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第41話

 女の子の案内で猫を探しに行くこととなった俺たちは、孤児院を出た。


 しばし歩いたあと、女の子はなんのためらいもなくスラム街に入っていった。

 思わずミウさんが声をあげた。


「チマちゃん! ここは危ないから近よっちゃダメって言ったでしょ?」


「うー……でも猫ちゃんが」


「ミウさん、お説教は後にしてくれ。今はとりあえず急ごう。今日は俺たちがいるし危なかったら守ってやる」


「でも! ……いえ、そうですね。いまはレントくんが優先です。それにしてもまったく……みんな隠れてこんなとこに来ていたのね……」


 さらに歩くと、廃屋はいおくにたどり着いた。

 ドアも屋根もなく、壊れかけた壁だけがあるような場所だった。


 中に入ると、がれきだらけで人が住めるような場所ではない。

 そして、そのがれきの上には、一匹の白猫がいた。


「猫ちゃん!」


 女の子――チマちゃんが走りよって、そのままなではじめた。

 猫も顔見知りだと理解しているのか逃げることなくなすがままにされている。


 俺たちも近づいて確認すると、確かに猫の胴体には布が巻きつけられていた。


「これがレントくんの服ってことか……おいタンテ、この布からたどれるか? おい……タンテ?」


 返事がないため不審に思いタンテの顔を見ると、顔面蒼白で、


「血が…………血がァァァァ!!」


 と叫びながらそのまま後ろに倒れた。

 俺はあわててその体を受け止める。


「おっと! チッ、ミスったな……ひさしぶりで忘れてた」


「大丈夫ですか!? タンテくんになにが?」


「おどろかせてすまん、ミウさん。こいつは血が苦手でな。血を見ると気絶しちまうんだ」


 タンテを地面に寝かせたあと、あらためて猫に巻かれた布を見てみると、そこには血がにじんでいた。

 これは俺のミスだな。ケガの話が出た時点で察するべきだったか。


 無理やり起こすわけにもいかないので、タンテが起きるまで俺にできることをするしかない。

 とりあえず他に何か知っていることはないかチマちゃんに聞いてみるべきだろうかと考えていると、遠くから声と足音が聞こえてきた。


「こっちだ!」


 声の主たちは、俺たちのいる廃屋へズカズカと入ってくる。


「クソ! なんで貴様らがここにいる!」


「それはこっちのセリフだよ」


 入ってきたのは男4人組。夜空教室よるぞらきょうしつだった。


「我々は聞きこみ調査の結果、ここで男の子の目撃情報があったことをつきとめたんだが? 見たところ……男の子はいないようだな。お前らは何をしている」


「俺らも一緒だよ。孤児院で話を聞いたら、ここに手がかりがありそうでな。それより静かにしてくれ。うちのタンテが寝てんだよ」


「寝てるだと? ハッ、黒タグはのんきなものだ」


 こいつらといがみあってても時間のムダなので、無視してチマちゃんに話しかけた。


「チマちゃん、猫ちゃんに会いにきてたのはレントくんとチマちゃんだけかな? 他の子は?」


「うーん? そうだよー。あとねー、大きいお友達もいたー」


 大きいお友達?

 ミウさんに目くばせするも、首をかしげる。


「大きいお友達について教えてくれるかい?」


「レントくんと猫ちゃんと遊んでたらねー、いつもそのドアのところでねー、こっちを見てるの」


「え?」


 俺が振り向くと夜空教室の男たちと目があった。


「おい! 我々がここに来るのははじめてだ!」


「だろうな……って、おい! 誰だお前!」


「は? オレの名前は……」


「違う、なんか変なおっさんがいる!」


 俺の声で全員が入口のほうを見ると、夜空教室の4人組とは別に、もうひとり男がたたずんでいた。

 太った大男が、ニヤニヤしながらこちらを見ている。


「大きいお友達!?」


「あー、また来たー」


 太った男は俺たちに注目されていることに気づくと、びっくりしたような顔をして逃げていった。

 夜空教室の男たちも、「追えー! そいつが犯人だ!」と叫びながら廃屋から出ていった。


「行っちまったよ……」


「あなたは追わなくていいのですか?」


「ああ、別にいいだろ。タンテが起きるまでまだ時間がかかりそうだし、ミウさんもちょっと休んでてくれ」


 夜空教室あいつらが捕まえたらそれはそれで問題解決だろうし、放っておけばいい。

 それより、タンテが起きるまでに、やらないといけないことがある。


 俺は廃屋の中にころがっていた皿を猫の前に置いた。

 そして、念のために持ち歩いていたハートポーションをそこに注いだ。


 猫は俺と皿をチラチラ見ながら警戒していたが、チマちゃんがうながすとポーションを舐めはじめた。


 飲めるだけ飲んだあとは、不思議そうな顔をしながらも俺のもとへ歩いてきた。

 そして、地面にあぐらをかいていたおれの足に乗ってくつろぎはじめた。

 好感度急上昇。副作用のおかげか、ケガが治ったおかげかはわからない。


「ちょっと失礼するぜ……大人しくしててくれ」


 猫の体に巻かれたレントくんの服をほどいて外す。

 猫の体には傷ひとつなかった。

 ハートポーションは猫にも効くらしい。


 レントくんの服の切れ端を折りたたんで、血がついている箇所を見えないようにする。

 これならタンテが見ても気絶することはないだろう。




『ピヨピヨピヨ』


「痛いっ、痛いっ」


「きゃはは」


「むにゃ……うん? ここどこ? ぼくは……」


 ――――――――――――――――

 ピヨピヨハンマー


 ヒヨコマークがあしらわれた黄色いハンマー

 叩くたびにヒヨコの鳴き声が聞こえるよ


 卵を産まないからオスはいらないと言った

 彼女はオスのヒヨコをすべてハンマーで叩き潰した

 ――――――――――――――――



『ゴミ箱』から出したピヨピヨハンマーで自分の頭を叩いてチマちゃんから笑いを取っていると、タンテが目を覚ました。


「例のあれで気絶したんだよ。もう大丈夫か?」


「あ! ごめんねボス……」


「気にすんな。それより、見えないようにしといたから、もう一度スキルを使えるか?」


 折りたたんだレントくんの布を地面に置くと、タンテはびくりと反応したものの、薄目で見て血が見えないことを確認するとふぅとため息をついた。


 そして、フードを被って気合いを入れる。


「よーし、今度こそ……線嗅眼せんきゅうがん!」


 空中で指を動かし始めるタンテ。

 いきなり始まった儀式に目をしろくろさせるミウさんとチマちゃん。

 この二人ならスキルを見られてもかまわないだろう。


「まずはあからさまに邪魔なにおいを削除削除削除っと……次に、怪しい線だけにしぼっていく……うん、うんうん、よーしいい子だ。そして、これは? あー、OK、猫ちゃんのにおいだ。こっちも外して、あとは……よーし、ビンゴ! うん、建物の外に続いてる。これがレントくんじゃないかな。行こうボス!」


「了解……おっとその前に、二人はどうするか……」


 タンテに見えている線はスラム街の奥につづいているらしい。

 そこにミウさんとチマちゃんを連れて行くわけにはいかない。

 そのため、少し遠回りになるが、孤児院へ二人を送り届けた。


 そして、あらためて線の続く先へ向かって走る俺たち。


「かなり奥まで行ってるな。もうすぐ城壁だぞ」


 治安がどんどん悪くなるが、今の俺はあえて黒タグを見せるようにしているため、襲ってくるものはいなかった。


 そして、ついに城壁にたどり着く。


「おいタンテ、誰もいないぞ?」


「それが……おかしいんだボス。線が壁の外に続いてる」


「なに? 外かよ……くっそー、門まで行かないとだめか」


 街の外まで行ったとなると、やはりあの大きいお友達に誘拐でもされたのだろうか?


 急いで門のある方向へ向かおうとした俺をタンテが止めた。


「待って! なにかおかしいよ……うわっ、ボス、ここに抜け穴があるよ!」


 タンテが城壁の根元に生えている草をかき分けて見つけたのは、人ひとりがギリギリ通れそうな穴だった。

 経年劣化で崩壊したのか、はたまた『逃がし屋』みたいなやつらが人為的に開けたのか……。




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