21 ルキア魔法王国編 エピソード12 part1(改訂)
ウィンちゃん
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ルキア魔法王国の国境に差し掛かった瞬間、世界が白く塗りつぶされた。
濃い霧が馬車をすっぽりと包み込み、視界はわずか一メートル先も見えない。
車輪がゆっくりと軋む音だけが、妙に大きく響いていた。
アリスはフードを深く被り、膝の上の小さな少女の頭を優しく撫でた。
「ウィンちゃん、大丈夫だよ。お姉ちゃんがついてるから」
ウィンちゃん:「うん……でも、ウィンちゃん怖いよ……」
小さな体を震わせながら、ウィンちゃんがぎゅっとアリスの服を掴む。
フノンが穏やかな声で説明した。
「この霧は、エルフの結界です。
人が勝手に入れないよう、二重三重に張り巡らされています。
ハイエルフの私が一緒でなければ、突破はほぼ不可能でした」
フノンの指示に従い、馬車を慎重に進めていく。
すると、まるで嘘のように霧がスッと晴れた。
目の前に広がったのは、幻想的な森の世界だった。
鬱蒼とした大樹のジャングルの中に、大木をくり抜いた家々が点在し、
森全体が一つの巨大な村のように繋がっている。
国境の兵士に止められたが、フノンが元宮廷魔術師の名を告げると、
たちまち道が開かれた。
フノンの実家に立ち寄ると、家族が温かく迎えてくれ、
手作りの料理を囲んで笑い声の絶えないひとときを過ごした。
再び馬車を走らせ、森の中心部へと到着する。
大木をくり抜いた図書館や議事堂が並ぶ中、小高い丘の上に白い巨大な遺跡がそびえていた。
フノン:「あれが、月の女神様の神殿です。
エルフたちは聖なる妖精を崇めていますが、特に月の女神を大切にしているんです」
ウィンちゃん:「お姉ちゃん、すっごく綺麗……!」
アリス:「うん。この中に入るんだよ」
政府の許可を得て、神殿の扉が開かれた。
中は緊張の連続だった。
フノンが次々とトラップに注意を促す。
フノン:「右上の壁に気をつけて! 床の石も踏む場所を選んで……」
その時、ディネの声が響いた。
ディネ:「あら、ここに隠し扉があるわよ」
フノン:「え……? 私は知らなかった……こんなところに!?」
隠し扉を開け、地下の奥深くへ進む。
古い祭壇の先に、厳重なトラップが施された宝物箱があった。
フノンが魔力を通して調べようとした瞬間——
苛立った女の声が、神殿全体に響き渡った。
セレネ:「誰ですか! 人の眠りを邪魔する馬鹿者は!?」
アリスは慌てて頭を下げた。
「ごめんなさい!
こちらには大変尊き大精霊様がいらっしゃると聞いて、
ぜひお力をお借りしたいと思いまして!」
セレネの声が、少し興味を帯びたように変わる。
セレネ:「ほう……よく我のことをわかっているではないか。
そこまで言うなら、力を貸してやろう」
アリス:「(えっと……そこまで言ってないんだけど……)」
内心で苦笑しつつも、アリスは無事に契約を結んだ。
月の精霊セレネ——静かで神秘的な少女の姿が、心の中に浮かび上がる。
これで、ついに8大精霊すべてとの契約が完了した。
月の精霊セレネ
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神殿を出た後、フノンは目が点になり、ミクリはまた頭を抱えていた。
フノン:「アリス……本当にすごいわね……」
ミクリ:「もう、頭痛が……」
その夜はフノンの実家で一泊し、翌朝、ルキア魔法王国を後にする前に市場へ立ち寄った。
食材を調達していると、店の商人が楽しげに話しかけてきた。
「ルキアの西の隣国、カンタレア王国でな、世界一の格闘技大会が開催されるらしいぜ。
世界中から、自分が一番強いって奴らが集まるんだとよ!」
馬車に戻ると、アリスは目をキラキラさせながら言った。
「格闘技大会かぁ……出てみたいなぁ!」
ミクリ:「アリスは本当に怖いもの知らずだね……」
フノン:「私もいつか参加してみたいと思っていたわ」
ミクリ:「いやな予感しかしない……」
アリスは拳をぎゅっと握りしめ、明るく宣言した。
「こうなったら、自分がどこまで強くなったか試したくなってきた!
みんな、格闘技大会に出ようよ! いいよね?」
すると、精霊たちの声が一斉に飛び交った。
ディネ:「私は別にいいと思うのよねぇ。
他の力強い男たちを、じっくり見てみたいし」
サラ:「やめとけって! まだお前弱いだろ!」
ウィプス:「僕は出た方がいいと思うよ! 何事も経験だよね!」
エント:「格闘技なんて下品なスポーツは嫌いですわ……」
ジェイド:「……僕はどっちでもいい。興味ないかな」
シルフ:「面白そう! やろうよー!」
セレネ:「私は……戦いは嫌いだから……」
ノーム:「意見はバラバラだな。
まあ、本人次第だ。参加するなら、我々は手を貸さんぞ」
アリスは馬車の揺れに身を任せ、にっこりと笑った。
「よし、決めた!
カンタレア王国へ向かおう!
最強を目指す第一歩……格闘技大会だ!」
ウィンちゃん:「ウィンもいくよー!」
シルフ:「やったー!」
8大精霊すべてと契約を果たした美少女剣士アリス。
口うるさい精霊たちと、頼もしい仲間たちと共に。
新たな舞台、カンタレア王国が待っていた。
(続きは次話で)




