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第11話 志姫、いきなりセレブになる。

「なるほど。つまり三人はそれぞれ、探索系、戦士系、戦士・回復系というわけか。」


 ティアミー、セティリア、エリシアの順でパーティーでの役割を教えてもらった。冒険者で回復役を務めたら、がんばっても中級の回復スキルまでしか取れないし、余裕がある分を戦士系に回しているんだろう。攻撃系スキルを取るという選択肢もあるが、ユミールが入れば完璧な布陣になりそうだ。


 雑談をしつつ情報収集をしてみたが、冒険者のスキルはヒールみたいに専門職とで効果が多少差が出るようだ。冒険者のスキルをパチモンスキルと呼ぶことにしようか。しかし、うっかり口にしたら袋叩きにされそうだからやめておこう。私なら絶対やってしまうから。


「それより驚きました。まさか志姫がアコライトとは。」


「アコライトが冒険者になるのは珍しいそうだけど、だれもかれもこの僧服で気づかなかったのはなぜだろう?」


「いや、教会勤めの聖職者はみんなもっときらびやかな服装してるし。」


「だよね~、志姫の前で言うのもなんだけど、聖職者ってお金にがめついし。」


「いやまって、待ってくれ。お金にがめついって、もしかしてヴィエル教もそうなのか!?」


 他の教団はともかく、ヴィエル教団まで金の亡者に成り下がっているとかは、さすがに看破できないぞ。最悪、私が改革を起こすしかないか。


「ヴィエル教ですか、あそこは多少のお布施を求めることはありますが、そのお布施も信者の人に還元しておりますし、理想的ではあるんですが・・・」


 エリシアの話によると、ヴィエル教は真実の愛を貫いた者達の保護を総本山で行っているらしく、養育等で資金が必要であるらしい。とはいえ他の教団より格安なのだが、肝心のヴィエル教団は総じてインドア系で物書きが多く、Lvが低いため回復能力がお粗末らしい。・・・・頭が痛くなってきた。


 一番手っ取り早いのは、アコライトの転職石を解放して冒険者ギルド員の回復役をアコライトに転職させてしまうことかな。しかし、上位職のプリーストや3次職のアークプリーストの転職石はまだ様子を見れていない。まだしばらく情報の開示は伏せておくべきだろうか。


 転職石を解放することにより世界中の教団から睨まれるだろうけど、ことごとく返り討ちにしてくれるわ。フハハハハハッ


「ふふ、フハハハハッ」


「ねえ、なんか志姫がすごく邪悪な顔しながら高笑いし出したんだけど。」


「気にしないで。これが志姫の普通だから。」


 ユミールが失礼極まりないことを言う。また後でお仕置きだ。


 いろいろと話を聞き終えたところで、そろそろいい時間だし宿を取らねば。みんなにお勧めの宿を聞いてみる。


「泊まるだけでしたらここの2階使ってもよろしいですよ。自炊する必要はありますが、ベッドもありますし冒険者なら生活魔法で身の回りはある程度清潔に出来ますので。」


「なるほど。2階建てで上がなんなのか気になっていたが、宿泊施設にしていたのか。・・・ん?生活魔法? なんだいそれは。」


『え!?』


 私の疑問に対しみんなが揃って驚いた表情を浮かべた。聞いたことのないスキルだけど、メジャーなのか?


「いや、生活魔法って旅人の基本スキルでしょ。」


「志姫、あんた旅をしていたとか言ってたけど、生活魔法無しでよく生きてこられたわね。」


「スキルをスルーして転職とかありえません・・・・」


 痛い。みんなの言葉がフルボッコ過ぎて痛い。とはいえ、終末郷では生活魔法なんて言うものはなかった。これもこの世界のオリジナルスキルか。


 スキルツリーを呼び出し、旅人の欄を開くと、確かに生活魔法があった。最大Lvは1と、簡単に取得できそうだし、アコライトのまだ使ってないスキルポイントを使用して生活魔法を取得した。


「なるほど、ずっと気づかなかったのか。今取得したよ。それで、どんな効果があるんだい?」


「ぎゃあああ! アコライトのスキルポイント使うなってなんてもったいないことを!!」


「そうでもないさ。きっと生活魔法というのはあるのと無いのでは大違いだろうからね。」


 みんなの先ほどの反応から見て、生活魔法は必須なんだろう。ならばこれで問題ない。そもそも、アコライトのスキルレベルなんて過剰に過ぎているし。


 興奮しているユミールをなだめつつ、生活魔法の詳細を聞き出した。着火や浄化、水作成、乾燥などらしい。・・・確かに、あるのと無いのでは全然違う。


「いや、いろいろ教えてくれて感謝するよ。お礼に皆で食事でもどうかな?奢らせてもらうよ。」


「ありがとうございます。それでしたら私たちのいきつけのパ」


 ユミールがものすごい速度でセティリアの口を塞いで、そのまま部屋の隅に引っ張っていき、他の二人も集まって何かをごにょごにょとやっている。彼女は何を言うつもりだったんだろう? いや、聞いてはいけない悪魔の言葉のような気がする。その後の話し合いで近場のちょっとお洒落なディナーが食べられるところに決まった。


「そうそう、聞きたいことがあったんだが、このお金って使えないのかい?」


「金貨っぽいけど、デザインが違うわね。・・・あれ? 指ではじいたら淡く光ってるんだけど、これ何?」


「何って、魔金貨だけど。魔力で出来た金貨。」


 終末郷オンラインで使用されている通貨である。プレイヤーが皆何億枚も金貨持ってるのは異常すぎるとどうでもいいことで一時期騒がれて、公式設定で、これは純粋な金貨ではなく、魔力で作り出された魔金貨ですと言っていた。先ほど冒険者ギルドで受け取ったお金は普通の金貨や銀貨だった。銅貨も流通しているようだし、やはり使えないのだろうか?


「へえ、これが魔金貨なんだ。あんた結構お金もってたのね。」


「うん? これはこの都市内で普通に通貨として使えるのかい?」


「普通の店では無理ですね。魔金貨は大きな商取引等の金額が大きい取引の際に使用されています。」


「・・・・魔金貨ってどれくらいの価値があるんだろう。」


「1枚で金貨100枚ですね。」


 私はテーブルに激しく頭をぶつけてしまった。いやない、それはさすがにない。だってゲーム中では銅貨と同じ程度の価値しかなかったはずだ。千年も昔のこととはいえ、現在魔金貨が生産されていないとしても、相当な量残存しているはずである。


「魔金貨って、大昔の大戦前の銅貨並みの価値の通貨だって聞いてたんだが、なんでそんなに貨幣価値が高いんだろう?」


「所有しているのに価値知らなかったんですか!? 魔金貨は、その大昔の大戦の際に、その魔力で出来た金属という特性を利用して、大量の武器に作り替えられてしまったそうです。


 現在では魔金貨の生産の秘技も失われてはいますが、魔金貨から武器を作成する技術は残っているんです。その武器の価値から魔金貨はそのような高額レートになっています。」


 話によると、大戦で使用されたその武器はかなり強力だったそうだが、現在ではほとんど残っていないらしい。破損しにくく手入れもほぼ不必要だが、定期的に魔力を補充しないと消滅してしまうらしい。大戦の後で大きな魔力持ちはほぼ生き残っていなかったであろうことを考えると、武器が失われるのは仕方がないことではあるか。


 とりあえず、魔金貨を10枚持っていることにしてエリシアの実家の商会で今度換金してもらうことにしたが、内心冷や汗が止まらない。


 ユリアのおかげでゲーム中にこのアコライトが所持していた分の魔金貨を私は今持っている。109,146枚ほど。それでさえ個人で持つには危険な金額なのに、倉庫には、アカウント内のキャラクター受け渡し用にアイテム化した千両箱という、1つに魔金貨が100万枚入っている箱が4520個あるんだけど・・・


 とりあえず、倉庫に入っている千両箱は見なかったことにしよう。手持ちの魔金貨は、最悪自分で武器を作って使うという手があるか。


 見た目をごまかすために、武器の衣装化も考慮する余地がありそうだ。みんなで食事処に向かいながら悩ましげにため息をついた。




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