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LIFE MODEL  作者: のとてね
2/2

01 機械になるには

 体を離れた意識が新たな身体を得、その目を開けた時、周りに何も無いただ白い床のみが広がる空間がその視界に映った。


 そんな白一色の視界の前に、突然操作画面が浮かぶ。

 そこには、単色の黒い四角の背景と白いLIFE MODELのタイトル。そして斜め上に踊る赤いNEW!の文字。


 迷いなくそれをタップし、始めますか の問いに はい と答える。


 途端体が宙に浮き、エレベーターで下に降りていく時のような浮遊感が身体を包み込み、そして落ちていった。エレベーターが落ちる時みたいな。


 足先が地面についた時、エレベーターが墜落する時の感触は無く、代わりに周りを壁に囲まれた息苦しい感覚がした。


 キャラクタークリエイト無しにいきなり始まるタイプか、プレイヤーはアンドロイドって話だから、今は出荷中かな?

 こう言うゲームは世界観に合わせてキャラクリさせてくれるから、楽しみだ。個人的にはこう言うタイプの方が好みだから、これだけでこのゲームに対する評価は上がる。


 そんなことを考えていると、ガスが吹き出す如何にも金属製の箱が開きそうなプシューという音が聞こえて、私の前面の壁が上へと開いた。クローゼットじゃ無くてガルウィングか、良いね!


(お前こういうの好きだもんな)


煩い、頭の中に声が響く。あんま喋んないでくれ。


(非道いな)


無視だ、無視。


 入っていた箱から出て、細長い部屋の中央にコンソールが一つだけ置かれた、私の家の玄関よりも飾りっ気の無い白い空間を見渡す。

 現実と変わりの無い身体で、地面を足で蹴り付ける。カーンと金属を蹴った時の感触と音が体に響く。

 さあ、触れ! とばかりに自己主張してくるコンソールを無視して、真っ白過ぎて目が痛い壁に触れる。


 壁はヒンヤリと冷たく、繋ぎ目が何処にも見当たら無い。爪を立ててみても引っかかる感覚はなく、壁と床が繋がっている場所にも紙が入るような隙間もない。


(技術レベルは高そうだな、金属を此処まで綺麗に圧着できるのは見た事が無い)


 若しくは、でかい素材を削り出したかのどちらかか。

 ティザーを見る限りだとアンドロイドには、繋ぎ目がハッキリと分かるぐらいには隙間は空いていたが、作り方が違うのかな?


 今考えてみても仕方がないので、取り敢えずコンソールを触ってみる。


(お前何であれコンソールだって分かるんだ?)


こういうゲームのあれ大体そんなんでしょ。


(そうか)


 真っ白な大理石を切り出したオブジェと言っても通用しそうなほど、何処にも弄れそうなスイッチやレバーの無いそれの、斜めに切り出された上面に触れると、中空に画面が現れた。


 そこには文字と自分と同じ姿をしたマネキンのような何かが映っている。


─────────────────────────

ライフモデルの設定をしてください


名前:入力してください

モデル:軍用

フレーム:選択してください

─────────────────────────


 これでキャラクター作るのか。ライフモデルってのはアンドロイドの名称かな?

 名前の欄にはアイシスといれ、他の所を試しに色々弄ってみる。


 モデルは変更不可、フレームは身体の性能が変わるようで、


低重量・軽装甲の高機動型


分厚い装甲と高い積載量を誇る支援型


それぞれの中間をとった白兵型


があるらしい。


後は普通の体型設定が下に並んでるぐらいか。


 多分きっとおそらく後で変えられるんだろうけど、フレームはどうするか。


 蝶の様に舞い、蜂の様に刺したい気持ちもあるけれど、でかい武器も使ってみたい。バズーカ的な何かとか使えるのならば使いたいし。

 だとすると白兵型がちょうど良いって事になりそうだが、もしかしたらちょっと硬い装甲に微妙な速さの器用貧乏な感じかもしれない。フレームが後で変えられない場合、これを選んだら悲惨極まりない。

 とはいえ、高機動型や支援型が尖りに尖りまくったピーキーな性能の可能性があるわけで…

 フレーム選択画面を前に、立ったまましばらく考え込む。


 せっかく誘われたんだから、そこそこ長い時間はやってみたいし、どうせ長くやるんだったら強くなりたいと思うのがゲーマーの性である。

 とはいえ基本ソロで攻略情報を見ずに自分の好きな編成を使って、トップ環境にフルボッコにされるタイプなので、関係無いといえば関係無いのだが…


(適当に選べよ、時間勿体ないだろ)


五月蝿え、こちとら死活問題なんだよ!


(デスゲームでもあるまいし)


粉骨砕身の覚悟で挑んでおります!


 まあ軽ーく調べてみた感じ、アクティブユーザーは多そうだったし、評価も高かった。そんなゲームなのだから、多分バランス崩壊はしていないだろうという気持ちを込めて、白兵型にする。


 次は体型だな。顔はそのままで良いとして、腕伸ばそうかな、身長縮めるか? いや、身体を細くして、ぐへ、ぐへへへへ……


 ─────────────────────────


 かれこれ一時間ぐらいが過ぎたか。キャラクリに夢中になり過ぎてしまった。


 しかし、身長や体型、髪型は勿論の事、指の長さに身体の部位ごとの太さ、挙げ句の果てには爪の長さまで設定する事ができるこのゲームが悪い。こういうのに凝るタイプにこんなん渡したら、キャラクター作り終えただけで達成感に包まれてゲーム辞めちまうぞ。


 まあ、作り終わったキャラを見てみたら、ほんの少し自分より細くて、腕が握り拳一個分長くなっただけで、大して変わっていなかったので達成感はなかったが。


(時間の無駄だったな)


やめて、そんなこと言わないで。


 とはいえ新しい自分を作り終えた事に変わりはないので、作成完了ボタンを押し、確認メッセージを肯定する。


 すると、最初に入っていた箱が光り、中に入れと言わんばかりに床に矢印が現れる。

 特段やり残したこともないので、素直に中に入ると、扉が閉まって視界が暗闇に包まれる。あぎゃん


 ─────────────────────────


 首を切られるような感覚が私を襲って、再度視界が光を浴びた時には、私の身体は機械に変わっていた。

 手術台のような場所に寝転ばされていて、天井の照明が目に刺さる。


 手術台から降りて、歩いてみたり、飛んでみたりする。うん、違和感は無い。


 傍から見たら手術室で騒ぐ傍迷惑な奴に映るであろういつのまにか私の耳元にかけられたイヤホンから、急に知らない声が聞こえてきた。


『おはようございますアイシスさん。身体に違和感はありませんか? もしあるのであればお伝えください』


 違和感は無いけど、どちらさん?


「えっと、どちら様でしょうか」

『申し遅れました、(わたくし)ライフモデル使用者をナビゲートするナビゲーターと申します』


 そのまんまだ、捻りがない。作った人は疲れていたのかな?


『アイシスさんは軍用モデルとなりますので、部屋から出て右手の方向にお進みください』


 そう言われると、視界に部屋の入り口を示す矢印が現れる。とはいうものの…


(左行けよ、左)


 だよね、左行きたくなっちゃうよね。

 世の中にはゲーム開始地点で一日中待ち続ける物好き(変人)もいるらしいが、私はそこまで極まっていないので、精々チュートリアルに反抗するぐらいで済ませておく。


 さっさと部屋を出て、迷う事無く左へと進む。


『そちらは左方向です。反対方向へお進みください』


 無視、何も無い通路を歩き続ける。


『矢印の方向にお進みいただけると助かります』


 気にしない、おっ、曲がり角が見えた。


『アイシスさんは軍用モデルとなっております。そちらは民間モデルの方向ですので、お戻りください』


 聞こえなーい、曲がり角から顔を覗かせて、その先の光景を見てみる。

 そこにはマッシブな身体を持った警備員っぽいアンドロイドと、銃火器を持った細いアンドロイドがいた。


『これが最後です。お戻りください』


(…進むか?)


 ナビゲーターさんに従い、回れ右をする。もう最後って言っちゃってるじゃん、今際の際の最期に聞こえたのは気のせいか?

 でもさ、行けるように作るのも良く無いと思うんだよね。ほら、人ってさ、道があったら進みたくなるし、命令には意味もなく反抗したりする生き物だからさ、御誂え向きな通路と逆方向に進めって言う指示があったらさ、行きたくなるじゃん? 進みたくなるじゃん?

 それを見越して作って欲しいよねほんと。


 そんな誰に言っているのかよくわからない言い訳をぐちぐちと考えながら矢印が指す方向に進む。

 反対側の通路にもあった曲がり角を曲がり、その先にあるドアを開ける。


 その向こうには、それこそ軍が使うような屋内演習場のような広い空間が広がっていた。

 右手側には腰ぐらいの高さの台が並び、その向こう側には的が距離別で並んでいる。


『まずはダッシュボードを開きましょう、左手の手の甲を右手で触ってください』


 ナビゲーターさんの言う通りにする。無視したら何をされるかわからないので、ナビゲーター様の言う事には全て従う事にしよう。


 実際に触ってみると、左手の甲からコンソールの様な画面が宙に踊り、ステータス画面の様なものが表示される。


 ─────────────────────────

損壊率:0%

瞬発型バッテリー:100%

生成ドローン情報量:0%

 ─────────────────────────


 他にも表示されていた内容はあったのだが、目についたものはこの三つか。


 損壊率はHPみたいなものだろう。

 瞬発型バッテリーは…スタミナか?

 生成ドローンに関しては何もわからない、多分クラフト要素か何かだとは思うが。わからない事があったらヘルプを見るか、聞いてみよう。これ常識。


「損壊率とは?」

『生産完了状態を基準とし、そこからどれだけ破壊、消耗しているかの数値です。小数点以下は表示されません』

「瞬発型バッテリーとは?」

『電圧が高く、充電時間が非常に短いバッテリーです。容量が少ないため、一時的に機械の駆動速度を高めたり、エネルギー兵器への一時供給などが主な用途です』

「生成ドローンとは?」

『後で使うので使ったらわかります』


 損壊率もバッテリーも予想は当たっていた。なんか嬉しいけども、一番気になる生成ドローンがなんなのかわからない。面倒臭がりの機械もいたもんだ。


『もう一度触ればダッシュボードは閉じます』


 すごい! 手を振ってもついてくる! ぶれてない! まるで板みたいだ!


(急にどうした?)


 別に何も。


『次は、台に置かれた銃を手に取ってください』


 ダッシュボード(ステータス画面)を閉じると、ナビゲーターさんからそう言われた。

 視界に現れた矢印の先に、よくイメージする拳銃よりは、ゴツくてでかい拳銃が置いてある。

 取り敢えず言われた通り持ってみると、案外手に馴染む。両手で構え、台の二十メートルほど向こう側にある人型の的を狙ってみる。


『その的を目掛けて、撃ってみましょう』


 トリガーに指をかけ、的に向かって引き金を引く。一、ニ、三、四、五…

 全弾撃ち切って、装弾数十五発のうち、八発が頭に、二発が胴体に、五発が的の後方に飛んでいった。微妙。


『それではリロードをしてみましょう』


 マガジンキャッチを押して空のマガジンを取り出し、そして他のマガジンがない事に気づく。


『おや、中身の入ったマガジンがありませんね』


 ナビゲーターさんがとぼけた様子でそう喋る。機械も冗談言うんだな。とはいえ最初から用意しとけって話だが、どうせこのあとなんかあるんだろう。


『こんな時は生成ドローンの出番です。ダッシュボードを開いてください』


 言われた通りにステータス画面を開く。


『生成ドローンの欄に移動して、そこにあるマガジンのデータをタップしてください』


 これかな? そこそこ下の方にあった生成ドローンの文字をタップして、その中にあったPT-J25(拳銃)と.45/十五発マガジンというデータのうち、.45/十五発マガジンと題されたデータにアクセス。

 生成しますかと聞かれたので、脳死で肯定。そうしたら情報量が足りませんと出てきた。


『先に進めないでください』


 怒られてしまった? 平坦な声音だから感情が乗っていない。変態の多い世の中には機械の声から感情を読み取る人もいるらしい。

 嗚呼、一体いつから世界は変人で溢れたのか、それとも変態が表に出てきてしまう様な世の中になってしまったのだろうか。まあ、変態は見てて飽きないからいっぱい居て欲しいのだけれど。


(お前もその一員だと思うんだがな)


 だとしたら頭の中のこいつも変態だ。


『情報量が足りないので、情報量を増やしましょう。どっちの手でも良いので、中指か薬指で親指の付け根を触ってください』


 ウェブ●ューターみたい。確かあれは間違って発動する事が無い様にって理由だったっけ。

 試しにかっちょ良くポーズを決めながらやってみると、どこから来たのかわからないがそこそこ大きめな蝿ぐらいの大きさの多分ドローンが三機、右手の上に現れた。


『それでは今から出す素材を、生成ドローンを使って情報化してください』


 そして、丁度持っている銃と同じくらいの金属塊が棚の上に現れた。


 …で、どうしろと?


 生憎と此方は生成ドローンとやらの操作方法なんて知らない。持てば良いのか、指差すのか、声に出すのか、考えられる方法はいくらでもある。

 さも知ってて当然だ、とばかりに黙り込んだナビゲーターさんだが、私がこの世界に降り立って一時間半ぐらいだと言う事を知らないのか。知らないか。


 そもそも情報化って何だよ、名前で何となくの想像はつくけど、想像と現実は違うんだからな。

 聞けば良いか、そうだな、そうしよう。


「どうやれば良いんですか」

『…情報化させたい物体を手に持ち、生成ドローンを展開させた状態で"情報化"と言えばできます』


 わかる、わかるぞ! 私にも機械の感情がわかる! 絶対馬鹿にしてるだろ、ナビゲーターさん。これで私も変態への階段を一歩登ったのか。


 馬鹿にされた事に納得のいかない気持ちを抱えながら、金属塊を手に持って「情報化」と言い、ついでに気になることを聞く。


「情報化とは?」

『物質の原子核を情報として記憶し、原子配列をを──』

「そう言うの良いから、簡潔に」

『…物体を細かくして、情報として記録媒体に保存する技術です』

「それじゃあ生成ドローンとは何かを簡潔に答えよ」

『物体を情報化し、情報化した物体の原子配列を組み直す事によって、別の物体へと変化させる機能を持ったドローンの事です。軍用モデルであれば、例えそこらの石ころですら銃弾に変える事ができます』


 要は、錬金術か。有名漫画の等価交換とやらの法則で成り立っているのか、それとも石を同じ大きさの金に変える魔法の様な錬金術の方か。


「情報量とは?」

『情報化した物体が持つ量の事です。データの量の様なものと捉えて構いません。物体の質量によってその物体が情報化した時の情報量は変わります』


 等価交換のほうだな。でもだとしたら──


「生成ドローンの技術を使って直接弾丸を銃に装填する方式じゃダメなの?」

『その疑問、ごもっともです。しかし、情報化した物体を生成した時の時間と──』

「簡潔に」

『主な理由として、情報化した物体を生成して銃に直接装填する方法と、マガジンを生成してリロードする方法を比べた場合、技術などの問題でその差は対して変わりありません。その場合、複雑な機構となる直接装填方式よりも、単純で確立された技術の弾倉方式の方が、製造期間も短縮でき手入れも簡単なため、弾倉方式が採用されています』


 確かに、武器は壊れない事も大切だけど、同時に直しやすい事も大切だと誰かも言っていたな。


 疑問は解消したので、ナビゲーターさんの指示に従う。

 話している間に情報化され無くなっていた金属塊の情報量は、二十%ぐらい。

 パーセントじゃよくわからないけど、まあ二割だし結構多いのかもしれない。

 試しにマガジンを生成してみると、情報量が二%減った。それじゃあかなり多い方なのか。けどわざわざステータス画面開いて生成するのは面倒臭い。


『そこの貴方、面倒臭いって思いましたね』


 ギクッ


『そんな貴方に朗報です。なんと、ショートカット機能があります。ショートカット登録可能アイテム数は三つ。生産ドローンを呼び出す時の仕草を連続で行う回数によって設定されたアイテムがすぐに生成されます。二回で一番に設定された物、三回で二番に設定された物、四回で三番に設定された物が生成されます』


 おお、なんか楽できそう。それで先生、その方法は?


『生成ドローンの欄の登録したいアイテムのデータを長押しし、そうすると出てくる詳細設定メニューの中にショートカット登録という選択肢を選べば、登録完了です』


 まあ、簡単。隙間時間にすぐできちゃう。

 早速マガジンをショートカット一番に登録する。先程生成したマガジンを情報化して、今度はショートカットから生成する。

 数秒とかからず、まるで3Dプリンターで作った様に中空に生成されたマガジンを手に取る。


 楽だわ、めっちゃ楽。これが無ければ、ノールック画面操作とかいう曲芸を習得しなければならないところだった。


 ついでに空のマガジンを情報化し、手に持った拳銃に生成したマガジンを装填。そして、三点バーストできるという事実に気付いて、はしゃいでみようとした時、


『それでは、メインウェポンを買いに行きましょう』


 今とても良いところだったが、ナビゲーターさんがいうならば仕方が無い。

 拳銃をいつのまにか腰にあったホルスターにいれ、何度見たか数えていない視界に映る赤い矢印の先の、入ってきた扉とは逆方向にある扉を開けると、今までとは真逆の風景が広がった。


『今からキャッシュを送ります』


 その部屋は、先程までの部屋と同様の作りをしていたが、目が痛くなる様な白い壁にはヒビが入っており、至る所に瓦礫が転がっている。しかし、壁にかけられたショーウィンドウのガラスには傷一つないところが、異様に映る。


『送られてきましたか?』

『ナビゲーター から 8000 Eが送られてきました』


 やったね、お金だ。とはいえ、購入用っぽそうなコンソールには、何これ、鉄骨? みたいなものが刺さっており、到底動きそうには見えない。念の為、触ってみるが勿論作動しなかった。


「どうすれば良いですか」

『目の前のコンソールで武器を購入しましょう』

「どうやってですか」

『目の前のコンソールを使いましょう』


 使えない、周辺認識能力が無いのか。えー、本当どうしよう、周りを見渡してみる。近くのショーウィンドウにはショットガンだったりアサルトライフルだったりが並べられている。欲しいけれど、無視して進める感じかもしれないからな。


 試しにショーウィンドウのガラスを殴ってみるも、そのガラスに傷一つつける事も叶わず、ただ拳が痛むだけだった。


『そのガラスは強化ガラスです。例え貴方が持っている拳銃でも壊すことはできません』


 あれこれ詰んだ? 多分買わないと次進めなさそうなんですけど。いやそんな筈が無い、ちゃんと周りを探していないだけだ。


 地面に這いつくばって、瓦礫の山を掻き分けて何かが無いか探す。

 そうしていると、元コンソールの後ろに変な物を見つけた。半球の金属塊が三つ、球の部分の中心にボタンの様なものが付いている。


「これ何?」

『板状の物体を破壊する使い切りの装置、通称ボードパワーです。ドアや金属の板は勿論、強化ガラスや防弾ガラスまで破壊できる一品です』


 あー、なるほどそういう事ネ。


「ショーウィンドウのガラスは何製?」

『強化ガラスです』

「ボードパワーの使い方は?」

『平面の部分を破壊したい板に取り付けて、ボタンを押すと十秒後に爆発します』


(よーし、やったれ!)


 どれにしようかな、ショットガンにしよう、そうしよう。理由はなんとなくだ、格好良いじゃんショットガン。


 やたらごつごつしているショットガンが飾られたショーウィンドウに、ボードパワーを貼り付けてスイッチオン!

 少し離れて目を閉じてその時を待つ。少し経って、砂が流れる様な音で目を開けると、なんと! ショットガンが飾られていたショーウィンドウのガラスが粒子状になっていた!


 破壊ってそう言う感じなのね、てっきり爆発の威力で割るもんだと思ってた。まあ、耳とか目とかに優しくて良いんじゃ無いか? 多分。


 ひとまず、ショットガンを手に取ってみる。取り回しもそこそこ良くて重さも申し分無し、装弾数はよく分からんが、ショーウィンドウの中に一緒に入っていた弾とチューブマガジンの大きさからして九発ぐらいか。そして問題点が一つ。ポンプアクションじゃねぇ!


 ショットガンといえばポンプアクション、ポンプアクションといえばショットガン、古来からの摂理だ。

 しかし、ここ最近の世の中はセミオートシャッガンにFully automatic shotgunに溢れている。私はイサカM37とかレミントンM870とか骨董品のショットガンが好みなのに。

 とはいえ、セミオートとかの方が使いやすいのもわかるし、ポンプアクションのショットガンが見つかったら乗り換えれば良いだけだから、ひとまずこれで良い物とする。


『ショットガンを買ったのですね。では一緒に入っているデータカードも取り出してください』


 そう言われたので、ガラスの砂の山からそれらしき物を発掘して取り出す。


『それを左手にかざせば、生成ドローンに登録されます。データカードを見つけたら積極的に登録していきましょう』


 やってみたら電子決済みたいな音と演出で、なんかホクホクした気分になる。買い物は楽しいと妹が言っていたのもあながち間違いじゃないのかもしれない。


 ステータス画面を見てみると、生成ドローンの欄に確かにSG-J12(ショットガン)00B(散弾)12ゲージ弾(単発弾)の文字があった。

 スラッグ(単発)弾があるのなら多少相手の装甲が厚くても大丈夫か。取り敢えず12ゲージ弾をショートカット登録しておく。


 辺りの瓦礫を片っ端から情報化して、それを使って生成した12ゲージ弾をショットガンに詰める。ひーふーみーよーいつむーななやーここのつ、装弾数は九発、予想通りだ。


 でもって、残りの爆弾は二つ。何が良いかな。メインウェポンはもう良いとして、サブも拳銃があるからなくて良し。となると、手榴弾とかあったら良いものとかが良いか。


 手榴弾に関してはそれっぽいものがそれだったので、強奪(購入)。閃光手榴弾は使わないし煙幕もいらないから…拳銃の拡張マガジンとかあるかな?


 探してみたらあった。品揃えが良くて大変素晴らしい。文句無しの★5、何たって無料(ただ)だ、無料より素晴らしいものなど他に無い。回数制限付きだけど。これも購入。


『買い物は済みましたか?』


 データカードを登録していると、ナビゲーターさんがそう言ってきた。


「済みました」

『では、地上へ降りましょう』


 此処、地上じゃなかったのか。降りるって言っているあたり、今いる場所は宇宙ステーションとかかな?


 またもや視界に現れた矢印を追って、瓦礫に埋もれたドアを開く。なんか矢印が視界に焼きついてきた。


 その先には、なんが縦長のコンテナみたいな、棺桶の様な何かが立っていた。


『中に入ってください』


 床を見ると、なんか開きそうな模様とが入っていた。射出されるのかな。


 取り敢えず入る。最初に入っていた箱みたいに、息苦しさを感じる程に狭い。棺桶ってこんな感じか。


『搭乗者確認』


『固定機能 オンライン』


『大気圏用装備 オンライン』


おー、なんかすごいそれっぽい。ぽいではないか。


『制御機能 オンライン』


『加速装置 オンライン』


『加速制御機能 オフライン』


ん?


『減速装置 オフライン』


ちょっと待て


『減速制御装置 オンライン』


やばいって、減速できないとかやばいって


『軌道制御装置 オンライン』


『落下傘制御装置 オンライン』


『搭乗者保護機能 一部オフライン』


降ろせ、今すぐ降ろせ


『射出型軌道エレベーター システムオールグリーン』


レッドだよ! 真っ赤っかだよ!


『射出まで 5 4…』


やめろ! 降ろせ! 死にたくなーい!


『3 2 1』


死ぬ、絶対死ぬ、奇跡が起ころうと死ぬ


『0 射出』


うぎゃああああぁぁぁあぁああぁぁ…


 決死の抵抗も虚しく、私は砲台の弾丸となって地上へと射出されたのだった…



PT-J25


シャリオス社が設計した、自動拳銃。

装弾数は十五発、拡張マガジンを使う事で二十七発まで拡張可能。

大口径かつ三点バーストが可能な為、瞬間火力は高い。その為、場面によってはアサルトライフルよりも殲滅力は高くなる。

しかし、いくら瞬間火力が高かろうと、所詮拳銃。真価を発揮するのは腰に携えている時だろう。

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