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呼出


早速アナが大欠伸(おおあくび)をしてメティに注意されていたが、直ぐにメティは顔を(しか)めて頭を抑えた。


「メティちゃん大丈夫?」


「うぅ…頭が痛いです。昨晩は飲み過ぎてしまった様ですね…記憶も曖昧で」


最後の一言を聞いて俺達は顔を見合わせた。


「あのねっ、メティすごい酔っ払って…むぐっ…!」


アナが言い終わる前にティオが素早く口を塞ぎ、人差し指を口に当てるとアナは理解はしてなさそうだがちゃんと口を閉じた。


「え、酔っ払った…?」

「少しだけね、ウチらも飲み過ぎてこの有り様だからね〜」

「うん、メティにしては少し珍しい。でもその程度」

「そうだね。まあたまには良いんじゃないかな、そうだろうミウ」

「ああ。流石に見張り無しは気をつけてないとな。ティオ、寝てる間ありがとな」

「え…ティオちゃん見張ってくれてたの?」

「…うん」

「全員に毛布を掛けたのもティオだ」

「そうなの!?ありがと、ごめんねティオちゃん〜」

「ありがとうございますティオ」

「ありがとうティオ君」

「えっとえっと…ありがとでしたっ」


「…いい。仲間だから」


その台詞を聞いて全員が笑顔を見せた。特にアナは満面の笑みだった…きっと『仲間』と言う単語が余程嬉しかったのだろう。


「では片付けましょうか。朝食は摂りますか?」

「とるー!」

「あはは、ほんとよく食べるね〜。ウチは軽くでいいかな」

「僕も」

「ティオも」

「俺も軽く…」


「っ!?」

「ミウ!魔力が!」


突然、エンカの櫛から魔力を感じた。


どうしたんだ、何かあったのか?


俺は直ぐに櫛を取り出して魔力を込めた。暫くすると『鬼門』が現れ、開いた門からエンカが歩いて来た。


「ふぇぇっ!?なにこれ?あのこだれぇ?」

「アナ、ちょっとこちらへ」


直ぐ様メティがアナを天幕の中に連れていった。メティならわかり易くしっかり説明してくれるだろう、ここは任せよう。


「ミウ、久しぶりね」

「ああ。櫛に魔力を感じたんだが、何かあったのか?」

「エウルがあなたに話があるって」

「そうなのか…重要性が高そうだな」

「そうみたいよ、詳しくは本人から聞いたら。今からあなたを鬼門で『ブォモル平原』に連れて行くわ」

「あれ、エンカちゃんは何でエウルちゃんと会ったの?」

「…ブォモル平原に用があったのよ」


そう言いながらエンカはソワソワした様子だった。何か訳ありか?いや、そんなことよりも…


「その行動は鬼人族として平気なのか?」

「関わる相手があなた達なら平気よ。…それに注意深く行動してるから」

「そうか。それじゃあ頼む」

「ええ」


「独りで行って来てもいいか?」

「危険な場所に行く訳じゃないからいいんじゃない。ウチらはここで待ってるよ〜」

「異議なし。全員で行く必要は無さそう」

「僕も同感だよ」

「私もです。アナもですよね?」

「ふぇっ…うん、みんなとまってるぅ」

「そうか。それじゃ行ってくる」


エンカが再び鬼門を出現させたので俺は懐から鬼の木彫り人形を取り出した。


「それ、常に懐に入れているの?」

「ん、ああ。エンカの櫛も一緒にな」

「…そ、そう。さあ行くわよっ」


そうして俺はエンカと共に『鬼門』を通り、ブォモル平原に転移した。


ーーーーーーーーーー


あの男性のお陰で何とか王都から脱出することができた。


私はカレンに気絶させられて『イアーナ村』に運ばれ、そのまま数日間死んだ様に眠っていた。我ながら情けないと思ったがあの時は色々あり過ぎて心身ともに疲れ切っていた。


目を覚ました私は直ぐに『王都ベレンティカ』へ帰還し、『シスレ大草原』で起きた事を詳しく報告した。


すると王の側近や騎士団長が話し合いを始め、その結果なんと私に特練一番隊の隊員を手に掛けた容疑をかけられてしまった。


捕縛されたらおしまいだと判断した私は即座に王城から逃げ出した…。


そして今に至る。


これからどうするかはもう決めている。『神国エリシオン』に向かい、カレンの事を調べる。…知りたいのだ、本当の彼女のことを。


私は数日掛けて神国の『シャファルの町』に辿り着いた。


道中、独り旅は厳しいと改めて痛感した。休みたくても見張りが居ない、でも睡眠を取らないと心身の疲労は回復しない。故にもうクタクタだ、取り敢えず宿を取って休もう。


それから私は食事も摂らずに宿で死んだ様に寝た。


起きた時、空腹と頭痛と倦怠感に襲われた。どうやら眠り過ぎた様だ…先ずは食事を摂ってからギルドで冒険者登録してクエストを受けよう。


町の酒場で食事を済ませ、ギルドに行って冒険者登録をしてそのままFランククエストを受注した。内容は至って簡単、指定された植物や鉱石の採集だ。


準備をしてから町の出口へ向かって歩いていると、前方から見覚えのある顔が近付いてきた。あの男性は…!


「あっ」「…あっ」


そこに居たのは王都で逃がしてくれた人だった。

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