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「ただいま」


玄関のドアが開く音。


その一言に、なぜか一瞬だけ心臓が跳ねる。


「……お、おかえり」


ちょっとだけ、変な声になった。

自分でも分かるくらい、挙動が怪しい。


(なにこれ、緊張してる…?)


廊下に出ると、ちょうど湊が靴を脱ぎ終わったところで。


ふと、目が合う。


「……」


一瞬、間。


そのあと、湊が少しだけ首を傾ける。


「……どうしたんですか」


「いや、別に」


即答。


早すぎて逆に怪しい。


「……怪しいですね」


ちょっとだけ笑われる。


「怪しくないし」


言い返した瞬間、


「遥花さん」


名前を呼ばれる。


その声が、少しだけ落ちてて。


反射で顔を上げる。


次の瞬間、


「これ」


差し出される。


視界に入ったのは、小さめの花束。


「……え」


一瞬、思考が止まる。


「……」


ゆっくり、視線を湊に戻す。


少しだけ、照れた顔。


でも、逸らさない。


「去年、言ったじゃないですか」


静かに続く声。


「来年は、もうちょっと大きいのって」


「あ……」


思い出す。


「……覚えてたの?」


「そりゃ覚えてますよ」


少しだけ呆れたみたいに言って、


でもそのあと、ほんの少しだけ視線を逸らす。


受け取る。


思ったより重くて、

ちゃんと、選ばれてる感じがして。


「……」


じわっとくる。


「……ありがとう」


ぽつり。


「どういたしまして」


すぐ返ってくる、いつもの温度。


でも。


そのあと、少しだけ間。


視線が合う。


さっきより、近い。


「……」


なんか、空気が変わる。


「……ねえ」


自分から、少しだけ距離を詰める。


「今日さ」


見上げると、


湊の呼吸が、ほんの少しだけ変わる。


「ちゃんとする日、でしょ?」


わざと、ゆっくり言う。


一瞬、止まる。


「……」


それから、


「……煽ってます?」


低い声。


さっきまでと違う。


「別に?」


軽く返す。


その瞬間、


一歩、距離を詰められる。


「……言いましたよね」


声が落ちる。


「今の俺、余裕ないって」


「うん」


「……それでいいんですか」


「いいよ」


即答。


一瞬、空気が揺れる。


「……後悔しても知りませんよ」


「しない」


小さく笑って言うと、


「……そういうとこです」


小さく息を吐いて、


次の瞬間、


ぐっと引き寄せられる。


さっきより、強い。


でも、雑じゃない。


「……っ」


触れた瞬間、分かる。


ちゃんと、向き合ってる。


ちゃんと、欲しがってる。


「……ちゃんと、しますから」


低く、落ちる声。


そのまま、


今度は、止まらない。




記念すべき100話。

記念日いちゃいちゃです。

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