吊るされた男
前回でこの話で完結しますし忘れたための一話です。
リナを元の世界に送り出した直後。
素早くスターが傷ついた一番の首を刎ねた。
「ハングドマン! 君は……!」
体を切り裂かれたハングドマンの体からは夥しい出血、既に顔は青ざめていた。
「……おお、スター様。へへ、あんたの胸で死ねるなら、本望かな」
豊満な胸の中で、という下品な意味ではない。騎士として、王として、そして将軍としてチャリオットに匹敵する最高の評価を得ているスターは、その元で死ねることは兵の本懐であるとすら言われていた。
だが、今その言葉は、スターには悲しすぎる。
「……立派だ。ハングドマン、君は最高の騎士だ。だからもう……喋るな」
もうハングドマンの顔を見るのも辛い。けれど、その顔を、死に顔を、スターは見なければならない。数多くの部下がそのように散って行ったように、スターは大切な仲間を、尊敬できる一人の王の死を見届けなければならない。
「……リナは、可愛いよな」
「素晴らしい人間だ。彼女ほど尊敬できる人間もいない」
「……お前が、リナにキスしてて、俺凄い嫉妬してたんだぜ」
「あれは、あの世界ではそのように愛を示すのだろう?」
「ねえよ! げほっげほ、あれは男女の性的な愛だっつの」
「む、無理するな! そんなこと、いやしかしリナにそう思われてしまったのだろうか……? い、いや、気にするなハングドマン。私にそのつもりはない」
「へ、そりゃよかった。最高の騎士様じゃ、俺は相手になれないからな」
ハングドマンが満足そうに息を吐く。
その顔に心残りはない様子だ。
「……頼むぜ、平和な、世界を」
「……ああ、任せろ」
二つの死体をその場に、スターは立ち上がった。
「……レベルレットにも戻れない、か」
これからのことはまだ何も分からない。
だが彼女は戦い続ける。その命と同義である誇りのために。
四苦のアイベリーがリナにかけた魔法、そして常時いつも誰かにかけている魔法の正体は『再会魔法』、嫌な相手と出会わなければならないオンゾーグと組み合わせて使う。
アイベリーとしては最期の再会魔法は地獄で会おう、的な意味だが、結果的に彼女の魔法がリナを元の世界に戻したのかもしれない。




