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【第一期完結/第二期開始!】『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
第二期【恋人編】第二章 「玄曜の隣に立つ覚悟と、龍雨祭の始まり」

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第五話 「女の子、怖い」

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

 その日、オレは後宮の支度部屋に招かれていた。


普段いる後宮とは違う、一段奥の区域。

身分の高い妃や宮女達が生活する、男子禁制の場所だ。


ここに保管されている儀式用の宝飾の龍霊雨器の調子が悪く、

宝玉がくすんでしまったらしい。


“最近本当に……気持ちが不安定でして”


ため息混じりに、金細工の腕輪の龍霊雨器りゅうれいうき

――煌玉天玲こうぎょくてんれいが言った。


“宝玉はくすむし……磨いてもらってもイマイチで。

とても外に出られなくて”


かなり落ち込んでいる……。


「龍霊雨器に発生するトラブルも色々なんだなぁ」


能力が増強するもの。

逆にまったく使えなくなるもの。

なんとなく不安定になるもの。


龍霊雨器ごとに症状も様々だ。


星鈴は煌玉天玲こうぎょくてんれいを膝へ乗せ、

よしよしと撫でた。


“ああ〜……懐かしい。父上の温もりです”


すると煌玉天玲こうぎょくてんれいは、みるみる輝きを取り戻していく。


どうやらオレの中に龍の神・天星様がいることは、

龍霊雨器達には分かるらしい。


龍霊雨器達は龍の魂で繋がっている。

触れれば分かる――そう天印と執命が言っていた。


阿燐ありんは力技で鎮める。

オレは触れることで鎮める。


触れると安心するらしい。

だから今やオレは、後宮中の龍霊雨器達にとって――


“ちょっとー! 次は私よ!”


“俺が先に並んでただろ!”


“早く撫でてほしい〜!”


ちょっとした癒しスポットになっていた。


トラブル対応に行く度、龍霊雨器達に囲まれ、膝に乗せたり

撫でたりと、なかなか忙しい。


“星鈴さんっ! また来てくださいね!”


「うん。またね」


龍霊雨器達に見送られ、支度部屋を後にする。


「はあ……」


星鈴は袖から虎のぬいぐるみの龍霊雨器

――虎福こふくちゃんを取り出した。


そして。


すううーっ!

思いっきり、虎福ちゃんを吸い込んだ。


“ご主人〜!?”

寝ていた虎福ちゃんが飛び起きる。


「あ。ごめん!」


「虎福ちゃんって、お日様に干した布団の匂いがするんだもん」


すうーっ!


“ひゃああ〜! くすぐったいです〜!”


「つい吸っちゃうんだよな〜」


きゃっきゃっと虎福ちゃんも嬉しそうに揺れた。


「そろそろ帰ろうか」


虎福ちゃんを袖へ戻し、長い廊下を歩く。

廊下には香が焚かれ、高貴な香りが漂っていた。


「正直……この香、苦手なんだよなぁ」


早く帰ろう。

今日の夜ご飯どうしようかな。

そんなことを考えながら歩いていると――


「あら? あなたって、もしかして星鈴サマ?」


角を曲がった瞬間、数人の女性達と鉢合わせた。


先頭の女性が星鈴を見るなり目つきを変える。


普段見かける下女達とは違う衣装。

こちら側専属の宮女だろう。

後ろには数人の下女まで従えている。

おそらく、それなりの立場の人間だ。


向けられる視線は露骨だった。

男達とは違う。敵意と悪意を隠そうともしない。


「そうですけど?」


「ようやくお会いできましたね」


宮女は口元に笑みを浮かべた。


「ご存知です? こちらでも星鈴サマの話で持ちきりですのよ」


「玄曜様に取り入る、身の程知らずがいるって」


隠そうともしない棘のある言葉。


「文官最高位である玄曜様ほどのお方が、なぜ貴女のような方を

側に置いているのか……皆、不思議に思っていますの」


――慎言さんが言っていた。

本当に相手にしなければならない敵。

後宮の奥にいる女性達。


星鈴は背筋を伸ばした。


ここはまだ本当の奥じゃない。

衣装や装飾を見る限り、立場もそこまで高くない。

下手に揉めない方がいい。ゆっくり深呼吸をする。


オレだって。

嫌味を言われたら何も返せないわけじゃない。


いざ――慎言さん直伝!


「まあ!」

星鈴は大袈裟に声を上げた。

袖で口元を隠しながら微笑む。


「後宮の皆様って、本当に人の話がお好きなのですね」

星鈴は、とっておきの挑発的な笑みを向ける。


「失礼な方って、身分の高さは関係ありませんのね……まるで町娘みたい」


「何ですって!?」

相手が怯む。


――今だ。


「それを聞いて、どうなさるのですか?

私が玄曜様と、どんな関係だろうと……

貴方に何の関係があります?」


堂々と見据える。


「あなたに、お答えする、必要が、あります?」

一語一語、区切るように言い切った。


宮女達は言葉を失う。


「私、忙しいので。では」


練習した流し目を一つ。

そのまま静かに立ち去る。


そして。

角を曲がった瞬間――

思わずオレは全力疾走をした。


さらに角を曲がり、人がいないことを確認して

その場へ座り込む。


そして。


すううううぅぅーーーーーーっっ!!!!

虎福ちゃんを全力で吸い込んだ。


“きゃああああー!? ご主人ー!?”


「こっ! こっ! 怖かったよおー!!」

オレは半泣きで虎福ちゃんへ顔を埋める。


「女の子怖いよぉー!!」


心臓がバクバクと暴れ回る。

落ち着こうとして何度も吸う。


すうーっ!


すうーっ!


“ふわわわわ〜!”


「はああああ……落ち着く……」


あんなので大丈夫だったのかなぁ。


頭の中で慎言さんが、『よくできましたよ〜』と

言ってくれている気がするけど。


でも。あんな人達とずっと戦うのか……。


「オレ……やっていけるかなぁ」


星鈴はもう一度、虎福ちゃんを思いっきり吸った。

※作者より


お読みいただき、ありがとうございました。

龍霊雨器と流星、そして玄曜の物語は、まだ続きます。


龍霊雨器は【火・木・土 20時半頃】更新です。

続きを読みたいと思っていただけましたら、ブックマークで追っていただけると嬉しいです。


もし物語を楽しんでいただけましたら、評価で応援いただけると励みになります。

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