第四十九話 強行突破①
車から下りた三玲は、木々の間をしばらく進んだ。
テレビ局の屋上で、ビデオカメラの映像と実際の三橋山の位置から正確な落下地点を割り出していた。
だから、あと二分ほど行けば到着する。
と、急に右足が動かなくなったので、一旦立ち止まり、手で何度か叩いて動作を回復させる。
その分だけ遅れてしまったものの、百三十四秒後、三玲の目の前にそれが現れた。
木立を押し分けるようにして、ぽってりとしたカブトムシのような形をした小型の乗り物が浮いている。
が、胴体の側面部分が開いていた。
三玲が中を確認してみると、何もなかった。
どういうこと………!?
どうやら、予想外の事態が発生したようだった。
三玲はすぐに左の袖を少しまくり、ささやきさんの発信スイッチを押した。
そして、その様子を監視するかのように、木の陰に隠れて黄色メガネがホバリングしていた。
◇ ◇ ◇
その頃、カブトムシ型の司令船のおでこの角の部分に、紫メガネが接触しようとしていた。
が、そんなことなど知る由もない九恩は、機内でまだ映像データの加工をしていた。
膨大な量なので、ほぼ丸一日かかる大仕事だった。
にもかかわらず、それを毎日行っていたのは、まだ自分なりの答えが見つからないからだった。
リーン! リーン!
と、その時、背後から虫の鳴き声が聞こえた。
振り返ると、リンリンがいた。
それはスズムシ型の偵察ロボで、羽を立て、赤く点滅する両眼に搭載されているカメラで写真を撮っていた。
「偽装カクニン! 偽装カクニン!」
さらにリンリンが機械的な声でそう言うと、お腹の部分にある小型モノターにセルメルトが映った。
『何か言いたいことは?』
「………」
証拠をつかまれては、もはや言い逃れはできなかった。
「ありません………」
『よくも、半年もの間、騙し続けてくれたな? ただで済むとは思うなよ? 処遇は追って伝える。命令があるまでそこから動くな』
それだけ告げるとセルメルトはモニターから消えたが、リンリンはその場に残って九恩の動向に目を光らせていた。
さらには、司令船の前に紫メガネが移動してきて、その両眼をじっと操縦席に向けて外からも監視し始めた。
九恩はここが潮時だと感じた。
状況的に、これでもうコソコソする必要がなくなったからだ。
あの日以来、すべてが変わってしまった………。
それから、そう思うと、自分の身にも起きた不可解なことを回想した。
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