表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
測定不能  作者: Wataru
13/25

削除申請

新しい制度が始まった。


存在削除申請制度。


ニュースでは、穏やかな声で説明されていた。


「この制度は、生きづらさを抱える方のための支援です」

「本人の意思を尊重し、苦しみからの解放を提供します」


申請は自由。


審査はAIが行う。



アプリを開くと、項目が並んでいた。


孤独指数。

社会貢献度。

幸福予測値。


すべて、自動で計算されている。



街では、思ったより普通に受け入れられていた。


「自殺するよりいいよね」


「制度があるなら安心」


「無理して生きなくてもいいし」


誰も怒らない。


誰も反対しない。



ある日、通知が来た。


画面に表示される。


【削除制度対象者】


少しだけ驚いた。


けれど、理由はすぐに分かった。


収入は低い。

一人暮らし。

家族なし。


数字で見れば、そうなる。



画面には続きがあった。


【削除申請を推奨します】


その下に、小さく書かれている。


【この制度はあなたの自由意志を尊重します】



翌日。


職場で同僚が言った。


「削除制度って知ってる?」


「知ってる」


「いい制度だよな」


彼はコーヒーを飲みながら続ける。


「無理して生きなくていいんだから」



主人公は頷いた。


否定する理由は見つからない。



帰り道。


小さな公園の前を通る。


子どもが転んだ。


少し迷ってから、手を差し出す。


「大丈夫?」


子どもは立ち上がり、笑った。


「ありがとう」


それだけだった。



その夜。


スマホに通知が来る。


【社会貢献指数 更新】


数値は、ほんの少しだけ上がっていた。



しかし、削除判定は変わらない。


画面には表示されている。


【削除申請 推奨】



主人公は画面を見つめる。


ボタンは一つ。


【申請】


押せば終わる。


誰も責めない。


制度は優しい。



しばらくして、画面を閉じた。


理由は分からない。


ただ、まだ押さなかった。



翌朝。


通知が届く。


【削除申請 未実行】


その下に、小さく表示されていた。


【再評価予定:30日後】



主人公はスマホをポケットにしまう。


街はいつも通りだった。


誰も制度を疑わない。


誰も強制していない。


ただ、


優しく言っているだけだ。



「消えてもいいよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ