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測定不能  作者: Wataru
4/10

男は守られる生き物

街には、美しい男が溢れていた。


ショーウィンドウの広告。

整えられた髪、細い顎、柔らかな笑顔。


「守られる男性は、社会の宝」


通りを歩く男たちは、よく手入れされた服を着ている。

高価な美容品の袋を持ち、鏡を見ながら髪を整える。


「今日の美容指数どうだった?」


「81。ちょっと下がった」


「肌管理ちゃんとしろよ。結婚評価落ちるぞ」


笑い声。


それが普通の会話だった。



カフェの隣の席で、若い男たちが恋愛の話をしている。


「昨日さ、壁ドンされた」


「え、マジ?」


「うん。“あなた、私のものよ”って」


「いいなあ……」


一人が羨ましそうに言う。


「俺も壁ドンされてみたい」


周りが笑う。



テレビのニュースが流れている。


「男性安心恋愛条例が改正されました」


女性アナウンサーが説明する。


「男性は守られる存在であるため、恋愛関係において女性が主導することが推奨されています」


「愛情表現としての“壁ドン”は、男性の精神安定にも効果があるとされています」


画面には、幸せそうなカップルの映像。


女性が男を壁に押しつける。


男は顔を赤くして笑っている。



続けてニュース。


「来月から男性専用車両が導入されます」


アナウンサーは穏やかな声で言う。


「混雑や事件から男性を守るための取り組みです」


「安心して移動できる社会を目指します」


画面には、淡い色の車両。


「男性専用」


という文字。



危険な仕事は女性がする。


工事現場。

運搬。

軍。

政治。


女性が社会を動かす。


男は守られる。


それが優しい社会だと、誰もが信じていた。



その日、工場の門をくぐる男がいた。


背が高く、肩幅が広い。

整った服ではなく、作業着。


珍しい光景だった。


女性の警備員が声をかける。


「危ない仕事よ」


男は止まる。


「分かってる」


「男なんだから、無理しなくていいのに」


困ったように笑う。


悪意はない。


ただ理解できないだけだ。



男は働く。


重い部品を運び、

油で汚れた機械を直す。


女性たちは時々、彼を見て言う。


「変わった人ね」


怒るわけでもない。


ただ少し、不思議そうに。



昼休み。


休憩室のテレビが流れている。


ニュース。


「男性保護社会10周年」


女性大臣が笑顔で話す。


「男性は長い間、危険な労働に従事させられてきました」


「私たちは彼らを守る社会を作ったのです」


拍手。


画面には昔の写真が映る。


会議室。

政策チーム。


その端に、若い男が座っている。


真面目な目をした男。



工場の男は、画面を見る。


ほんの一瞬だけ。



工場の帰り道。


駅のホーム。


新しい車両が滑り込む。


淡い色。


扉の横に書かれている。


「男性専用車両」


中には、綺麗な服を着た男たち。


楽しそうに話している。


「安心だよな」


「守られてる感じする」



男はホームに立ったまま、その車両を見る。


乗らない。


ただ、少しだけ考える。



巨大広告が光る。


「守られる男は幸せ」


男は広告を見上げる。


街はいつも通り動いている。


きっかけを作ったのは、

俺かもしれない。

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