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ディアローズ3

 あれから一週間がたった。俺たちは今、ディアローズが侵略している地域ととイクコ亜人国の国境の境界線にいる。見えるのは太陽をうつさない一面中の雲。大地は荒れ果てた荒野のようだ。そして、目前には大量の敵と思われる兵たちが横一面にずらりと並んでいる。そう、今から戦争が始まるのだ。


 開始の号令は王であるユーリアだ。ユーリアは豪華な甲冑を着て全軍に命令を出す。


 「全軍突撃!!!!」


 全軍に響いたその声はすぐに掻き消える。そう自分たちの兵の怒号によって。イクコの兵たちは叫び声を上げながら敵に向かって突撃してくる。うおおおお!!!すかさずディアローズの信者たちも向かってくる。一気にこの場は命を取り合う戦場へと化した。いたるところに魔法が飛び交い、鉄と鉄がぶつかり合う音が聞こえてくる。


 「魔道砲台用意!発射!!」


 ベアトリスが号令をかける。魔力を集めた魔道砲台は敵人に向かって飛んでいく。このまま焼き野原になると皆が思っていた。その時ヒトミだけが黒い影を見ることができた。その影は魔道砲の光線を受け止めているのだ。


 「おい!ヒトミ!何か凄い奴がいるぞ!」


 デスは魔道砲を受け止めている人物を見てとても興奮している。


 「ヒトミ、あいつは俺が片付ける。じゃあ、行ってくる。」


 デスが行こうとしてその時、ヒトミがデスの手を掴む。そう、この時ヒトミはあの魔道砲を受け止める人物にただならぬ気配を感じていた。そして、おそらく自分しか見えていなかったであろうあのスピードに少し危機感をもたらした。デスがやられてしまうのではないかと。


 「わしが行く。」


 「ふざけるなあ!俺が行くんだよ!!」


 ヒトミは少量の雷魔法を使い、デスの意識を落とした。本人には申しはけないと思うがここで寝ていてもらおう。


 ヒトミは駆け抜ける。魔道砲を受け止めていた人物の所まで。ディアローズの信者どもを切り伏せながら。こちらに緑の髪の女が向かってくる。おそらく先程魔道砲を受け止めた人物であろう。そして、その見た目に覚えがあった。


 「おぬしがゲル=ディアローズか。」

 

 ヒトミは剣先を緑髪の女性に向ける。緑髪の女性もヒトミに拳を向けて構える。


 「そういうお前はヒトミ・ゴールドだな。」


 お互い構えながら、相手を睨めつけ段々と体から気力を出している。銀色の輝きと緑色の輝きが戦場を包む。お互いの膨大な気力により周りは吹き飛ばされていく。そして各々の臨界点に到達したとき。緑と銀の光が衝突する。


 「何だあれは!」


 ユーリアは戦場に光るところを指さす。ユーリアが何だといっているのはあの衝撃ではない。ヒトミとためを張れる、ゲルの存在に驚愕しているのだ。


 ヒトミとゲルの戦場はもうすべてが壊されていく。ここには信者も兵たちもよらなかった。なぜなら自分たちがまきこまれて死んでしまうからである。緑と銀の衝撃はすさまじく竜巻が発生したような災厄のような被害を両陣営にもたらしている。


 「ぬう、おぬしやるではないか…!」


 「俺様はまだまだいけるぜ!」


 ゲルの拳に集まっている光が強くなる。そして先程よりも濃く鮮やかな緑色になっていく。


 「食らうがいい!遠国のパンチ!」


 それは、デスが見たらこういうだろう。長距離ミサイルですか?と。激しい爆風が戦場全体に包まれる。とてつもない突風に誰もたつことができない。自分が飛ばされないようにするので精いっぱいだ。爆風が収まり皆爆心地を見る。砂埃で何も見えないが人影が見える。立っているのは一人だけだ。


 とてつもない音がしてデスは目覚める。気絶させられたヒトミに怒りを覚えようとすると、強烈な爆風が飛んできた。デスは空間を戻し、爆風の来ない空間を作った。ひとまず落ち着く。爆風が収まると煙や砂埃が強いところがある。あそこにミサイルが打たれたみたいだ。デスは自然魔法で背に植物を生やしその場所に飛んでいく。


 土煙でなかなか中が見えない。だんだん人影が見えていく。風に砂埃がかき消されていく。銀髪の頭が見えてくる。立っているのはヒトミだった。


 デスは上空から声をかけた。


 「ヒトミよくも俺を気絶させたな。許さんぞ!」


 ヒトミが困ったように眉を下げて話そうと口を開いたその時、ヒトミは空高くふっとばされた。


 「ヒトミ!」


 デスは、ヒトミを吹っ飛ばした顔を見た。上半身半分なくなっている、緑髪の女の子だった。なくなったところの断面からぐちゅぐちゅとうごめいている。そして、だんだん再生してきている。デスが思った感想はシンプルだ。こいつは無敵か?それしか考えられなかった。緑髪の女は体の半分を吹き飛ばされているはずなのに、どうして生きているのか。それは単純に死なないから。そして再生しているところを見るに不死身なんだろう。特筆するべきところはもう一つ、油断としてもヒトミにガードされないスピードそしてそれ高く殴り飛ばすパワー。どう考えても人間じゃない。こいつはなめてかかるとやられるとデスは考えた。


 ゲルはヒトミが勝ち誇ったように立っているのをこっそり再生しながら考えていた。自分が攻撃したはずが何故か自分が吹き飛ばされていたのだ。おそらく血代能力だろう。黄金の悪魔は血代能力持ちとあの国の騎士団が発表していたはずだ。おそらくとんでもない血代能力なのは直にもらったゲルは即座に理解した。しかし、そんなのは自分たちには関係ない。自分は不死身でピロは血代能力が聞かないのだから。誰かが来た。ヒトミの意識がそっちに持ってかれている。ゲルは上半身半分回復してのを見てチャンスと思いヒトミを思いっきり殴る。そして、上空のピンクの悪魔と対峙する。


 デスはすぐに行動に移した。まず、自分の攻撃がこらうのかを試す。自分の手のひらにあたると時が戻されて消滅するビームを出す。


 ゲルはその攻撃を直接受けた。しかし、ゲルの周りに穴が開いただけである。そう、穴があいたのだ。


 「ちょちょちょちょ~~」


 ゲルは穴の中に落っこちていった。ゲルには飛行能力がないのだ。デスの放った時戻しによる消滅ビームで地中は奥深く穴が開いている。ゲルの叫び声がこだまする。


 「ゲル様!よくもゲル様を!」


 それを見ていた信者たちが一斉にデスの方に向かう。様々な魔法をデスに向かって放つ。デスはとっさに時戻りシールドを作り攻撃を防ぐ。デスと信者たちの戦いが繰り広げられようとしていた。


 今の戦況は五分五分だ。こちらの兵たちも頑張ってくれている。もともと亜人とは人と動物が合体したような存在だ。人より身体能力が高い。この世界では魔物というのだが。本来ならイクコの兵が押し切れるはず。その身体能力を生かして。しかし、ディアローズの信者の信者たちは一筋縄では行かなかったではなかった。


 ディアローズの信者の中には元悪魔信仰の頭のねじがおかしい者たちもいる。そいつらの戦闘能力はすさまじい。悪魔の研究をしていることもあり、悪魔との契約者や魔法の達人などがいる。そいつらだけでもすさまじいのに普通の信者たちも粒ぞろいだ。中には気力を使う者たちもいる。中々に手ごわい相手だ。


 先程デスがピロを地中に追いやったのをユーリアは見ていた。ヒトミが飛んで行ったのも見ていたがあのヒトミだ多分大丈夫だろうとユーリアは考えた。それより今邪魔者のゲルがいないのだ形勢をを傾かせるのは今しかないとユーリアは思う。即座にユーリアはベアトリスに告げる。


 「魔道砲を撃て、今なら止める者はいない。」


 「かしこまりました。魔道砲構え撃て!!!」


 魔力のチャージを満タンにして敵の陣営に狙いを定める。そして、撃つ!!


 轟音を鳴らし特大の高圧縮された魔力の塊がディアローズの信者たちにめがけて飛んでいく。着弾しとてつもない光を放ち周りを吹き飛ばしていく。光が収まったその場所はそう何も残ってはいなかった。


 さすがのディアローズたちも少し冷や汗をかいている。このままでは負けると。あの魔道砲台を壊さなければならないと。信者みんなが同じ気持ちを感じていた時、魔道砲台の上から赤い稲妻が走る。


 赤い稲妻は一瞬にして魔道砲台を消し炭にする。その瞬間、ディアローズの信者たちから歓声が上がる。そう、きたのだ。本物の悪魔ピロ=ディアローズが。


 「よくも僕の大事な仲間と旦那に酷いことしたな~、僕はおこったよ!」


 ピロは右手に特大の赤い稲妻を出し、イクコ兵たちをみるみる焼いていく。なすすべなく兵たちは消えていく。その光景は正に悪魔。中には、恐怖で動けない兵もいる。


 ユーリアはピロが暴れている姿を見てこれは負けると悟った。さすが悪魔次元が違いすぎる。このままでは本当にイクコは壊滅する。こうなったら、逃げるか?ユーリアは逃亡することを考えた。この女ヒトミが襲ってきたときも逃げ腰になり逃げようとした。今回はそのヒトミがいる、黄金の悪魔がついている。これなら勝てると踏んでいた。相手はB級、自分たちにはA級がいるから勝てると。ふんぞり返っていた。しかし、どうだ現実は。勝てないではないだろうか。ヒトミは吹っ飛ばされていないし、デスも凶悪だが悪魔には血代能力が聞かない。勝てる気がしない。それほど目のあたりにしている悪魔は鮮烈に強烈な印象をユーリアに印象付けた。これは別にユーリアだけではなかった。戦っているほとんどの兵たちがそう思った。


 デスはしつこい信者たちと交戦しながら、ピロの方を確認していた。そして、自分たちの陣営がまずいことにも気づいている。このままではあのピロとかいう悪魔に嬲り殺されて負けてしまう。どうにかしてここから逃げ出さないと。あいつを止めないと戦争が負けてしまう。そう、デスはあることについて考えていたのだ。国がなくなってしまったらもうアリステラの学費が払えない。そんなかっこ悪いことできるわけないとデスは考えている。親がお金ないから中退だなんてあんなに頑張っているのに可哀そうすぎる。申し訳ない。デスにそういう気持ちが出てくる。


 ピロは、走る。高速に走る。稲妻を走らせながら。走る。そして、ゲルを探す。どこ?どこにいるのゲル。まさかやられてないよね。ゲルは不死身だから大丈夫だよね。そこでピロは思い出す。ゲルが穴の中に落っこちたことを。助けに行こうと。


 死の煙を振りかざしながら、デスは叫ぶ。


 「てめえら、邪魔なんだよ!」


 信者たちを薙ぎ払い、着々とその数を減らしていく。そんな時、赤い稲妻がこちらに走ってくる。あれは、ピロだとデスは瞬時に理解した。赤い稲妻がデスの前で止まる。


 「あ、君はゲルを落とした人だ。」


 角の生えた悪魔は指をさしていった。


 「僕のゲルに酷いことをしたんだ死んでもらうからね。」


 ピロが鋭い爪を突き立てて突進してくる。デスは咄嗟によけようとしたが悪魔のスピードにはついていけない。だんだんスローに景色が見えてきた。これが走馬灯か?とデスが思っていると。空から二人の間に向かって雷が落ちてきた。そこには服がボロボロになって上半身裸のヒトミが来た。


 「デスすまねえ!けがはないか?」


 いつもの口調がなくなるくらいヒトミが焦っていた。それは危うくデスが死ぬかもしれないと思ったからだ。よく観察するとけがはないようだ。ヒトミがほっとするように息を吐くと。デスが口を開く。


 「ヒトミ、言いたいことはあるがまずはあいつだ。あれをするぞ。」

 

 デスはヒトミに気絶させられたことに根を持っているが、今その話をできる余裕はない。この敵は本気でかからないとだめだ。デスの言うあれとはイクコ亜人国の秘密兵器だ。ちなみにこれを持っているのはイクコの将軍とベアトリスにヒトミとデスだけだ。修業の成果でやっとのこさ使えるようになった代物だ。


 「わかったのじゃ。」


 デスとヒトミは腕にしてある腕輪をそれ高く掲げこう叫ぶ。


 「「精霊開放」」


 精霊開放とは腕に宿した精霊と同化することである。これはイクコの天才ベアトリスが開発したもので、精霊が宿る腕輪を開発したのだ。その後試行錯誤の末精霊と同化できるようになるまでにしたのだ。同化中見た目が中に入っている精霊と自分が混じったようになる。同化するには精霊の力に耐えられるからだと宿した精霊に認めてもらうことだ。デスはどちらもなかなか難しかった。体は鍛えていた方だがそれでも足りなかった。精霊にもなかなか好かれなかった。ヒトミはすぐに好かれたというのに。ともかく、精霊と同化すると宿した精霊の能力が使えたり、身体能力その他もろもろががアップしたりする。


 デスに宿したのは闇の精霊。紫の衣を包んでいる。ヒトミに宿したのは光の精霊。輝く衣を包んでいる。

 

 「さあ、来な悪魔。」


 デスが手招きをする。ピロはデスに向かって先程の突進を繰り出す。しかし、今のデスはその動きが見える。が、それでもよけきれず左腕を吹っ飛ばされてしまった。すかさず血代能力で腕を元に戻す。


 ヒトミはデスに大丈夫かと声をかけてあげたかったがそれさえ命取りになる。高速同士の戦いで限りなく時間の流れが遅くなる。ヒトミはデスが血代能力で腕を戻している間にピロと戦う。


 ヒトミは手から光の剣を出し、ピロと応戦をする。ピロの鋭い爪や赤い雷に体がボロボロにされていく。ヒトミも血代能力で傷を流しながら戦っているがそれでも治癒が間に合わない。


 ヒトミとピロが戦っているのを見てうまくピロに狙いを定める。闇の精霊は重力、引力を操る。ピロに習いを定めて全方向から押しつぶす。


 「いたい~~。」


 避けられはしたが手をつぶすことができた。しかし、どうしてよけれたのだろうか?しかし、いい気味だ。人が泣いている姿を見るととても気分がいい。


 あああああ、いたいよー。ゲル助けてよー。この上半身裸の白髪強いよー。しかもあのピンクの女の子も何かやってくるし。何か来ると思って避けたら腕つぶされたし。この二人今までの人たちと違いよ。僕も再生能力はあるけど、ゲルほど早くないし。こうなったらゲルを先に助けた方がいいのかな?わかんないや。どうしよう。ゲル助けて。


 「先程よりも動きが鈍いぞ。」


 ヒトミは動揺しているピロの腕をはじき、ピロの体に全身全霊で光の剣を叩きこむ。ピロは地面に叩きこまれた。


 「ウグッ、ピロ、し、死んじゃうかも…」


 光の剣を携えた処刑人がどんどん近づいてくる。ピロは顔が包帯だらけの時の楽しい思い出を思い出していた。


 その時地面からマグマが噴火してきた。大噴火だ。ヒトミとデスは噴火した方を見る。そこからドロドロになりながらも這い上がってくる物を見つけた。そのドロドロはうめいている。


 「誰だ~?俺様の嫁を泣かせるクソ野郎どもは!!!!!!!」


 ドロドロが超高速でヒトミにとびかかる目にも見えない速さで飛んでくる。ヒトミは咄嗟に血代能力を治癒から攻撃反転にすることができなかった。


 高熱を持ったドロドロの拳が対応できなかったヒトミの胸の真ん中に突き刺さろうとしていた。その時どこからか現れたかプルトが現れた。


 デスとヒトミは圧縮された時の中でプルトを見て驚いたがそれもつかの間プルトはそのドロドロの拳に貫かれてしまった。更にそれだけではない。そこで勢いはやや収まったがそのまま貫通してヒトミの胸を貫いた。


 貫きながらだんだんドロドロの形が元に戻っていく。そうゲルだ。ゲルは地中の溶岩に溶かされながらも大切な人を思いここまでやってきたのだ。そして彼はこういう。


 「俺様が助けに来たぜ。」


 ピロはもう顔面崩壊勝手くらい泣きはらした。それはゲルが自分を助けてくれたのもそうだがそれだけではなかった。一番はただただゲルがかっこよかったのである。もっともっと好きになる。あまりのかっこよさに感動したのだ。そして、興奮しすぎて気を失ってしまった。


 ゲルはボロボロだなっといってピロを担ぎデスに向かってこういう。


 「俺様たちはもう戦わない。戦争をやめてくれ。お宅の大将にもそう伝えてくれ。マギドはいるか!」


 すると亜空間から見た目ヤギ人間が出てくる。


 「信者たちに戦争はピロがケガしたから中止、帰るぞって伝えて。」


 「かしこまりました。」


 そういって、またヤギ人間は亜空間の中に入っていった。ゲルは担いで高速でこの場を去った。俺は精霊同化をやめてユーリアにそのことを伝えた。ユーリアは退去するディアローズの背を打ち取りに出ると思ったが。うれしそうな顔をして「それならばしょうがない。」といって、戦争をやめるように声をかけた。


 かくして、ディアローズとイクコ亜人国の戦争は終わったのであった。


 世間的にはイクコがディアローズを撃退したように見えたが俺はこの戦争で勝った気がしなかった。空が晴れていく。きれいな夕焼けが目に入っていく。夕焼けってこんなにきれいだったっけ。そんなことを思いながら俺は戦場でぼーっとしていた。





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