↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/30

転校生

「今日はこのクラスに新たな生徒が来る」


 学園の襲撃から一週間が経ったこの日、朝のホームルームで香里奈はそう言い放つ。

 私──秋空雲雀──達は顔を見合わせる……隣に座る咲良と芽有だけは平然としているが。何しろ入学からまだ二週間しか経っていないのだ。そんな疑問に気付いているのであろう、彼女は直後に捕捉する。


「本来は編入ではなく通常の新入生として来る予定だったのだがな。《《先方》》の事情で時期がずれてしまったのだ」

「先方?」


 比奈が声を上げる。

 魔法師育成は国家プロジェクトであり、対象たる日本国民にとっては何よりも優先させるべき物だ。だからこそ、彼女のその言い方は奇妙だった。

 だが、そんな疑問は現れた編入生の姿を見てすぐに氷解する。



「Hey! Japanese students! My name is Refina Crosford!」



──勢いよく開かれた扉から入ってきたのは、金髪碧眼の快活少女。


「と、いう訳で編入生のレフィナ・クロスフォード、イギリスからの──」

「No! Call "United Kingdom"!」

「……ユナイテッドキングダムからの留学生だ。色々あると思うが皆仲良くしろよ」

「これからよろしくおねがいシマース!」


 日本語喋れるんかい。この場に居る皆の思考が一致した瞬間であった。

 香里奈ははあ、と小さくため息をついた後に快人の方を向く。彼の隣には不自然にも誰も座っていない席があった。前からあったのでクラス七不思議になっていたのだがこういう事だったらしい。


「お前の席は藤堂の隣だ」

「ハーイ! Mr.Todo! これからおねがいシマスね!」

「ああよろしくな、レフィナ」


 差し出された手を握り、ニコリと笑いながら答える快人、その前の席で機嫌悪そうに不貞腐れる比奈。その二人を見比べる様に視線を動かし、そして勝ち誇る様に鼻を鳴らすレフィナ、それで額に皺を寄せる比奈。うん、面倒臭そうなのであまり関わらない様にしよう。


 しかし、海外からの留学生とは珍しい。

 魔法は各国における門外不出の技術であり、基本的に他国に開示する事などない。魔法師育成の場である魔法学園に留学生を入れるなど本来は有り得ないのだ。

 イギリスは魔法大国、一人入れるだけでもどれだけ技術を吸収されるか分かったものではない。一応同盟国ではあるのだが……一体国の上層部の間で何があったのか、考えれば頭が痛くなってくる。


「仲良くしまショウね!」

「ああ」

「~っ!! 何よデレデレしちゃって、このスケベ!」

「は、はあ!? 何だよ比奈!」


……まあ、そういう事を私が考えてもしょうがないか。痴話喧嘩を始めた彼らを見てもうどうでもよくなってしまった。政治とかそういうのは大人に任せておけばいいのだ。

 そんな感じで頬杖をついていると、香里奈が再び話し始める。


「クロスフォードが来て早々だが、今日の講義は無しだ」


 そう言った瞬間クラスがざわめく。

 やはり皆も年頃の少女、つまらない講義よりも設備の充実した校内を自由に動き回れる方がいい──のだが、そんな希望は次の言葉で打ち砕かれる。


「期待している所悪いが、講義が無い代わりに特別演習があるぞ」


 クラスの雰囲気が露骨にガタ落ちする。彼女はそれに苦笑しながら演習の内容について説明する。


「演習の内容は──ダンジョン攻略だ」


 ダンジョン──それは世界各地に存在する、魔物が無限に湧いてくる特異空間の呼称。通常は『龍の籠』内部にしか存在しないそれが、この学園の地下には存在していた。というか、ダンジョンがあったからこそそれを抑える目的の建物が建てられ、後に学園として利用される様になったのだ。

 魔法黎明期に首都直下に出現したダンジョン。当時の政府は慌てに慌て、直上の住人を全て退去させた後に広大な軍事基地を建設した。だが解析が進むにつれて弱い魔物しか現れない事が分かり警戒の必要性が低下、そこに魔法師の育成の必要性が高まった事で基地を学園に転用した、という経緯である。だからこそ地価がアホ程高い首都ド真ん中にこんな広大な敷地を確保する事が出来ているのだ。

 さて、そんな弱い魔物しか出てこないダンジョンは今では学生の訓練目的に使われる様になっている。魔物の素材も獲得出来て一石二鳥、という訳だ。私達もいつか行く事になるのだろうとは思っていたが、まさかこんなに早く行う事になるとは思わなかった。だってまだ一ヶ月経ってないんだよ?


「攻略は四人一組のパーティーを組み行う。組み分けはこちらで決めてある、確認しろー」


 と、いう訳で組み分け表が前に張り出される。

 私は……


「……うげえ」


 パーティ九:藤堂快人 レフィナ・クロスフォード 若草比奈 朝露咲良 秋空雲雀


 このクラスはレフィナ含めて三十七人。当然どこかのパーティが五人になるのだが……まさか私のがそれで、しかもよりにもよって先程関わりたくないと思った三人組と同じパーティ。イジメか?


「雲雀……同じ、ですね」

「うう、咲良だけが救いっすよ~!」

「わ、私も嬉しい、です」


 パーティメンバーの面子が濃すぎるせいで逆に私の方が浮いてしまいそうだ。その濃い面子の中には咲良も入っている訳だが、とはいえ大した交流もない三人よりかはマシである。


「師匠、よろしくお願いします!」

「し、師匠!? いつの間に!?」

「あれ? 言ってなかったっけ。俺朝露さんに弟子入りしたんだ」

「聞いてないわよっ!」

「そういう関係なんデスね〜」


 友達の友達、三人──というか快人と私はそんな関係。

 彼の舎弟じみた挙動を見て、レフィナは品定めするような眼を咲良に送る。


「Youが噂のサクラなのデスね? 話は聞いてマスよ? 一撃で十数体のオークを倒したトカ」

「あ、はい……大した事じゃない、ですよ……」


 彼女の言葉にそう返し、すぐさま私達は反論した。


「いやそれは謙遜しすぎだと思うっすよ」と呆れた様に言う私。

「そうですよ、俺だって一体倒すので精一杯だったのに」と同じく呆れた様に言う快人。

「……私だって、いつか必ず……!」と悔しそうに言う比奈。


「マアマア、サクラの実力はこの後見せてもらうことにしまショウ!」

「きっと驚くと思うっすよ」

「そうだといいデスねー!」


 あ、これ信じてないな。私は彼女のどこか舐めた様な表情を見て直感的に察する。まあ実際に見れば理解するだろう。


「秋空さんも改めてよろしくな!」

「あ、よろしくっす」


 差し出された手を握る。そういえば同じクラスだけど、思えばこれが初めての直接の会話だった。


 その後比奈やレフィナとも軽く挨拶や自己紹介を交わし、私達は教室を出てダンジョンの入口に到着する。敷地内の地上にある巨大なゲート。かつて軍が部隊を送り込む為に作られた物がそのまま使われていた。

 その扉の前で香里奈が私達に何やらボタンが二つ付いた小さな機械を配る。


「全員、安全ブザーは行き渡ったな? 赤いボタンを押せば私に繋がり、そうでない方は他のパーティーメンバーに繋がる。はぐれたりどうしようもなくなった時はそれを押せ」


 どうやら赤でない方のボタンはパーティーごとに違っているらしく、私達は緑だった。また、比奈が言うにはダンジョンのあちらこちらに隠しカメラが設置してあるようだ。安全確保はバッチリらしい。

 今回の演習の達成条件はダンジョン最深部にのみ出現する魔物の魔石──魔物の体内に生成される魔力の結晶──を持ち帰る事。ダンジョンに入ってから持ち帰るまでの時間で成績が決まる。

 他のパーティーから貰う、または奪うなどの行為は"今回は"禁止らしい。含みのある表現が怖いが、まあ頑張ろう。

この小説の続きが見たいなと少しでも思った方は、三秒で終わるので下の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にしてください

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ラノベの転校生はヒロインだな!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。