第十二話 「この気持ちに名前をつけるなら」
ご覧いただきありがとうございます。
本作は
「中華風後宮ファンタジー」
「年上攻め×主人公受け」
を詰め込んだBL作品です。
シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。
どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。
夕方、離れの一階は静かだった。
日が傾き、窓越しの光がオレンジ色に伸びている。
「……遅いな」
玄曜はまだ戻らない。
仕事が長引いているだけ――
そう分かっているのに、胸の奥がそわそわする。
(早く帰ってこないかな)
「……はぁ」
自然と、ため息が出る。
気づけば何度も庭の方を見ていた。
その時、扉の向こうから足音がした。
玄曜だ。
無意識に、ぱっと顔を上げてしまう。
玄曜の顔を見て、胸が、ほっと緩む。
――あ。
その瞬間、すべてが繋がった。
帰ってきて安心したこと。
姿を探していたこと。
自分が、玄曜の隣で一緒に過ごして、感じてたこと。
一つ一つ、誤魔化せていたはずなのに。
今はもう――
逃げられなかった。
(……ああ)
(そうか)
流星は、ゆっくりと息を吸う。
(オレ)
(玄曜のこと)
胸の奥が、じんわりと熱を帯びる。
(好き、なんだ)
名前をつけた瞬間、
その感情は一気に輪郭を持ち、重く、
確かにそこに在った。
「……何ぼーっとしてるんだ?」
玄曜が怪訝そうに見る。
「……なんでもない」
そう答えながら、流星は視線を逸らした。
心臓の音が、うるさい。
逃げ道は、もうなかった。
恋だと知ってしまった。
知らなかった頃には、もう戻れない。
――それでも。
視界の端に映る玄曜の横顔を、
流星は、もう一度だけ、そっと見た。
(……どうしよう)
(玄曜のこと、好きになっちゃった)
※作者より
お読みいただき、ありがとうございました。
龍霊雨器と流星、そして玄曜の物語は、まだ続きます。
龍霊雨器は【火・木・土 19時頃】更新です。
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