雷帝
「突然だが傭兵団の名前を発表する。お前達は今から『ミゥーズ傭兵団』と名乗れ。隊長と副隊長は様子を見て俺が決める」
「うおおっ!」
「格好いいな!」
「俺達はミゥーズ傭兵団だ!」
嘘だろおい、そんなに喜んでくれるのか。これは面倒臭くて適当に考えたなんて言えないな。
「先ずは防具店と武具店に行く」
元傭兵部隊の7人はちゃんとした装備だったので安く済んだが問題はハイエナ達だった。言い方が悪いがボロい装備だったので全員に武器と防具を買い与えたら所持金がほぼ失くなってしまった。お金には余裕あったのに。皆喜んでくれたのは嬉しいが…どうしよう。
「報酬の良いクエストがないかギルドに寄ってみるか」
「ボス、手っ取り早く稼げる所がありますぜ。ボスとイヴ姉さんなら余裕で大金が手に入るぜ」
「何だよそれ、クエストじゃないのか?」
「ズバリ闘技場っす」
聞いたところ王都の闘技場で開催されている決闘大会の優勝賞金がなんと300ケルンらしい。何が良いって1ヶ月に1度とかではなくもっと頻繁に開催されてるという点だ。参加費は30ケルン。何が起こっても自己責任、命の補償無し。まあそんなものだよな。
「イヴ、明日参加する。今日は体術と剣術を教えてくれ」
「妾が今日参加してもよいのだぞ」
「加減できるのか」
「失敬な。それくらい容易いわ」
「分かった。じゃあ参加手続きしよう」
参加費を払い、参加バッチを受け取りイヴに渡した。試合開始は夜になってから。相手は運営側が勝手に決める。相手が降参、戦闘不能、死ねば試合終了だ。
「ボス、俺も出場してえ」
「やめた方が良いぜ。リーダーがビビって参加しなかったくらいだ。恐らくAランク以上の戦士がいる」
「おいおい嘘だろ。Aランク以上だと!?」
「お前らはBランクだろ。Aランクってそんなに違うのか?」
「ボス、AランクとSランクの騎士や傭兵や冒険者は異次元レベルなんだぜ」
「Aランクに上がると二つ名が与えられ、冒険者カードに記載されるんですよ。大仰を成し遂げないと昇格できないみたいですけど」
ふーん、そうなのか…って待てよ。イヴってランクにしたらAぐらいなのかな…大丈夫、だよな。
それから俺達は王都付近の『ユイナ台地』でイヴにみっちり鍛えられた。
俺は自分の無力さを痛感した。創造魔法と契約による恩恵が無ければきっと俺はミゥーズ傭兵団以下だ。早く強くなりたい。
夕方まで鍛練し、イヴの試合が始まる頃に切り上げた。
俺を含め皆でヘトヘトになりながら闘技場へ向かった。
「では行って来る」
「イヴ、油断せず手加減も忘れずにな」
「うむ」
「姉さん頑張ってくれ!」
「観覧席から応援するぜ!」
「イヴ姉さんなら余裕ですよ!」
イヴは黙って頷いてから選手控室に向かった。
場内には物凄い人数が入っていて異様な熱気で包まれていた。
皆刺激を求めてるのか、大いに盛り上がっている。
審判が大声で更に場内を盛り上げてから戦士入場が始まった。
「剣のゲートから現れたのは初参加の奇異な雰囲気を纏った美しき戦士イヴカロン!」
いきなりか。相手がもしAランク以上の奴だったらどうしよう。と今更心配になってきた。
「姉さん頑張れー!」
「やっちまえ姉さーん!」
ミゥーズ傭兵団が熱い声援を贈るがイヴは少し迷惑そうだ。恥ずかしいのかな。
「盾のゲートから現れたのは数知れぬ戦士達を壊し再起不能にしてきた凶暴な男、破壊者ダウロス!」
「うおおー!」
場内に歓声が溢れる。まずいな、闘技場の常連戦士ってことはかなりの実力者か?
「ルールは簡単!降参、戦闘不能、殺されたら敗けだ!それでは試合開始ーっ!」
「へへ、あんたみたいな美人をぼろ雑巾みたいにするのが俺の…」
ゴキャッ!
頭を掴まれ飛び膝蹴りを食らったダウロスは白目を剥いて倒れた。
生きてる、よな。イヴが俺の方を見てどうだと言わんばかりに得意気な顔をした。敢えて血刃魔法を使わなかったな。
「うおお!あのダウロスを一撃で倒したぞ!」
「あの女、何て強さだ!」
「雷帝か白嵐とやって欲しいな!」
雷帝と白嵐?そいつ等がトップファイターって感じなのか。もしかしたらこの後現れるかも。
イヴが観覧席にやって来た。
「お疲れ様」
「うむ。なんとも歯応えの無い相手じゃった」
「流石姉さんだぜ!」
「姉さんの強さと美しさには惚れ惚れします」
結局その日は強そうな奴は現れなかった。
次の日、俺も参加しようと思ったがよく考えたらこの回の優勝者が決まってからでないとイヴと当たる可能性がある。と言う訳で今回はイヴに任せることにして鍛練に時間を費やした。
今更ながらミゥーズ傭兵団を連れて市街地を歩いていると皆に避けられてしまう。完全にヤバい集団だと認識されている様だ。それにたまには1人の時間が欲しい。ルムリスとレリスにも会いたい。
「イヴ、今度ギルドに行って冒険者登録をしよう。いつかはここアルディアを経つからな」
「うむ」
その夜、イヴはまたもや圧勝。続く試合に雷帝と呼ばれる戦士が現れた。
「皆様お待たせしました!遂にこの男が登場!降参した相手を平然と殺す容赦の無さとド派手な技の数々!31戦無敗、雷帝ユビール!」
「あいつ…」
「よくぞ気付いた、上手く擬態しておるが魔人族じゃな」
イヴに言われ納得した。見た目はごく普通の青年だが何と言うか、違和感が半端ない。
それにしても魔人族とは縁があるな。
「うっしゃー!!」
ユビールが両腕を掲げると大歓声が沸き起こった。
こいつがどれ程強いのか気になる…多分イヴと当たることになるからな。




