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第一章6話  ボク2節 『負け゛られませんのでぇッ!』

一章6話予告編動画

https://youtu.be/LjP8pulanbY

 それは放課後の逢瀬。

 階段にある窓から、西日が二人を差している。

 今日も今日とて、あししげくハルキはフィルミと会っていた。


「はい、フィルミさん。今週のお金だよ」


「ありがとうハルキ君。あのね……」


 フィルミの相貌が悲しみに歪む。

 瞬時にハルキは察した。

 これは初めに約束をした時と同じ顔だぞ……。


「どうしたの!?」


 ハルキは驚きつつもフィルミの次の言葉に身構えた。


「……実は、実はね。アーティファクト買取がしぶられてるの。もう生徒会を通して契約書も書いてもらって、約束した後なのに……」


 彼女は指を組み、それを唇にあてながら視線落とした。

 新たな情報にハルキは混乱する。


「え、お金を貯めても、取引してもらえないってことなの?」


「うん……そうみたい……なのッ……」


 ついにフィルミの目からは涙が零れ、雫となったそれは地面にはじかれた。


「それはひどいや約束もしたのに!」


 ハルキはその姿を見ると、今や自分のことのように義憤に駆られていた。

 普段温厚なボクも、珍しく怒りという激しい感情を自身の中で持て余す。


「ねぇどうしようハルキ君。絶対に必要なのに……ぅぅ」


 フィルミは本格的に泣き崩れ、顔を両手で覆う。

 屈んだことによりフィルミの豊かな乳房がより強調される。

 ごめんフィルミさん、泣く姿もかわいいよ……。

 そんなエゴイスティックな感情に、自己嫌悪を覚えるボクだった。


「買取できなかったら、フィルミさん退学になっちゃうんだよね? わかったボク、考えてみるよ」


「え、ハルキ君なんとかしてくれるの?」


 顔を上げたフィルミの顔に希望の光が差す。


「うん!」


 ボクはその表情を見て、自分の感情を再確認する。

 それはからっぽな自分を、何もできない自分を奮い立たせるには十二分だった。

 絶対にフィルミさんを、ボクが救うんだ!






                ◇◆◇◆◇◆◇






 件の相手は、ガスパルという二年生だった。

 愚直にもボクはその身その足、空手にて面会を迫ったのだ。


「先輩。アーティファクトを何故売ってくれないんですか?」


 人気の少ない階段裏で二人が話をしている。

 ガスパルは機嫌が悪そうに腕を組み、人差し指をイラつくように動かしていた。

 今までのハルキであれば、知らないしかも上級生相手に話しかける事など考えることすらなかっただろう。

 しかしこれまでの経験、変わりたいという意思、そしておっぱい、いやフィルミを救いたいという純粋な願いにより行動に至ったのだ。


「っち、生徒会のイヌかよ」


「ボクは生徒会の人間ではないんです。ただフィルミさんを退学にしたくなくて……」


 ボクは覚悟してきたつもりだったけど、相手の強い言葉尻に少したじろいでしまう。


「俺にとっては同じだ。帰ってくれ」


 ガスパルはますます機嫌が悪そうに、ハルキと目すら合わせようとしない。

 しかし今日は、こんな門前払いで諦めるようなボクではなかった。


「でもほら、契約書も書いたって……」


「……それは半分脅されて書いたんだ、無効だ無効。わかったな!」


「そ、そうですかぁ……」


 相手が痛いところを付かれ、話を打ち切るように怒鳴り声を上げる。

 思わずボクは飲み込んでしまいそうになるが……


 『ああ、前のおどおどしているよりは全然いいぜ』


「(いやいや、今のボクは昔のボクではないんだ。フィルミさん力を貸してください!)」


 ボクは最大限の勇気を振り絞った。


「こ、こ、こっちも退学かかっているんです! 何がなんでも、か、買い取らせてもらいますから!」


「ッチ、こっちだって退学レベルなんだぞ……」


 ガスパルは思いの他食い下がるハルキに、困惑と怒りの視線を向ける。

 こいつは一年、しかも見た目ザコっぽいな……。そもそもアレがあれば、普通の奴には絶対に負けない自信がある。

 思案した男は急に声色を変え、自信ありげに発言をした。


「そうだな、そこまでいうならいいぜ」


「ぉあ、ほ、本当ですか?」


 意外な方向転換にボクはついていけない。

 このままじゃ、ペースを握られちゃう。


「この学園らしく決闘で決めようぜ?」


「え、ぇえぇ……!」


 この学園フロディス・ティーリオは魔法使い養成という名目上、魔法の実力というのは非常に重視されている。

 それを体現した古典的なルール、つまるところ決闘である。

 学生間で揉め事を起こした際、話し合いで収集が付かない、かつ両者の了承があれば公平なジャッチをつける事を条件に、学生間での戦闘が認められていた。

 陳腐化しつつある仕組みだが、いまだ年に数回レベルで行われていたのだ。

 大抵は見え張り用のルールだったが、それでも生徒間での戦いというのは、狭い学園生活の中では飛び切りのイベントとなる。


「なにがなんでも、なんだろ?」


 ガスパルがにやりと口をゆがめる。

 これで断ればよし、断らなくてもあのアーティファクトがあればまず一年には負けねぇ!


「え、ぁぅ、でもボク魔法が……」


 すっかりいつもの落ちこぼれモードになったボクだったが、ここで彼女の事を思い浮かべ心を奮い立たせる。

 想像するのはあのおっぱい、ではなく泣きじゃくるあの顔!

 ボクは本当の自分になるんだ! 俺になるんだ!

 くぁ! いいところ見せるんだろハルキ!


「い、いいですよ! その代わりボクが勝ったら必ず、う、売ってくださいね」


「ほぉ……わかったぜ。じゃあ明日、ジャッジ頼むからな」


 アホかそんなビビりながらイキっても全然怖くねーんだよ。

 内心ほくそ笑んだガスパルが、背中越しに手を振りつつ去ってゆく。


「(やばい、やばい。勢いで約束しちゃった。こんなことになるなんてどうしよう……ボクは何も効果のない魔法陣しかだせないんだぞ。……どうしよう)」


 若さと勢いで約束したハルキは、明日に迫った分不相応で抱えきれない現実に打ちひしがれていた。


「はぁ……」





                ◇◆◇◆◇◆◇






 ――次の日。

 校庭の一区画にはまばらに生徒が集まっていた。

 決闘は学生らにとって最高のエンタテイメントであるが、見栄っ張り同士の戦いになる場合が多い。

 周囲がもてはやして、賭けの対象になったり見世物としての性質が強くなりがちだが、今日の二人はどちらも学園内での評価はパっとしない。

 いわゆるなんでこの二人が? という状態だ。

 相対的に興味を持つ生徒も少なく、一部のバトルマニア、あるいは暇を持て余した学生がぽつりぽつり物見遊山に来ているという程度だった。


「逃げずにきたな一年坊」


「きょ、今日は絶対に負けません!」


 両者意気軒昂、絶好の状態で決闘に臨む。

 向き合う二人の間に一人の少女、ではなくこの学園の正式な先生であるベリルベッゾが立っている。

 彼女が今回のジャッジを担当するようだ。


「もーめんどくせーのだ。こんなつまんねーカード、さっさと終わらしてほしいのだあ……」


 やさぐれた目と、悪辣なコメントに二人のやる気は少し下がる。


「はいはい、さっさとはじめるのだ。殺しは無し、相手がギブしたら勝ち、やりすぎと思ったらこっちが止めるから、でハルキが勝ったらアーティファクトを買う。逆は逆なのだ」


「は、はい」


 よししやるぞ! やるぞ! ボクはこのために用意してきたんだ。大丈夫大丈夫。

 ボクは決闘という晴れ舞台に緊張した赴きで浮足立つも、しかしその意思はブレずにそこになんとか立っていた。


「こちらも問題ないぜ」


 ガスパルが揚々と掌を拳で叩く。

 片腕にはガントレット型――件のアーティファクト【エセンタル】が装着されている。

 白い金属製のそれは、魔法の伝導率と威力を上げるための素材で構成されておりシンプルながらも装飾が入っていた。

 武具としての価値はもちろん、美術的な価値も感じられるような美しい意匠である。


 対戦相手ハルキを観察するようにガスパルが見ている。

 調べてみた所このハルキって奴はやはり雑魚、しかもこいつはそもそも魔法が使えねーって話じゃねえか。

 流石に何も用意していないわけではないだろうが、何を企んできた?

 まぁなんにせよこのエセンタルがあれば、ワールド・アーティファクトとまではいかねえが楽勝だろ。


 魔法の出力は才能、努力、装備、体調の4要素で決まり、左にいくほどに重要度が増す。

 エセンタルはその人間のポテンシャル最高レベルにストッロルを合わせてくれる装備アーティファクトだ。

 学生の身には余るような正真正銘の高級品であった。


「あいー、じゃあ了承とれたんではじめるのだ。10、9、8……。カウントめんどいからもうヤリ初めていいのだ」


「ええ、ベリルベッゾ先生そんなっ! 心の準備が……」


 タイミングをはずされたボクはうろたえてしまう。

 その隙をガスパルが見逃すはずはなかった。

 素早くガントレットに片手を添え、詠唱を始める。


『その流砂は我が根源の脈動。』

『飲み込み下れ。』

『起これよ礫土。』


 まずガスパルが唱えたのは、土砂系の第三階位魔法。

 この学園の上級生生徒なら適性を含めても三人に一人は唱えられるような比較的スタンダードな魔法。

 今やそれは、補助に特化したエタンセルにより、第三階位内でも最大級の威力にあげられている。

 事実上学園でもトップレベルの威力であった。


 魔力により破壊力と指向性を持った土砂が地面から削り上げられる。

 数十トンになると思われるそれは質量と魔法的な威力をもってしてハルキの上に降り注いだ。


 一帯に激しい騒音と、砂埃が巻き上がる。

 本来この一撃でもってボクは負けていた、はずだった。


「何を……したッ!?」


 ガスパルが魔法射出体制のまま吠える。

 その土砂はハルキに当たらなかったのだ。

 ボクは魔法が使えない、できるのは効果の持たない魔法陣を展開させるだけ。

 詠唱の三小節目に、その無意味な魔法陣をガスパルの眼前に出現させたのである。

 ――それは最速の猫だまし(フェイント)だった。


「ぁぁああ!! 上手くいったああ、あぁぁあ!!」


 土砂の範囲にかろうじて巻き込まれなかったハルキが粉塵の中から転がり出てくる。

 詠唱魔法というのは、詠唱の関係上どうしても威力 = 時間がかかる。

 つまり魔法を詠唱しなければ、ハルキの魔法陣はそれだけだけならば、どんな魔法よりも早いのだ。


 その様子を冷静に学園の窓から見下ろしている人物が一人いた。

 彼女は片腕を組み、もう一方の手を唇に触れる。


 こうなるか……。

 まあ勝てないだろうけど、仮に負けても本人同士の約束という事でいかようにでもなる……かな。


 この決闘の理由――フィルミその人である。

 普段快活で柔和な彼女からは考えられないような、どこまでも冷たい目で二人を見下ろしていた。


 ガスパルは動揺しつつも自分を取り戻し、分析と判断を始める。

 ……舐めた真似をしてくれるじゃないか。

 奴ががやったのは、誰でもできるフェイントだ。

 やられたな、まずい。エタンセルにおぼれたか? 相手を舐めたか?

 ――ここは楽勝だが、負けられない。


『起これよ礫土。』


「がっ!」


『起これよ礫土。』


「ぐっ!」


『起これよ礫土。』


「ぎにぇ!」


 ガスパルは第一階位魔法シングルアクションの連打に切り替える。

 小さな土砂が殴りかかるように連続してハルキに襲い掛かっていく。

 それは、もっとも効果が薄いが、最も早い攻撃であった。

 ハルキも必死に避けようとはするが……


「げぐっぅ!」


 本人の運動能力も相まって避けることができない。

 本来であれば、いかにエセンタルの補正(最高潮)があったとしても、しょせんは第一階位魔法。

 障壁魔法を展開すれば楽に防げるのだが、ハルキは魔力を使えない。

 何も指向性のない、素の魔力でだけで受けている。


 このままなぶれば、いけるか?

 何もできないハルキを見据え、ガスパルは勝利の匂いを嗅ぎ取るがいまだ油断はしていない。

 連続攻撃が続き、さらに周囲に砂埃が立ち込める。


「ぇああぁぁぁっ!」


 ハルキも攻撃受けながら、何とか隙を見つけガスパルに殴りかかる。

 喧嘩はもちろん、人を殴るという経験をしたことのないハルキのパンチはあまりにも粗末なもので、その恰幅に踊らされるように盛大に外す。


「(おいおい、魔法が使えないって聞いてたけどまじかよこいつ)」


 周囲の生徒から嘲笑や落胆、あるいは叱咤の声が上がる。


「ぐ、ぐううぅうぅうう……」


 次第にハルキの動きは鈍っていき、今や顔を腕で覆い、なすがままにされていた。


「諦めないんだな? 可哀そうだがこのままKOさせてもらうぜ」


 その後は時間にして一分も経過していなかっただろう、しかしハルキを痛めつけるには十分な時間であった。

 何発も魔法によって殴られたハルキにはいくつもの擦過傷、打撲、軽度の骨折状態である。

 鼻血を流し足は今にも倒れそうなくらいふら付き、震えていた。

 見るからに意識は朦朧としている状態だ。


「おい、流石にギブアップしろよ」


 ガスパルが呆れたようにハルキを諭す。


「ボクは、まだ負けてない……! ボクはフィルミさんのために負けられないんだ……!」


「ッチ、ナイト気どりかよ。じゃあ終わりにするぞ」


 俺の最大詠唱で終わらせてやる。

 もうさっきのフェイントもネタが分かった、食らわんぞ。


『憎悪より来たれ土砂竜。』

『その流砂は我が根源の脈動。』

『飲み込み下れ。』

『起これよ。礫……ッ』


 ――爆発。

 その第四階位魔法は発動することはなく爆炎がガスパルを包む。攻撃を受けたのはハルキではなくガスパル自身だった。


「何故……どうやって……。何を……したん……だ」


 激しい痛みと、混濁とする意識の中ガスパルが思案する。

 どうやったのか魔法の詠唱を完了する直前に、ハルキによって爆発は起こされた。

 その一撃によりガスパルは深刻なダメージを受けたのだった。

 辛うじて防御したが、魔力は今の爆発を無理やり防御した事と大技を使ったことにより殆ど残されていない。

 ふらついている所に、ハルキが突進してくる。


「うごぉおぁああぉおおおおおおお!!」


 衝撃。

 そのまま物理法則に乗っ取り、二人はきりもみながら倒れ込んだ。


「はぁはぁ……」


「お前は……」


 結果、ハルキがマウントポジションにつけていた。


「づ、づかまえました…よ」


 ハルキの顔面は幾度の攻撃により膨れ上がり、片目は最早見えていないようだった。


「てめぇ……この距離なら魔法を使えないと思ったか? こっちだって負けられないんだよ!」


『エセンタル! 起これよォ! 礫土!』


 自身を巻き込むような魔法の発動。

 ハルキはもちろんの事、ガスパルも自身も魔法に打たれる。

 土砂流が二人を飲み込んだ。


「く、っはぁ……! いってぇな! 自分の魔法……」


 どうだやったか? 砂から這い出るようにガスパルが体を起こす。


「まだ……まだぁですよぉおォ!!」


 そこには、これでもないくらい満身創痍のハルキが立ってた。


「こいつもう根性だけで立ってるな……くそがよぉ!」


 ガスパルはガントレットを使い、物理的に右ストレートを放つ。

 グシャリと嫌な音が周囲に響き渡った。

 ハルキは、立っているのがやっとのはずの男はそれを顔面で受け止めていたのである。

 

「ゲギッヒ! も、もう゛魔力は切゛れましたか?」


 いまだ折れない意思が瞳が、信念を持ってしてそこにあった。


「ぐ……そ、こいつ倒れねぇ……!」


「じゃあ僕゛も、最後の手゛を、使い゛ます……」


 ハルキが取り出したのは拳銃の弾丸だった。


 瞬時にガスパルは理解した。

 そうか! これをさっきのへなちょこパンチの時に!

 大量の砂埃にまぎれて俺の足元にバラ撒いておいて、大技のタイミングのスキを見計らう……

 そして魔法陣のフェイントをいれつつ点火したものを投げ入れて、誘爆させたのか。


「うがぁぁうぁああぁぁッ!!」


 ハルキがどこに力を残していたのか、言葉にならない奇声を上げながら渾身の力をもってガスパルに組み付いてくる。


「そんでェ! 最後は俺の魔力が切れたタイミングで逃げられないように組み付いて自爆かよォ!」


 再び二人の体が密着し、フラフラとダンスを踊る。


「ふっざけんなッ! 俺は負けられないんだよ!」


「ボクも負け゛られませんのでぇッ!」


 ――爆発。

 ハルキの自爆により、再び砂埃が巻き起こった。

 周囲の生徒たちからどよめきが上がる。

 どっちだ!? 勝ったのはどっちなんだ!?


 砂塵が風によって徐々に薄れ行く……。

 そこには。

 勝利への意思を持って、信念を元に立っていたのはハルキだった。

 最早意識はなく、白目を向きながらもなんとか立っている。


「やっだ、かっだよ……フィルミ゛……さん……」


 その言葉を発した瞬間、口から吐しゃ物をまき散らすと、そのまま倒れるように気絶した。

 周囲の野次馬が、意外な好バトルに湧き上がる。

 おおぉ!? やるじゃないかあの一年!

 すげーぜ!


 倒れた二人の近くでベリルベッゾが目を細めている。

 あんれま、すげえひどい戦いだったのだ。

 結局ハルキが魔法が使えないなりに戦って、相手の魔力を使い切らせ、最後の爆発も根性比べというよりも、たまたま魔力が残ってたつーか使えなかったハルキが素受けの魔力で防御できてた差って感じなのだな。


 これは土砂魔法をを相手が使ってくると知った上で対策、戦略勝ちと言える……かは微妙な所なのだ。

 まあ、根性みせたのは認めるのだ。






                ◇◆◇◆◇◆◇







 ――時は昨晩のバイトの場面に戻る。

 いつもの鉄火場で、ハルキが銃弾に埋もれながらへばっていた。


「おいィ! 最近よくなってきたけどおまえ、今日はだめだめだぞ。こンな廃品作りやがってどうすんだ」


 いつもの悪魔じみた先輩が唾を飛ばしながら、ハルキを叱責している。


「ヒヘェすみませェん! 決闘しなきゃいけないんですよ明日。それで身が入らないっていうか……」


「んへぇー……おもしれーじゃねーの。誰にだよ?」


 一転興味の矛先を変え、口から煙を吐き出しながら悪魔先輩がニヤつく。


「ガスパルさんって二年生です……」


「あーはいはい、あいつは土砂系だなー範囲がうざい。以上」


「ボクには絶対に勝てないですよぉ……もう嫌だ……」


 その場のノリで決闘を受けたハルキは、時間が経つにつれ現実感というプレッシャーに打ちのめされていた。


「はぁ? なんで絶対勝てないんだ? ザコだから?」


 悪魔は呆れた様子で腕を組み、顔を傾けあからさまにハルキを侮蔑する。


「ボク魔法使えないですから……はぁ……」


「はぁ!? おまえクソだと思ってたけどそこまでなのかよ。驚きだぜ……」


 驚きのあまり咥えていたタバコを落とし、動揺する悪魔先輩だった。


「うっ……うう、そんな悲しいこと言わんでくださいよ、自分でも自覚してるんですから……」


「んぉ? そうだ、そうじゃん……!」


 手を叩く先輩は悪魔のような笑顔を浮かべた。

 これは、まずいぞ……。


「じゃあお前の力だけじゃ勝てねぇんだったらちょうどいい。今日のこの失敗作買い取れよ、お前が。なぁ?」


 新しい煙草を取り出し、火をつけながら悪魔は満面の笑みを浮かべる。


「ええ!? なんでそうなるんですかぁ!?」


「こんなんでも魔力を込めて投げれば爆発するだろ。知らんけど」



………

……



 ――後日。


「おいハルキィ! お前のせいで、めっちゃ怒られたじゃねーか! どうしてくれんだバカ野郎ォ!」


「ひぇ……そんな理不尽な……!」


 いまだ生々しいケガが残り、包帯が取れないハルキに、カンカンになった悪魔先輩が怒鳴りつけていた。


「チクッショ! チクッショ! 今日の増やされた俺のノルマ、お前も手伝えやァ!」


 地団駄を踏みながら声を荒げ悪魔だった。

 普段から暴力的な先輩はその日、よりハッスルし自身を含む負傷者を多数出したという話である。


「そんな横暴な! 誰か助けてぇ……!」


 今日も戦場では元気に学生たちが命を散らしていくのでした。

読んでくれてありがとうゴブ!

ゴブリンのやる気を上げるために、よければ

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反応があると、とってもうれしーゴブ!


余談ゴブけど

ハルキは通常魔法の対策として、フェイントの他に銃弾を暴発させて相殺しようとしていたゴブ。

だけど実際はハルキの身体能力では相手の魔法にそもそもタイミングを合わせられず、

また合わせた所で威力の関係上防げなったゴブ。

なので普通にガスパルが第三階位魔法メインで戦っていたら速攻で負けていたゴブ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ハルキ君の頑張りが素敵でした。フィルミは案の定、腹に一物ある人物ですね。一体何が隠されているのか。とても気になる流れで良いと思います。 [一言] ハルキを中心に陰謀の香りがして面白かったで…
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