第一章35話 ボク7節 『ファンタジーの世界へようこそ』
一章35話予告編動画
https://youtu.be/dd1aSlm9DGM
「……どこなの、ここ……」
あれからどれくらいの時間がったのだろう。
ボクは気が付くと知らない森の中にいた。
頭上を見上げると太陽の光が降り注ぐ――ああ、太陽ってこんな感じなんだ……。
ボクは創作でしかしらなかったその概念を理解する。
暖かくて気持ちがいい……。お母さんってこんな感じなのかな。
しかし歩けども歩けども、周囲には何もない。
鬱蒼とした森の中でツタ、木の根、草がボクを邪魔してちゃんと真っすぐ進むこともできないよ……。
しかも体中が痛くて痛くて、ボクは小一時間ほどしか歩けずその場に座り込んだ。
ズキリズキリと滲むように傷が痛い……。
「お腹も空いて来たな……」
木によりかかり休憩していると、なんだか陽気に当てられ、気分よく……眠く……。眠く……。
ガサガサ。
葉の揺れる音で目が覚める。
リリリという虫の声が周囲に響き渡り、目が覚めたボクは夜の訪れを理解した。
あれ……外……?
夜……!?
痛む体を起こし、周囲を警戒する。
夜だよ!? あの機械は!?
襲って……。
数分構えていたボクは状況を理解した。
「(はぁ……そうだよね……。外だらかといって機械がどこにでもいるわけじゃないんだ……)」
しかしボクは警戒を忘れず、その夜は木と木が重なり壁状になっている場所で過ごした。
………
……
…
朝露が一帯の木々を濡らし、光が木漏れ日となって差し込んでいる。
「お腹が……お腹が空いたよ……」
朝を迎えたボクはげっそりしていた。
考えるとあの試験からおそらく2~3日はボクは何も食べていない。
ごはんが……なんでもいい……あの固形食でもいい……。
喉も乾いた……。
ボクは意識が朦朧として、目の前にあった露が付いた葉を舐めた。
しっとりと水分が乾いた舌の上に広がる。
ボクは試しにその葉をかじってみたけど……。
「うげ……苦い……」
渋みが強くとても食べられそうにはなかった。
はぁ……なんてことなんだこれは遭難ってやつじゃないか……。
学園は……皆はどうなったんだろう……?
ボクは事実に愕然とし、力なくうつぶせに倒れ込む。
もう……どうでもよくなってきた……。
目の前にある草をそのまま口に入れ咀嚼する。
まぁ……さっきのよりは……。
それからボクは手あたり次第食べれそうなものを口に入れながら、森をさまよった。
――1日目。
「うわーんお腹減ったよぉ……足ももう痛いし……嫌だ! 嫌だ!」
叫びが森の中に反響する。
虫と植物とキノコ以外ボクはこの森で見かけたことはなかった……。
何もない状況と、孤独にボクは押しつぶされている。
――2日目。
「み、水……飲みたい……」
ボクは当然お腹を下し。
15分ごとに下痢便を排出していた。
しかしいよいよ排出する物ももうなくなり、今やただ尻の穴がひくひくと痛みに蠢くだけである。
そのままふらふらと森をさまよった。
――3日目。
やった! 小川だ!
ボクはちょろちょろと流れる川を見つけ、自分でもわからないどこにそんな力を残していたのか――走りよるとそのまま顔を突っ込んで水を飲み干した。
美味しい! 五臓六腑に水が染みわたっていく!
水ってこんなに美味しかったんだ……!
ボクは感動に泣きながらも、痛いくらいに水を飲み干すとそのまま倒れるように気を失った。
――4日目。
「助けて……から揚げ食べたいよぉ……」
――5日目。
「……げ……から……揚げ……から……げ……」
――6日目。
「……」
――7日目。
「……」
――8日目。――9日目。――10日目。
ボクはもう限界を何度も越えていた。
四肢はやせ細り、自分でも生きているのが不思議なくらいだ。
おかしいよね……こんなに痩せちゃったらすごく軽いはずなのに、めちゃめちゃ体が……重いぞ……。
鉛のような体を蠢かし、ボクはまるでゾンビのようにただ前へ前へ。
唯一手の中に残った、生への執着にしがみついてそれだけは手放なさないように……なんとか生きていた。
近くでガサガサという草木が揺れる音がする。
ぁあ、どうせまた小さい動物が出たんだろう……。
ボクはどうせ捕まえる事もできないようなそれを何度も何度も何度も何度も、文字どうり死に物狂いで追いかけたが一度も捕まえることはできなかった。
とっくに捨てた甘えを無視し、ボクは前へと進んだ。
「臭ッ!? なんだこいつ死にかけのオーク族デスか?」
幻聴だろうか……ボクの背後から確かに人の声が聞こえたような気がする……。
その事実にボクは涙したかったが、目の奥がじんわり痛いだけで何も出てこない。
からからの喉からひゅーひゅーと音を出しながらボクは振り返った。
衝撃。
理解できない。
口の中に土と血の味が広がる……。ちょっと美味しいかも……。
ボクはまたいつものように吹き飛び地面に横たわっている。
この娘にボクは顔面を回し蹴されたんだ……。
ボクは意識を薄れさせながらも彼女を見上げた。
……メイドさん……。
ボクは記憶の中にある知識から、その姿を理解する。
オレンジがかった刈り上げショートにヘッドドレス、大きく目つきの悪い目を隠すように前髪で隠し、髪の半分は耳にかけている。
そしてなんといっても、胸が、おっぱいが大きい――。
突如現れた破壊の天使の前に、ボクは何度目だろうか気を失った。
………
……
…
ガタゴトガタゴト。
ボクは居心地の悪い揺れを感じてゆっくり目を覚ます。
どこだここ……体は縛られ、口も塞がれ身動きが取れない……。
なにか馬車のような荷台に乗せられているようだ。
これは動物……? イノシシのような動物と一緒に寝かされている……。
馬車の周囲を見渡すと……えっ……これは……人間だよね……?
ボクは地下で出会ったネズミ博士を思い出す。
いわゆるファンタジーの中にでてくるようなネズミ族、オオカミのような亜人、鱗だらけのリザードマン……?
体の小さいひげを蓄えたあれはうん、ドワーフってやつだよね。
あっちは……ゴブリン?
「(えっ? えっ? えっ?)」
ボクは理解できず混乱する。
ここは街だ、いわゆる中世ヨーロッパ風の街並みというやつだ。
商い、通行、会話、荷運び。
ざまざまな行動、それらは生活そのものだ。
ここに、今目の前に――亜人の住人たちが根付き暮らしている。
ボクは周りをきょろきょろと見渡していると遠くに巨大な……
「(え……? ぇ……? あれって大きすぎるんじゃないの?)」
一言でいえば影である、あまりにも巨大な規格外の建造物。
推定どのくらいになるんだろう……遠近感が完全に壊れるくらいのスケール、それはおそらく何千キロという大きさで背景の一面を支配していた。
未知の形をしたその建物は、うねりつつ螺旋状に絡み合い天を突いている。
「……でっかい塔だ……」
ボクは心そのままに呟いた。
その声に反応したのか、先ほどのメイドさんがボクに近づいて来た。
あ、これはまずいかも……。
「ぁ? てめぇ起きたのデスか? もう少し寝てろやデス」
有無を言わさずボクの顔面を、鼻先を殴りつけ、一撃をもってしてボクは打倒される。
鼻から血を流し薄れゆく意識の中、ボクはその状況とは裏腹に確かに歓喜していた。
学園の外の世界ってこうなってたんだ……!
世界の秘密って、つまり……
その世界観は僕達を熱く、熱く狂わせる。
剣と魔法の世界へようこそ。
――ファンタジーの世界へようこそ。
読んでくれてありがとうゴブ!
ゴブリンのやる気を上げるために、よければ
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反応があると、とってもうれしーゴブ!
今日はロールキャベツを食べたゴブ。




