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第6話『序列12の選択圧』

朝の訓練場は、昨日までの空気と違っていた。静かではない。むしろ沈黙している。人がいるのに、誰も息を大きくしていない。(ここが……本当の領域)久瀬灯真はその中心に立っていた。そしてその先にいる男。御門皇牙。序列12。評価値では測定不能。


「来い」


それだけだった。だがその一言で、空気が変わる。次の瞬間、世界が遅れた。(違う)速いのではない。“認識の外から来ている”。灯真の身体が反応する前に衝撃。「ぐっ……!」地面が跳ねる。息が詰まる。


(見えなかった)ではない。“見える前に終わっていた”。


皇牙は淡々と言う。「お前は観測型だろ。なら理解できるはずだ。この学園は才能の選別装置じゃない。最適化装置だ」


(最適化……?)


皇牙は続ける。「才能は奪うためにあるんじゃない。壊して、再構築するための素材だ」その言葉で空気が変わる。(違う)今までの前提が崩れる。


視界に流れ。だが乱れている。【瞬発反応】→ノイズ【予測補正】→崩壊(使えない)初めての完全非対応領域。


「そこまでです」天道澪。評価値998。彼女は一歩前に出る。だが今回は止めるだけではない。皇牙を見ている。「彼はまだ調整対象です。破壊は許可されていません」


皇牙は軽く笑う。「調整か。随分と優しくなったな、管理側」


その瞬間だった。灯真の視界に一つだけ見える流れがあった。極めて小さい。だが確実に存在する。(これ……取れる)【筋反応補助(不安定)】だが同時に理解する。(取れば壊れる)


皇牙が踏み込む。今度こそ完全に終わる一撃。その瞬間、灯真は選ぶ。(それでも――)【筋反応補助:強制取得】身体が歪む。視界が割れる。だが一瞬だけ動きが遅くなる。


皇牙の一撃がかすれる。「……ほう」初めて皇牙の声が変わる。灯真は理解する。(届く)“少しだけ”。


だが次の瞬間、皇牙は止まらない。「いいな。だがまだ素材だ」一撃。完全に落ちる寸前。


澪が動く。今度は制止ではない。皇牙の動線に割り込む。「これ以上は上層判断になります」空気が変わる。皇牙は一瞬止まり、そして笑う。「やはりまだ実験段階か」


皇牙は背を向ける。「次の序列戦で会う。その時は選択できない」


静寂。灯真は地面に手をつく。呼吸が荒い。だが(見えた)確かに一瞬だけ届いた。


澪が言う。「今のは勝利ではありません。ですが失敗でもありません」


灯真は立ち上がる。(ならいい)


視界の奥で、また流れが揺れる。今度はさっきより深く、さっきより危険に。そして確実に言える。(ここからだ)


読んでいただきありがとうございます。

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