第12話 志姫、土壇場では頼りになる
次話投稿です。
小説の題名に書いているとおり、たまには救世主らしくまじめになります。
「ずぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃっ、シギャーーーー!!」
おいしかった食事のあと、みんなでたまり場に帰ってきてそろそろ寝ようかという時になり、外から謎の寄生が聞こえてきた。
「なに!? こんな都市内で、しかも商業地区に魔物が出たの?」
ユミールが叫びながら急いで戦闘の準備を始める。それに続いて、残りの三人も慌てだす。
「あれはデスメタルというやつだね。私の故郷にあった音楽のジャンルの一つで、破滅的な格好をした人たちが、今みたいな奇声を上げながら頭を上下に激しく動かしたりするんだ。こんな時間に迷惑な話だ。」
みんなが慌てている中、私は落ち着いた物で、ゆったりと食後のBicthを愉しむ。あ、だめだ、げっぷがでそう。
「あ、あれが、音楽・・・? 歌っているの、人が!?」
「ああ、うちの近所でも夜中にやっている人がよくいてね。迷惑な物だったよ。」
私の言葉に、みんなは驚愕の眼差しを向ける。まあ、知らなければしょうがあるまい。
「ぎゃああああっ、モンスターだ!! 檻から逃げてるぞ、誰か何とかしてくれえええっ!!」
「アカデミーとかギルドに応援を頼め、巡回の兵士レベルじゃ手に負えそうにない!!」
外から聞こえてくる声。みんなの視線が黙って私に集中する。
「何をやってるんだね、君たちは。私は先に行ってるぞ!」
Bitchを飲み終わった私はみんなの罵声を背に外へと飛び出していった。
商業地区ということで夕方を過ぎて人があまりいなかったのは幸いした。騒ぎの地点がすぐに判明し、そこに向かって急行する。そこには、暴れているオークがいた。
暗くなってきていたのですぐには分からなかったが、普通のオークよりも2周りも大きく、頭は突起のようなこぶが盛り上がっている。見覚えがあるぞ、これは・・・!
「慌てるな! 接近戦に自信がよほどある者以外は近づくんじゃない。
あいつはオークキングだ。あの叫び声は魔力を乗せて遠くまで響くから、遠方のオークもこの町までおびき寄せてしまうぞ。私があいつの足止めをするから遠距離が出来るやつで頭を狙え!」
私は戦線に飛び込みながら指示を飛ばす。
いきなり現れた私に反論の声を上げようとした者もいたが、私の会話の内容を聞いて顔を青ざめさせ、慌てて指示通りに動き出す。中にはまだモンスターとの戦闘に慣れていないであろう者もいて、誤って私に魔法や弓を当ててしまい、混乱し出す者まで現れ始めた。
「落ち着け、私に攻撃が当たっても構わんからどんどん攻撃を続けろ、相手に声を出させるんじゃない!」
私の一喝で統制を取り戻し、攻撃が再開される。だが、手数が足りない。時間をかけずにしとめないと非常にまずいことになる。腐女子ビームはオーバーキルで貫通したら街に被害が出るし、慌てて飛び出したから今は無手だ。せめて武器を取り出す時間があれば・・・
と、そこでようやくユミール達が合流してきた。助かった!
「ユミール、クァグマイアだ。一瞬だけ足止めを頼む!」
弓やら魔法やらオークキングの打撃であちこちに怪我を負っている私に驚いていたが、さすがは冒険者。私の指示通りに魔法をかけてくれた。オークキングは突如発生した泥沼に足を取られている。
その隙に武器を取り出す。強力な武器は倉庫の中だし、サーベルじゃ倒すのに時間がかかる。ここはやはり火ハルバードだ。
「待たせたな、オークキング。時間をかけずに葬ってやろう。」
オークキングは亜種のオークよりも強力なボス系のモンスターだが、Lvはそこまで高い訳ではない。身体能力は私の方が上だし、奴は地の属性で私の火ハルバードとの相性はいい。
「次、合図にあわせて一斉射撃だ。一撃で決めてやる!」
私の合図に反応して周囲から一斉に攻撃が飛んでくる。一部私に当たるがこの僧服は衣装装備で中にはちゃんと鎧を着込んでいる。耐久力も大戦前の騎士並にはある、問題はない。オークキングが私をも巻き込んだ攻撃にひるんだ隙に大振りでハルバードを振るい、首を刎ねた。
「喜んでいる場合ではない、終わりではないぞ。こいつの叫び声につられてこの都市に向かってオークが押し寄せてくるはずだ。ユミールは冒険者ギルドに連絡して残りの三人はアカデミーにも報告! それと、オークキングを街に入れた犯人も捕らえろ!」
戦闘に参加していた者達は戦闘の勝利に歓声を上げたりへたり込んだりしていたが、その指示を聞いてそれぞれ慌てて動き出す。
「犯人は既に拘束しております。如何しましょう!」
衛兵らしき人物が私に報告をしてくる。そう言えば流れで勝手に指示出してるけどいいんだろうか? まあ、いいか。
「そうか、平時なら犯罪者は詰め所にでも連れて行かれるんだろうが、今は緊急事態だ。状況確認のために冒険者ギルドに連れて行く。君、今まで起こったことも含めて上司に詳細に報告をお願いできないだろうか。」
「了解しました! あ、あの。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか!」
「私は志姫だ。冒険者ギルドに登録しているDランクのアコライトだ。ギルドにいると思うので何かあればそこに来てほしい。」
「それでは至急報告に行って参ります。失礼します!」
敬礼をした衛兵らしき人は拘束されている太った男を私に差し出し、走っていった。小悪党面だけど、脂ぎっててあんま触りたくないな。怪我がつらい振りをして、周囲の人にオークキングの死体と一緒に運んでもらいギルドに向かっていった。
私たちがギルドにたどり着いたとき、先に向かっていたユミールがあの長髪眼鏡の職員を連れて飛び出してきたところだった。とりあえず、この騒動の犯人と思われる男を引き渡し、ユミールと一緒にギルドの会議室へと向かった。中には初老の男性と、耳が長く、全体的にほっそりとした印象の女性が待っていた。女性はエルフのようだな。
「手短に紹介させてもらう。ワシはこの冒険者ギルドの支部長のゴードンじゃ。そして、隣にいるのはアカデミーのフィシス校長じゃ。」
「私は本日ギルド登録したばかりのDランクアコライト、志姫です。火急の事態の発生により報告に参りました。」
「そうらしいの。まず報告を聞かせてもらおう。」
そうして、私は商業地区にあるたまり場から聞こえてきた悲鳴から今までの一連の流れを説明した。それぞれのトップの二人は何かを考え込んでいる。
「話は分かった。じゃが、オークキングが遠方のオークを呼び寄せるというのは本当なんじゃろうか? 元々多くの集団の中からオークキングが発生して群れを率いるというのは聞いたことがあるんじゃが。」
「あれは一般のオークキングとは違います。オークの死体を見てもらえば分かると思いますが、頭頂部に長い突起のような物があるはずです。
あれは、オークキングの亜種とも言える存在で、発生条件は不明ですが、ある特定の状況下に置いて生まれ、先ほど申しましたように周辺地域からオークを呼び寄せます。頭上の突起物からオークを呼び寄せるための魔力を発散しているとも言われていますね。
私は最近の出来事には詳しくありませんが、千年前にあった大戦前の頃の冒険者の記録を読んだことがあり、その時の出来事が詳細に記述されておりました。そのときは周辺地域のオーク全てが呼び寄せられ、1000体にも及んだと言われております。
正直、私の話の真偽はすぐに判明すると思いますよ。近場のオークから次々に押し寄せてくるはずですから、都市の外を警戒している見張りからでも報告が入ってくるでしょう。」
私の言葉を聞いて、脱力したギルド長はソファーに深く座り込む。
「そうか、話が本当なら確かにすぐ判明することであるな。真偽は分からなかったが、都市の防衛に関しては既に指示を出してある。君は、どれほどのオークが押し寄せてくると思っているのかね。」
「残念ながら、私はこの都市に来たのは本日が初めてで、モンスターの生態調査を行ったことがありません。その辺はギルド長が詳しいのでは?」
「まあ、そうじゃな。最悪の場合、君が読んだという冒険者の記録と同じくらいはやってくると考えた方がいいかもしれん。」
都市の防衛は大丈夫なのであろうか? 大戦前であればさまざまな職があったのである程度のレベルがあれば1割ほど亜種が混じっていたたとしても1000体程度はさほど苦労することもなかったであろう。だが、この都市はアカデミーを擁する、いわゆる意味初心者向けの都市だ。平均的なLvも低いであろうし、何より冒険者は専門職に比べてHPやMPが低いはずだ。
「まさかとは思いますが、アカデミー生の未成年まで防衛戦に駆りだすつもりですか?」
「その相談を先ほどまで行っていたのですよ。・・・生徒は数は多い。一般市民よりは力もある。しょうがないのかもしれませんね。」
ため息と共に、アカデミー長が返事をする。その目には苦悩と諦めの表情が浮かんでいる。
諦めることは、許されないな。私には出来ることがある。
「提案があります。防衛のための策が。」
「ほう、何じゃね?」
この状況に置いて打開策があると聞かされた二人は驚いた表情でこちらを見る。横でじっと話を聞いていたユミールも希望の表情を浮かべていた。
「応援を呼ぶんです、他の都市から。」
「それは無理じゃな。そなたはアコライトらしいが、ポータルのことは詳しくないようじゃな。あれは一度に送ることの出来る人数は3人まで、それもかなりの魔力を消耗する。他の都市から冒険者を呼べなくはないが、その都市の神殿のポータル取得者が全員集まっても、送り込める人数は30人程度が限界じゃろう。その程度の人数じゃ守りきれんよ。」
私の提案は不可能と思われたのだろう。首を横に振って否定をしてきた。だが、私なら出来る。
「私のことを一切詮索しないと、二人ともここで宣言できますか?」
「なんじゃね、いきなり。」
「市民に犠牲を出さずにこの都市を護るための話をしているんです。どうですか?」
「私は構いません。市民というのは、私のところの未成年のアカデミー生達も含まれているのでしょう?」
「もちろんです。」
緊急時に大事なことを即座に決断できる。見かけよりもかなり頼りになる校長だな。
「ふう、この事態をうまく収集できるのなら、ワシも協力するしかあるまい。了解じゃ。」
ギルド長も了承した。ならば、後は私ががんばるだけだ。
「それでは話します。私はアコライトですが、ポータルが使えます。それも、人数制限はほぼありません。私をポータルで他の都市へ応援を呼びに行って来ます。
作戦はこうです。この都市のメンバーは打って出ることはせずに防衛に集中。私はポータルをプリライトの梺の荒野に登録をしておりますので、そこに足の速い騎乗生物を所有している冒険者を中心に送り込み、撃破をして回ります。私はその遊撃部隊で回復役として支援して回ると言うわけですね。」
話が終わると、ユミールまで含めて全員が呆然と私を見ている。やはり、信じられなかったのであろうか?
「いや、まさか・・・本当にポータルが使えるのかね?」
「これでも信じられませんか? ”ポータル”」
部屋の隅の空間にポータルを発生させる。あごがはずれんばかりに驚いているな。まあ、常識をぶち壊すような真似をしたのだからしょうがないか。
「これで信じてもらえましたか? 後はあなた達の判断におまかせします。」
言うべきことをすべて言った私は、ソファーに座り、返事を待つことにした。だが、その後すぐに部屋のドアを叩く音がした。
「失礼します。大変です、オークが、周辺のオークの群れが次々にこの都市に向かって押し寄せてきています!」
ゆっくりと返事を待つ余裕はもはや残されていないようだった。




