表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ローカル線再建記 ~異世界転生した俺、現代の鉄道知識で異世界の鉄道運営~  作者: 涼木 武尊
第一章:鉄路なき世界の混沌と、ある少年の誓い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/4

1. 司令所の長い夜

初めまして、作者の涼木 武尊です!

本日から、元鉄道員が異世界で本気の内政・文明改革に挑むお話を投稿していきます。

不定期更新なのでよろしくお願いします!一週間ごとには投稿したいです!

まずは主人公の前世の、ちょっと切ない死に際から始まります。どうぞよろしくお願いします!

 その夜、東京の夜空は重い雨雲に覆われていた。

 大手私鉄『帝都電鉄(ていとでんてつ)』の運行管理司令所。壁一面に広がる巨大な液晶ディスプレイには、網の目のように張り巡らされた路線網と、その上を這う無数の光の点が映し出されている。赤、黄、緑の光は、現在運行中の各駅停車、急行、特急の「列車位置」を示していた。

 ピピピピピピピピピピピッ!

 司令室に、鼓膜を突き刺すようなアラート音が鳴り響いた。

「司令! 柿の木坂本線、下り1024列車、つつじヶ丘駅手前の踏切で人身事故発生です! 車両は急ブレーキをかけましたが、接触した模様!」

「各局、こちら本線担当! つつじヶ丘の事故、直ちに全線に抑止をかけろ! 後続の特急は手前の調布駅で止めろ!」

 ヘッドセットに怒号を響かせながら、一ノ瀬統(いちのせ すばる・29歳)は神速のブラインドタッチで運行管理システムを叩いていた。

 彼の前世――いや、今となってはこれが「前世」になるのだが、この時の彼は、200万人以上の命を毎日運ぶ巨大インフラの「心臓」を守る運行管理司令員だった。

「統! 状況はどうだ!?」

 班長が統の背後に駆け寄る。

「最悪です、班長。夕方に発生した車両の架線トラブルで、ただでさえダイヤが30分乱れていました。そこにこの人身事故です。折り返しの車両が詰まって、上り線も身動きが取れなくなります」

「チッ……! 運転整理(ダイヤの再構築)を急げ。このままだと終電間際の主要駅が乗客でパンクするぞ!」

 統の脳細胞が、限界を超えて加速を始める。

 人身事故の現場検証には最低でも45分から1時間。その間、手前の主要駅で列車をどう折り返させるか。どの列車を運休にし、どの列車を「各駅停車」に変更して旅客を救済するか。

 頭の中に、何百本もの列車の運行グラフ(ダイヤグラム)が立体的に浮かび上がる。まるで複雑なパズルを、秒刻みの制限時間内で解いていくような感覚だ。

「……よし、調布で折り返し運転を実施。下りの特急は各駅停車に変えて、詰まっている乗客を全回収。上りは相模原線からの直通をすべて新宿行きに変更して――」

 ブツン。

「え……?」

 思考の海に沈んでいた統の視界が、唐突に真暗になった。

 キーボードを叩いていた指先から感覚が消える。ヘッドセットから聞こえていたはずの同僚たちの怒号が、まるで水中にもぐったかのように遠ざかっていく。

 激痛、ではなかった。ただ、圧倒的な疲労感と、心臓が奇妙に跳ね上がる感覚。

(だめだ、まだ……ダイヤが、繋がってない。まだ乗客が駅で待ってるんだ……!)

 職務への執念だけが、薄れゆく意識の中で空回りしていた。

「おい、一ノ瀬!? どうした、一ノ瀬ッ!!」

 班長の声が遠くで響いたのを最後に、一ノ瀬統の29年間の人生は、過密ダイヤの混沌の中で幕を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ