19 風の谷編 エピソード11 part2(改訂)
水の精霊ウンディーネ(ディネ)
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風の谷に近づくにつれ、空気がどんどん重く淀んでいった。
馬車を降り、谷の入り口に立った瞬間、アリスは眉をひそめた。
「風が……本当に止まってる」
フノンが掌を上に向け、目を閉じて魔力を探る。
「魔力の流れが大きく乱れています。
自然の風の精霊が何かに封じられているか……あるいは、ウィンドドラゴンが暴走しているのかもしれません」
ミクリ:「気配が濃い。油断するな」
ディネがアリスの肩の上で腕を組み、ため息をついた。
ディネ:「まずは偵察よ。アリス、軽く飛んでみなさい。無茶はしないで」
アリスは頷き、気を込めて軽く跳躍した。
谷の奥を覗き込んだ瞬間、彼女は息を飲んだ。
「いた……! ウィンドドラゴン!」
サラ:「でかい! ファイアドラゴンより明らかにデカいぞ!」
ジェイド:「……息が違う。風を操っているな」
ウィプス:「わー、かっこいいけど、なんか怖い!」
ノーム:「地面がボロボロだ。足場が悪すぎる」
エント:「みんな、怪我だけはしないでね」
フノンが冷静に分析を加えた。
「ドラゴンの魔力核は、頭の後ろ……首の付け根あたりにあります。
そこを正確に狙えば、一気に決着がつくはずです」
アリスは大剣を構え直し、目を鋭くした。
「よし、作戦はシンプルにいくよ!
ミクリが足を、フノンが魔法支援、私が首を狙う!
精霊たちは連携で援護をお願い!」
「了解!」
三人が谷底へ滑り降りると、ウィンドドラゴンがゆっくりと首を上げた。
黄色い大きな目が、三人を捉える。
次の瞬間、強烈な突風が吹き荒れた。
「うわっ!」
ミクリが魔剣を地面に突き刺して耐える。
フノンが即座に詠唱した。
「ウィンドバリア!」
透明な壁が風を逸らし、アリスは一気に間合いを詰めた。
サラ:「今だ! ファイアブースト!」
アリスの大剣に炎が宿り、速度が一気に上がる。
ミクリが俊足で回り込み、ドラゴンの前足を深く切り裂いた。
ミクリ:「足、崩した!」
ウィンドドラゴンが咆哮を上げ、翼を広げて反撃の突風を放つ。
ノーム:「ここは俺が持つ!」
地面が隆起し、土の盾が風を防いだ。
ジェイド:「目……くらませ」
ウィプス:「ライトフラッシュ!」
眩い光の粒が爆ぜ、ドラゴンが一瞬目を細めた。
その隙に、アリスが大きく飛び上がった。
アリス:「ディネ!」
ディネ:「任せなさい!」
ディネの水の力が大剣に流れ込み、氷の刃が鋭く輝く。
「アイスセイバー・フルバースト!」
冷気をまとった大剣が美しい弧を描き、ドラゴンの首の付け根に深く突き刺さった。
サラ:「そこだ! 焼き広げてやる!」
炎が傷口に注ぎ込まれ、肉を焼きながら抉る。
フノンが後方から精密な魔法を撃ち込んだ。
「ウィンドピアス!」
風の槍が氷と炎の傷をさらに抉り、魔力核を直撃する。
ウィンドドラゴンが断末魔の咆哮を上げ、巨大な体がゆっくりと崩れ落ちた。
地面が激しく揺れ、谷全体に風が戻り始めた。
アリスは息を荒げながら剣を収め、満面の笑みを浮かべた。
「やった……!」
ミクリが駆け寄り、穏やかに微笑む。
「よくやった、アリス」
フノンが目を輝かせて近づいてきた。
「素晴らしい連携です……!
最上位の大精霊様たちと一緒に戦うなんて、本当に夢のようです!」
ディネ:「まあ、当然よね。私たちが本気を出せばこんなものよ」
アリス:「ディネ、調子に乗るのもいいけど、ちょっと自慢しすぎ!」
サラ:「へへっ、次はもっと派手にいこうぜ!」
ノーム:「派手すぎて足場が崩れたらどうするんだ……」
エント:「ふふ、みんな元気ね」
アリスは谷の奥を見やり、小さく息をついた。
「風が戻ってきた……
これで周辺の作物も、また育つようになるかな」
しかし、その時——。
谷の最奥から、微かな黒い霧がゆっくりと立ち上っているのが見えた。
ジェイド:「……まだ、何かいる」
アリスは剣の柄を強く握り直した。
「みんな、油断しないで。
まだ終わってないみたい……」
風の谷のさらに奥へ、三人はゆっくりと足を進めた。
(続きは次話で)




