1話 出会い
「ああこりゃダメだ。地獄行き、即決〜。」
「……は?」
そこそこ頑張ってきた人生だった。
いい大学に行って、就活は失敗、ブラック企業で残業しながら上司の顔色を伺う毎日。
なのに、俺が何をしたって言うんだ⎯⎯⎯?
異世界ケルベロス
~可愛いペルシャに地獄でこき使われてます~
「はあ!?俺過労死なんですけど!?」
会社で倒れたと思ったらここにいた。
もうボロボロだったから死んだのはこの際いいけど、なんで地獄!?
「いやねえ、君外回りって嘘ついて映画見に行ってるよね?しかもレイトショー。」
「外回りって言って映画館で寝るの、労働効率を維持するための戦略的仮眠だからセーフだろ?」
「クソじゃな。罰として3年間地獄の番人として奉仕。」
「え?俺死んでも働かされるの?前世でどんな罪を犯したの?」
なんの罰ゲームだよ。死んだあとぐらい天国でニートさせてくれよ。
「安心せい。お前の仕事は地獄の番犬の世話じゃ。」
「ああ、そうなんだ。」
地獄のイメージで鞭打たれながら重労働させられると思ったけど、そうでは無いみたいだ。
「でも地獄の番犬ってケロベロスとか?なんか怖いなあ。」
「まあそういうな。連れてこい」
「はっ。」
奥からシルエットが出てくる。もこもこの毛並み、くりくりの目、おっさんのようなほうれい線、こ、これは……!
「……ペルシャ猫じゃね?」
「ケルベロスじゃ。」
「ペルシャ猫じゃね?」
「ケルベロスじゃ!」
「無理だろ!!こんなのが番犬とか!!」
ビシッと指さしても、ペルシャはてんっとその場から動かない。
こいつ……生意気かもしれない。
「敵なんて滅多に来ないからへーきへーき。」
「来たらどうすんだよ!!こんなちっこいのに戦えって!?」
何も分かって無さそうなペルシャはくあっとあくびを出す。
か、可愛い……。いや違うだろ!!
……でも、俺ずっと猫飼いたかったんだよな。マンションだから無理だったけど……。まあいいか。ヤバいやつ来たら抱えて逃げればいいし。番犬?無理無理、食われるだろこいつ。……それでも、1回ぐらい何か守るのも悪くないか。
「ちくしょー!!恨んでやる!」
ほら、おいで、と走ってくるペルシャ猫に腕を広げた。
瞬間、ペルシャ猫の姿が消える。
「おぐふっ!!」
吹っ飛ばされた。
壁がボロボロになった。
「あ、そいつめっちゃ強いから気をつけい。」
「早く言えよ……。」
俺の腹に鎮座するペルシャを見ながら
「……守るの無理だわ、これ。」




