今後の話
「光秀ぇ~? そんなことしてごらんなさい。あんたを嫌いなピーマンに変えて
あげるわよ~」
暗い調子で言うのでさらに恐い。
「冗談だって、いや、マジ、ピーマンは勘弁して」
級長は空中に三角形を描いた。その後、光秀が僕にひそひそ声で、
「美智子をからかうのも命懸けだな」
僕は友人に忠告してやった。死にたくなければ、大人しくしていることだね、と
。彼女の性格であんな能力手に入れたらどんな目に会うかわかる……はっ! 僕
は殺気を感じ、後ろを振り向くと、そこには空中に五角形を書いている級長が…
…。
「さあ、はりきっていこー」
さっきとはうってかわって級長が明るい。
先程のストレスが光秀の髪をなくすというエネルギーに変換されたのではないか
と僕は思う。代わりに光秀が暗い顔をしている。
ちなみに僕は盾でガードした。
そうして源さんの家に着いた。道中、光秀と僕は謝って、なんとか髪を元どう
りにしてもらった。僕の能力でも戻せたが、もし戻したとしても、級長の心まで
は戻せないので、そこは諦めた。しかし、級長は無駄に能力を二回使ってしまっ
た訳だ。
扉をノックする。
「入りなさい」
中に入ると、はりつめた空気の中、テーブルについている、源さん、怜君がいた
。
入ると源さんが待っとったよ、とお茶をだしてくれた。
「どうやら事態は深刻らしい」
一呼吸ついてから怜君が口を開いた。
「どういう状況なんですか? これは?」
僕はこわごわと訊く。
「お前等は、どんな結論を出したんだ?」
怜君の質問に、光秀は、
「これは、能力者によってされたものだってことぐらいか」
続いて級長が質問する。
「こんなこと、本当に、人が出来るんですか?……というより、規模はどれくら
いなのでしょう?」
源さんがほぼ絶望的な答えを口にした。
「全てじゃ」
「は?ちょいと待てよ、じーさん、地球全てがこうなっているということか?」
光秀の疑問に怜君が答えた。
「地球だけじゃない、銀河系も含めて全てだ」
血の気が引く、とか青ざめる、ということを初めて実感したような気がした。
……全て、だって?
源さんは話しを続けた。
「こう考えると楽じゃ、我々は止められた時間の中にいる」
僕達三人は顔を見合わせた。そんなことが……。
「先程の美智子ちゃんの質問へのアンサーじゃが、答えは、わからないじゃ」
「え? 源史朗さんの分かる、能力でもわからない、と?」
級長は質問する。
「能力の反発、を覚えているかな?これはおそらく、能力者がやったもの。だか
ら能力の反発が適用される。やっても無駄じゃった」
あ、と、級長。そういえば
僕の時も盾に弾かれたっけ。
「だが、目星はついている。なぜなら、源爺の孫、戒は時を止める能力者だから
だ。そして、奴は今、ここに来ていない。その時点で決まりだ」
怜君は冷静に言った。
源さんは少し疲れ気味に、
「そうかも知れん。だが、戒の能力は直径一センチの
弾をそれも一発のみ打ち出せ、効果も十五秒その物体を止めるというもので、そ
んな強大な能力ではなかったはずじゃ」
「じゃあ、なぜ、奴は家にもここにもいない!」
源さんと怜くんが口ケンカしそうだったので、僕は止めに入った。
「まあまあ、でも当面の目標が決まりました。戒さんを探す、ですね」
みんなそこは賛同してくれた。光秀の食事やトイレはどーすんだ? という質問
に対して源さんは食事は天使界からも取れるが、いざとなったら、アレじゃ。自
給自足じゃ。トイレはうちの山の特訓用天使界に昔、循環用トイレをつけてもら
ったことがあってな。あ、もちろん能力者じゃ。それを使うといい。