19 風の谷編 エピソード11 part2
水の精霊ウンディーネ(ディネ)
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南部の山を越えて、西に向かう途中、街道から外れた山奥に砦のようなものを見つけた。この辺りに砦を建てたという話しは聞いていない。
この西方にはルキア魔法王国がある。ルキアと対立はしていないが、国交があるわけでもないので、ここを通る人はほとんどいない。
さらに街道を外れて、山奥に向かう理由もなく、何のための砦か気になった。
アリス「ディネ。ノーム。ちょっと調べてきてくれない?」
ディネ「べつにいいけど。」
ノーム「うん。」
ディネが砦に飛んで行った。
ちょっとして、すぐに帰って来た。
ディネ「調べてきたよ!
あそこは盗賊団のアジトで、
中には亜人が15人捕らえられてたよ!」
ミクリ「なんと!許せない!」
アリス「ディネ。それで盗賊団は全部で何人くらいいた?」
ディネ「全部合わせて、70、80人ってところかな。」
アリス「人の配置は?」
ノーム「砦の入り口に、5人。
見張り台に2人。
待機しているのが、10人くらい。
亜人の見張りで2人。
後は奥で50人位休んでいるよ。」
アリス「最初の相手は15人くらいね。
私とミクリで大丈夫かな。
砦の入り口と見張り台の破壊は、長距離魔法をフノンにお願い。」
ミクリ「オーケー」
フノン「わかりました。」
アリス「後は3人で乗り込んで、亜人の見張りは速攻で先行してミクリお願い。
休んでいる奴らは、まずフノンの全体魔法で半数は減らして、残り20人くらいは、私が減らすから、後は、フノンとミクリにお願い。
という流れでいきます。」
ミクリとフノン「わかりました」
アリス「じゃ、いきますか!」
フノンが魔法で入り口を破壊、同時に、ミクリが先行して砦の入り口に突っ込んだ。その後をすぐにアリスが入って、待機している10人を倒す。
ミクリは先行して亜人の監禁場所に向かう。アリスは休んでいる盗賊の部屋の扉を閉めて、フノンが部屋ごと全体を火炎魔法で吹き飛ばす。アリスもサラにお願いして、ファイアブレードを放つ。
2重の火魔法で部屋ごと吹っ飛び、盗賊団は壊滅。ミクリが亜人15人の救出に成功して、砦を出る。
最後に砦ごと火炎砲で吹っ飛ばし、影も形もなくなった。
亜人たちを近くの村まで送り届けて、再び、馬車を出発させた。
南方は暖かく、山も森林で覆われていて、風が吹いていないとムッとする湿気を強く感じた。
森の深い山道を進むといきなり大きな谷間の盆地が現れた。その盆地の中央は高原になっていて、小高い丘の上に緑に覆われた白い遺跡が残っていた。
世界から風が無くなって数日過ぎたが、その原因と思われる風の谷の神殿にやっと着いた。
3人は、植物に覆われた遺跡の中に入って行った。古い建物だが崩れたところは無くしっかりと建っていた。重々しい空気の通路を進むと、奥に空気が酷く澱んだ広間がある。そのすぐそばにウィンドドラゴンが倒れていた。
アリス「これが風が無くなった原因だろうか?」
気づいたドラゴンに近寄ると立ち上がろうと動いたが、それ以上ドラゴンにどうする気配もない。もう動けないらしい。死んでいるかもと思ったが、かろうじて生きている。
アリス「大丈夫ですか?」
ドラゴン「お前は誰だ!」
アリス「冒険者です。風の谷の調査に来ました。まさかこんなことになっているとは。
治癒魔法をかけてみますね。」
ドラゴン「ムダだ!ワシの生命は長くない。」
アリス「助ける方法はありませんか?」
ドラゴン「もう何をしても駄目だ。」
アリス「どうしてこんなことに?」
ドラゴン「北の新しい邪魔な闇の魔王の手下が襲ってきた。魔王軍がこれから勢力を伸ばすために、ドラゴンに力を貸すように脅したが、中立を訴えたので、あっさり倒された。かなりの使い手だったぞ。
もうワシの生命は残り少ない。代わりにこの新しい生命の誕生を見守ってくれないだろうか。」
というと、お腹の中から光が出て来て、アリスの前に止まった。その瞬間。光の輝きが大きくなり、輝きが薄れると小さなドラゴンが、現れた。
アリス「カワイイ!」
ドラゴン「この子を守ってくれ!頼んだぞ!」
アリス「わかりました。必ず守ります!」
弱ったウィンドドラゴンは、代わりに新しい生命を残して静かに息を引き取った。
ディネ「可愛いウィンドドラゴンね。
そうだ。ウィンちゃんにしようか。」
アリス「ディネ。また短縮系?」
アリス「ウィンちゃん!よろしくね♪」
ミクリ「大丈夫なの?ドラゴンまで従えて?」
フノン「すごい!アリス、君は凄すぎるよ!ドラゴンだよ!ウィンドドラゴン!上位のドラゴンなんだけど!」
アリス「成り行き!成り行き!」
ディネ「奥にいるよ!シルフが。」
アリス「次は、シルフだね!」
奥の部屋から、闇の魔王の手下である魔族のファルコンが出てきた。
ファルコン「何者だ!」
アリス「魔王の手下だな!許せない!」
アリスが言い終わる前に、ミクリが先制攻撃を、ミクリが弾かれたタイミングでフノンの火炎砲が命中した。爆風と同時に、アリスが縦一文字で剣を振る。
爆風と衝撃波で、魔王の手下は後退りするが、致命傷にはならない。
アリス「ミクリ!フノン!もう一度やるわよ!」
ミクリが先制攻撃を仕掛けようとするより早く、フノンが火炎砲を放つが
ファルコン「魔族を甘くみるなよ!
溢れる闇よ!ブラックホール!」
暗闇が火炎砲もすべてを飲み込もうとしている。
アリス「セイントフラッシュブレード!」
光の剣が輝きを増し、ブラックホールを切る!と暗闇は消滅した。
ファルコン「なんと!闇魔法の最大のブラックホールを!」
ミクリが先制攻撃を仕掛け、フノンが火炎砲を放つと
アリス「ウィップス!サラ!お願い!
ファイアセイントフラッシュブレード!」
火焔に聖なる光を纏い、闇を祓う火焔砲で、かなりのダメージを受けた魔王の手下。
膝をついたその時、ファルコンの真上で、濃密な火焔の塊を大きく育てていたフノン
フノン「メテオ!」
超大技を繰り出した。さすがのファルコンもよろめいた。その瞬間!
アリス「ウィップ!ディネ!お願い!」
「アイスセイントフラッシュブレード!」
光輝く氷の剣が、ファルコンを真っ二つに切り裂いた。
アリス、ミクリ、フノンはファルコンとの壮絶な戦いに終止符が打たれた。
アリス「ねぇ!ジェイド!アンデッド化って魔族にも効くの?」
ジェイド「やってみないとわからないかな?
この魔族はかなり強いからね!」
アリス「ジェイド!アンデッド化してみよーよ!」
ジェイド「わかったよ!じゃ、呪文を唱えてみて。」
アリスが呪文を唱えるとファルコンがアンデッド兵として蘇る。
アリス「おーーーーーーーお!
できたじゃん!でも、いざという時まで大事に取っておこう!」
アリスはファルコンをそっと亜空間ポッケに入れて、奥の部屋に進み始めた。
アリスは奥の部屋に入って、中央の祭壇に祀られた箱に意識を集中して、魔力を繋いで、契約した。
アリス「シルフ!おはよう!よろしくね♪」
シルフ「なんだよ!いったい!
魔王の手下に封印されて、覚えていない。寝ている間に何があったの?
あれ?この小さなウィンドドラゴンは?
ウィンドドラゴンはどうしたんだよ!」
アリス「魔王の手下に倒されて、さっき旅立ったよ。この子を代わりに残してね!」
シルフ「なんだって!魔王の奴!許せない!」
アリス「大丈夫!魔王の手下は私たちが倒したから。」
ディネ「シルフ!久しぶり!」
サラ「オー!」
シルフ「なんだよ。お前たち!こんなに大勢揃って!」
シルフの力により、幼いウィンドドラゴンにもパワーがまし、風を世界に取り戻すことが可能となった。
風が優しく流れ始めると、世界に再び風をもたらした。
風は大地を生き返らせ、人々の心に勇気と希望を与えた。
風の精霊シルフ