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第十二話 記憶の中の少女②

 あの人は何だったんだ………?


 やけに鬼気迫る様子だったウグイスバンドガールのことがまだ気にかかりながらも、ノボルは商店街を迂回する道を進んだ。


 ドラッグストアへ行って、明日の仕事に必要なものを買うためだった。


 やがて前方に薬のマークの看板が見えてくると、いくつかの商品を思い浮かべながら店内に入った。


 害虫撃退用のスプレーに液体状の劇薬、あとは人体保護用の防虫手袋と蜂の巣処理用のマスク。


 他にも役立ちそうなものはあるような気がしたが、どれも似たり寄ったりだと思えた。


 とりあえずその四点を持ってレジで精算をすませたノボルは、購入した商品をエコバックに入れてドラッグストアを出た。


 ◇ ◇ ◇


 うっすらと夜の帳が降り始めた空に、一番星がまたたく。


 ノボルは光の囁きのようなその輝きを眺めながら、自宅アパート近くにある「ひのまる屋」の前までやってきた。


 店には今日も数人の客が待っていた。


 中年夫婦が営んでいる小さなお弁当屋は、手作りの味が評判で、近所の住人を中心に人気があった。


 ノボルが二つのケースとエコバックを抱えて列の最後に並ぶと、レジで会計をしていた奥さんのほうがそれに気づき、厨房にいる旦那に一声かけた。


 注文するのは、いつも野菜コロッケ弁当。


 だから、ノボルの代わりにオーダーしてくれたようだった。


 その間にも、何組かの客がノボルの後ろで順番待ちをし始めていた。


 そして、前に並んでいた人たちが一人ずつ出来たてのお弁当を買って帰っていくと、奥さんがノボルに近づいてきた。


「今日は大荷物なのね?」


 そのあとで、小声で言う。


「コロッケ、今日も一つサービしておいたから」

「すいません、いつもありがとうございます………」


 ノボルはニコっと笑う奥さんにお礼を伝えると、ホカホカのお弁当の入った袋を受け取って代金を支払った。


 それから、香ばしい揚げたての匂いを嗅ぎながら通りの角まで行くと、廃業した文房具屋のシャッター前にいつものものがあった。


 占いブースのように、布を被せた一人用のテーブルが一つ。


 その右側に、縦書きで【何でも掬(すく)い屋】の看板。


 左側には子供用のビニールプールがあり、袋に入れられた玩具やお菓子が浮かんでいる。


 流しの的屋さんか何かかな………?


 ノボルはそう思いつつも、やっぱり違うような気がしたりする。


 お祭りがあるわけでもないのに、必ずそこに姿があったからだ。


 にもかかわらず、客がいるところは一度も見たことがない。


 かといって、積極的に集客に励んでいる風でもない。


 ひょっとしたら、見た目に問題があるのかも………?


 店主らしき老婆が着ているのは、黒いマントのようなもの。


 フードがついているので、顔もすっぽり覆われていてよく分からない。


 しかも、いつだってただ椅子に座り、膝の上の数匹の子ネコを撫でているだけ。


 ネコたちは毛が汚れていたので、捨てられていたのを拾ってきたのかも知れなかった。


 さらに、テーブルの上には、木製のスタンドに乗せられている手鏡と、その横にある砂時計。


 どう考えても、怪しいと思われてしまう要素が多々あった。


 だからノボルはブースからやや距離を取りつつ、足早にその前を通り過ぎた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


“何となくいい感じ”と思われましたら、広告の下にある「ブックマーク」と「☆☆☆☆☆」のポイント評価をいただけると嬉しいです^^


これからも、皆さまに楽しんでいただける作品を作っていきますので、よろしくお願いしますm(_ _)m

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