猫耳②
試合開始直後、電気の塊の様な物を相手に投げつけ、動きが止まったところに更に電気を纏った拳で物凄い連打を浴びせた。
相手は身動きが取れない様子でサンドバッグ状態だった。
「オラオラオラーッ!!」
既に意識の無い相手をひたすら殴り続け、手を止めた時には相手はもう死んでいた。
本当に人を殺すことなど何とも思ってないんだな。ガッツポーズして笑ってやがる。
手を抜いてたので実力は未知数だ。
「勝てそうか?」
「ふむ、雷の属性魔法か。まああの程度なら負ける気はせぬ」
「そうか」
「ミウ、あやつも殺してはならぬのか」
「イヴ、俺は君にあいつみたいに何の躊躇いもなく人殺ししてほしくない。だからこそ命を何とも思っていないああいう奴は野放しには出来ない。それに相手に気を遣いながら戦ってイヴに何かあったら俺は自分を許せないからな…あくまでもイヴの身が最優先だ」
そう言ってイヴの白くて綺麗な手を握って微笑むと、分かり易く照れていた。
「か、からかうでない!」
「酷いな。からかってるつもりなかったのに」
「へ?そ、そうなのか。すまぬ…その、妾の身を案じてくれて嬉しい」
か、可愛い。イヴのちょいちょい出してくる女の子らしさは堪らない。
「さあ帰ろう」
「うむ」
それから数日間、朝~昼過ぎまで鍛練、夜は闘技場で観戦。そんな日が続いた。
イヴとユビールとか言う魔人はなかなか当たらなかったが、恐らく運営側がメインイベントに取って置いてるのだろう。今日明日には決まる筈だ。
俺とミゥーズ傭兵団は体術と武器の扱いがかなり向上した。中でも強くて統率力のある2人、ダレアを団長、ポルメネを副団長に任命した。2人とも女性だ。
俺はこの世界の古臭い男尊女卑、種族差別や偏見を無くしたい。団員の男達には念のため「団長と副団長に逆らうということは俺に逆らうことに等しい、分かったな」と釘を刺しておいた。
まあ女性であるイヴの恐ろしさを知っているあいつ等なら解ってくれるだろう。ダレアとポルメネはそんな同性のイヴに強い尊敬と憧れを抱き、慕っている。イヴもそんな2人に特別力を入れて稽古をつけていた。
皆が鍛練するなか、俺は刀の創造に力を注いでいた。せっかく剣術を教わったのに棍棒創って戦うのも何だか勿体ないからな。
しかしなかなか進歩しない。俺のイメージはやはり日本刀で、集中すれば難なく創造できるがイヴの血刃の様にスムーズに出し入れして扱えない。どうしても時間を要してしまう…まあ投擲武器ではないので一度創ってしまえば問題ないのだが。
今日の鍛練は休みにしてイヴとルムリスとレリス、ミゥーズ傭兵団全員で王都の大浴場に来た。
とんでもない広さで最高の気分だった。これからもちょくちょく通いたいところだがこの人数だと出費が痛い。
「ミウさーん」
レリスが抱き着く。
「駄目?」
もちろん良いよ!とは言えず俺はイヴを恐る恐る見た。
「妾は構わん。相手がそ奴等なら差程殺意も湧かぬ」
いや殺意って…まあお許しが出て安心した。
「ありがとう。2人ともこの後平気?」
「あたしは全然平気だよっ!お姉ちゃんは帰ったら」
「なによレリス!」
「まあまあ。ルムリスちゃんも平気だよね」
「もちろんですっ」
「妾はギルドに行って冒険者登録をする」
「俺達もお供しますよ姉さん」
「うむ」
俺達は今夜のイヴの試合時間まで解散した。
それから俺と猫耳姉妹はちょっと良い感じの休憩宿に行って3P…は流石に2人とも嫌がり、正直それは俺も抵抗があったのでルムリスが食堂で昼食を摂っている間にレリスを抱き、入れ替わりでルムリスを抱いた。
久しぶりの性行為に少々張り切ってしまった。ぐったりして眠っている猫耳姉妹を両脇に抱え、夕方までぐっすり寝た。今日は素晴らしい日だ。
2人を見送る時に教えてもらったが、なんでも最近魔物が活性化していて薬を求める冒険者や傭兵や騎士がお店に殺到してるらしい。
「薬草を取りに行って調合して接客販売して…毎日本当に忙しくて。お父さんがさすがに休もうって今日は無理やりお店を休みにしたんです」
「そうなの…だから暫くはミウさんと会えないかも」
と2人は寂しそうに言っていた。俺も凄く寂しい…がイヴとの約束もあるし今後は安易に女性を抱くことは禁じるつもりだったから丁度良かったのかもしれない。
ルムリス達と別れ、闘技場に向かった。
「あ、ボス!」
「揃ってるか」
「はい!姉さんは選手控え室に行きました」
「そうか。行くぞ」
場内は既に満員だった。今日が決勝戦かもしれないからな。
「皆様にお知らせします!本日は優勝者決定戦です!」
「おおー!」
「いよいよあの2人が戦うのか!」
場内の熱気が最高潮になった。
「それでは剣のゲートより雷帝ユビール!盾のゲートより妖姫イヴカロンの入場です!」
いや妖姫って…でもまあ何となく合ってるかも。
「やっちまえ姉さん!」
「イヴ姉さん頑張って!」
ミゥーズ傭兵団が声援を贈る。
審判が試合開始を告げた。




