第2-42節 おれたちの未来はおれたちでつくる
チャパリトに見つめられたまま、栄衛が続けた。
「おれは、きみの競争相手に立候補する。
きみたちが、きみたちの幸せを求め続けるように、おれも、おれの幸せを求め続ける。
だから、おれたちは、今日から、競争相手だ。
どちらがどれだれ幸せになれるか、競争しよう!」
「イザベラさんですね?」
背中から万汰が突っ込むと、振り返って苦笑いする。
「おれにも意中の人が現れた。
今まで待ってた甲斐があった。
先は長いと思うけど、その人の心の支えに、おれはなりたいと思っている」
チャパリトが半歩前に出た。
「栄衛さん、受けて立ちます!」
右手で栄衛の右手をがっちり握る。
「今のぼくには、何もありません。
栄衛さんのような、社会的な地位も財産も、名誉もありません。
でも、これからも毎晩大学に通って、働きながら勉強するつもりです。
ぼくの競争相手は、ぼく自身です。
ぼくのゴールは、自分の気持ちに正直に生き、虹を越えることです。
その先のことは、まだ考えられません。
だから、これからも、ぼくたちは、仲間でいませんか?」
栄衛の笑顔に、うなずく貴子ちゃん。
「やったー。
これで、みんなハッピーね!」
笑い出すイブ。
「本当に、あなたって人は、幸せな人ねぇ!」
口を尖らせる貴子ちゃん。
「いいじゃありませんか、これまで幸せが足りなかったんだからぁ。
これから、たくさん元をとって稼ぐんですぅ!」
栄衛が笑いをこらえながら言った。
「そうか、貴子さんは、たくさん稼ぎたいんだね?」
頬を膨らませて応える。
「そうよ、稼ぐのよ。
あたしは、誰かの扶養家族でいたくなんかないんです。
たくさん稼いで、たくさん税金払ってやるんだから!」
両手を叩くイブ。
「あざーす!」
貴子ちゃんに向いて、真顔の栄衛。
「きみは、本当に不思議な人だ。
きみと一緒にいると、自分が本当の自分でいられる気がする。
何て言うのか、森の中にいると原始的な自分に戻れるように、貴子さんのフィトンチッドには、人を本来のその人に戻す力がある」
栄衛を見上げる貴子ちゃん。
「結局、あなたはいつも自己チューなのね?」
隣りで、自分の鼻を指さしてイブがつぶやく。
「わたし、ネズミ年だから自己チュー?」
笑う栄衛。
「この町の住民は、みんな、結局自分ファーストなんだ。好きに生きてる。
Going My Way、なんだよ。
でも、ひとりひとりが自分の思う道を進む。
そして、それが町の豊かさと発展に結びつく。
素晴らしいことじゃないか!」
うなずく貴子ちゃんとチャパリト。
慎司さんが、群衆の後ろで静かに「My Way」を吹いている。
「おれは自分勝手に生きたいんだ。
『自分たちの未来は自分たちでつくる』、それが未来塾のモットーなんだから」
貴子ちゃんが飛び上がった。
「それなら、あたしも未来塾に入る!」
牛目さんが脇からそっと聞いた。
「未来塾に年齢制限はあるのかい?」
首を振る栄衛。
「そんなもの、ありません!」
「じゃあ、ぼくと愛子さんも入れてもらおうかな?」
「大歓迎ですよ!」
その場にいる全員が叫んだ。
チャパリトが小さな声で質問。
「入会資格に、国籍条項はありますか?」
栄衛の後ろから万汰が叫ぶ。
「そんなもん、最初っからないよー!」
「じゃあ、ぼくも入れてください。
栄衛さんに負けない経済人になります」
栄衛が胸を張った。
「よし。おれもチャパリトくんに負けない国際人になる。
英語を中学校からやり直しだ」
万汰が後ろから栄衛の左肩を叩いた。
栄衛とチャパリトの間に割り込む貴子ちゃん。
「2人とも頑張ってね。
喧嘩はダメよ!」
栄衛が、みんなを前にして提案。
「よし。
じゃあ、改めて、貴子さんとチャパリトくん、牛目ご夫妻の、未来塾入会記念パーティをやろう!」
イブが右目で牛目誠にウィンク。
「秋谷のお家でね?」
「いいとも!
みんなで浜で遊んで、バーベキューしよう!」
「思い出の貝殻も、拾えますね?」
「もちろん!」
笑い出す牛目夫妻と一同。(了)




