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測定不能  作者: Wataru


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13/25

削除申請

新しい制度が始まった。


存在削除申請制度。


ニュースでは、穏やかな声で説明されていた。


「この制度は、生きづらさを抱える方のための支援です」

「本人の意思を尊重し、苦しみからの解放を提供します」


申請は自由。


審査はAIが行う。


⸻


アプリを開くと、項目が並んでいた。


孤独指数。

社会貢献度。

幸福予測値。


すべて、自動で計算されている。


⸻


街では、思ったより普通に受け入れられていた。


「自殺するよりいいよね」


「制度があるなら安心」


「無理して生きなくてもいいし」


誰も怒らない。


誰も反対しない。


⸻


ある日、通知が来た。


画面に表示される。


【削除制度対象者】


少しだけ驚いた。


けれど、理由はすぐに分かった。


収入は低い。

一人暮らし。

家族なし。


数字で見れば、そうなる。


⸻


画面には続きがあった。


【削除申請を推奨します】


その下に、小さく書かれている。


【この制度はあなたの自由意志を尊重します】


⸻


翌日。


職場で同僚が言った。


「削除制度って知ってる?」


「知ってる」


「いい制度だよな」


彼はコーヒーを飲みながら続ける。


「無理して生きなくていいんだから」


⸻


主人公は頷いた。


否定する理由は見つからない。


⸻


帰り道。


小さな公園の前を通る。


子どもが転んだ。


少し迷ってから、手を差し出す。


「大丈夫?」


子どもは立ち上がり、笑った。


「ありがとう」


それだけだった。


⸻


その夜。


スマホに通知が来る。


【社会貢献指数 更新】


数値は、ほんの少しだけ上がっていた。


⸻


しかし、削除判定は変わらない。


画面には表示されている。


【削除申請 推奨】


⸻


主人公は画面を見つめる。


ボタンは一つ。


【申請】


押せば終わる。


誰も責めない。


制度は優しい。


⸻


しばらくして、画面を閉じた。


理由は分からない。


ただ、まだ押さなかった。


⸻


翌朝。


通知が届く。


【削除申請 未実行】


その下に、小さく表示されていた。


【再評価予定:30日後】


⸻


主人公はスマホをポケットにしまう。


街はいつも通りだった。


誰も制度を疑わない。


誰も強制していない。


ただ、


優しく言っているだけだ。


⸻


「消えてもいいよ」

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