3話 ちゅ〜れ
「はあ、ようやく飯だ……。」
あんの猫、自分が使う名簿作りも俺に振りやがって。
「ふん、飯を食わねば働けぬとは、軟弱な人間め。」
「うるせーなあ。お前みたいな化け物とは違うの。」
「待て。」
「ん?連れていけ。」
「は?」
ペルシャは俺の肩にぴょんと飛び乗る。
「お前はわしの世話係だ。置いていくことは許さぬ。」
「はあ。いいけど、やらねえからな。」
「ふん、人間の食い物は口に合わん。」
全く、可愛くない。
ペルシャと一緒に食堂に向かう。
「はいよー、カツ丼。」
「はー!これこれ!」
割り箸をパキッと割って、カツに手をつける。
が、視線……。
(じー……。)
(めっちゃ見てる。)
ペルシャのやつ、人間の食べ物には興味ないとか言ってたくせに。
「なんだよ、カツ丼なんて珍しくないだろ。」
「なんじゃそれは。皆コウモリやヤモリを食うぞ。」
「生前の人間に合わせたメニューもあるの。」
カツを口に入れようとしたら、ぷにっとした感触が手に伝わる。
「わしにもよこせ。」
「はあ!?ダメだろ!猫には塩分過多だ!よく知らねえけど!」
「猫ではないケルベロスじゃ!」
「ダメったらだめ!」
めっちゃぐるぐる言ってる。あんまり機嫌損ねると、午後からめんどくさいからなあ。
「じゃあ仕事終わったら、ちゅ〜れやるよ。」
「ちゅ〜れ?なんじゃそれは?」
耳がぴこんと跳ねた。
「現代の猫はみんな夢中らしいよ。たしかここの売店で売ってるの見た。」
「そんなに上手いのか。」
よだれ出てる。食に興味ないと思ってたけど。
「よこせ!」
「仕事終わったらな。」
「何故じゃ!?」
「ちゅ〜れに夢中になりすぎて仕事にならなかったらたまんねえよ。」
「そんなに美味いのか!」
「ちょ、垂れてる垂れてる!よだれつくだろ!」
意図せずトンカツを超えるギルティを教えてしまい、昼休みを終えた。
「つっかれた〜。」
「寄越せ!ちゅ〜れ!」
「はいはい。」
こいつ仕事中もずっとちゅ〜れって言ってきやがった。だめっていうと当てつけにキーボードのキーでたらめに押していきやがって。
「ほれ。」
封を切ってペルシャに差し出す。が、ペルシャはじっと見つめるだけ。
「思ってたのと違う。」
「はあ?」
「わしはカツ丼が出てくると思った!」
「んなわけないだろ。いいから食ってみろよ、飛ぶぞ。」
「ううむ。」
納得がいってない顔で、そろそろとペーストを舐める。
「……!美味い!」
それを皮切りに夢中に舐め始めた。
「美味い!美味いぞ!?何だこの味は!ジューシーで塩気も程よい!これはなんという味だ!」
「普通に鮪味だよ。」
「鮪!こんな美味いものが世界にはあったとは!ああ、無くなってしまう!もっと欲しい!欲しいぞ!!」
ペルシャはすっかりちゅ〜れの虜になった。
翌日
「敦。ちゅ〜れを持ってまいれ。」
「太るからダメ。」




