさ。何をどうしたところで私が無名のアコライトであることには代わりがないからね。さあ、そろそろ出発だ。」


『了解!』


 会話を終わらせた私たちは、少し時間をおいて移動を開始していった。だが、先ほどの会話の内容で少し気になるところもあった。


 元の世界で聖女活動をしていたときは、実績と地位がそれなりにあったので今のような態度でも今と同じようなことが出来ただろう。でも、無名のこの状態で同じことが出来ている。態度を変えない私も私であるが、もしかして、世界に組み込まれた志姫という存在の聖女補正が働いているのかもしれない。あんまり調子に乗って余計なことをしないようにしておこう。



 時折10体未満のオークの集団を殲滅しつつ周回をしていたが、騎馬以外の重傷者は今のところ出ていない。まあ、騎馬がやられたら作戦の進行度が大幅に落ちてしまうから私は必須であったんだが。


 ユミール達との連携も意外とスムーズにいっている。作戦開始から2時間ほど経過してそろそろ重傷患者が現れるかもしれないと、パーティー全員にウィンドウォークをかけて移動をしているが、そのままの戦闘でも問題が出ていない。やるではないか。


「姐さん、助っ人にきやしたぜ!!」


『バーサーカーの姐さん、なんでも命令を!!』


『ば、バーサーカー!?』


 周回終わりに入ろうとしたとき、いきなり聞き覚えのある声がかかった。ザックたちプリライトの山守ではないか。全員フレイムダチョウに乗っている。いつの間にそんなものを。あと、うちのメンバーはバーサーカーという単語に反応するんじゃない。あれは事実無根だ。


「いや、よく来てくれた。状況は分かるな? 今オークが次々とライテックに押し寄せている。進行の邪魔さえしなければ攻撃をしてこないので背後から攻めると簡単に倒せる。


 今は都市全域をカバーできているが、そろそろ重傷者が出てくる頃だ。私が周回して治療して回るので、君たちは私が治療に入るまで、各部隊の穴埋めに入ってくれ。」


『了解です、姐さん!!』


 ザック達はフレイムダチョウを巧みに操り、夜の闇に突撃していった。よく見えるな・・・


「バーサーカーってなんなのよ?」


「あれは、彼らが勝手にそう思いこんでいるだけだよ。先日、彼らが戦闘で苦戦していたのを助っ人に入ったとき、ハルバードを振り回しながら雄叫び上げて突撃したらバーサーカー扱いされて逃げられたことがあってね。まあ、その後すぐに誤解は解けたんだが。」


「・・・あんたって刃物持ったら人が変わるタイプ?」


「いや、どうだろう。そんな自覚はないかが。」


「この戦闘中、杖以外使っちゃだめだからね。」


「信用がないな。まあいい、善処しよう。」


 スキル主体だと、ホーリーライトは属性的に有効度は低い。腐女子ビームは魔力消費が激しい上に単体攻撃で向いていない。やはり、回復とパーティーの支援に専念しつつ、ユミール達の戦闘経験を積ませるのが吉か。


 ウィンドウォークだけでなく、ブレッシングも全員にかけて戦闘を再開していった。



 夜明けまでもう近い。






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