表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君色 ~君は何色に染まる?~  作者: 林 凛夏
7/12

6.一緒に青春しようぜ!?

「はいっと、ここが握手会場っていうかそうなってるブースね。まずSCAIRの基本情報からだけど…。美曲、メンバー何人いるか知ってる?」

 なんかここについた瞬間、ぶわっと熱気のようなものが私の体にふれて消えた。

 すごい。何が、ってわけじゃないけどここはたぶん―――

「ん-。適当に5人とか?」

「お。いい線いったね~、惜しい!正解は4人でした!」

 “好き”であふれてる。

 由紀を含めたファンの、この会場にいる人たちの“楽しい”とか“うれしい”とかのぽかぽかする感情と一緒に、ここにはこんなにもたくさんの笑顔があふれてる。


「ざっとSCAIRについて説明しちゃうね~。

まずメンバーは今言った通りの4人。全員高校生で、このユニット名も『Schoolスクール Idolアイドル AIRエアー』の略称ね。なんていっても売り出しポイントは、この高校生ってとこにあって。メンバーと一緒に青春しようぜって感じね」

 へぇ、高校生か。アイドルしながらの学業って大変そうだな。

 というかコンセプトは『一緒に青春しようぜ』なんだ。なんというか……軽いな。

 チャラそう。


「まあ、この売り出し文句はちょっと三流っぽさが出てる気もしなくもなくもないんだけど」

「え、ど、どっち?」

 え~と?しなくもない、が“する”ってことだから、しなくもなくもない、は“しない”ってことかな?

「あ~もう、この際どっちだっていいの。とりあえず次はメンバーの紹介ね」

 指折り数えてどっちなのかを考えていた私に由紀は少し怒りながら、それでも親切にSCAIRの説明をしてくれた。


「メンバーは、秋川陽華あきかわようか河海秋桜こうみしゅうおう佐山蓮さやまれん星宮紫陽ほしみやしよう。あ~順番は五十音順にしてるだけで、年齢の順にすると秋桜くんと紫陽君が18歳、で陽華くんと蓮くんが17歳って感じ。それぞれのメンバーの特徴とか話し出すとたぶん止まらなくなるんだけど……。きく?」

 名前だけ分かってもなぁ……。

 名前からその人の性格が分かるわけでもないし。って、だめだ、こんな考え方しちゃ。

「え~wwさすがに名前だけだと判断できなくない?」

 ちゃかして少し軽い言い方を意識っと。

「ま、そだよねwwじゃあざっと説明してくね」



「まずは秋桜くん。長身でゆるい雰囲気をもってるお兄さん的存在かな。ふわふわしてるイメージ。紫陽くんは一言でいうとエロい。色気がやばいよ、もうおんなじ高校生とは思えないくらいw

蓮くんは子犬系男子っていう鉄板に加えて、ツンデレ要素を兼ね備える男の子ってかんじ。で、最後に陽華くんは私の推しであり、爽やかイケメンを体現させている救世主だよっ!

もうほんと、彼からα波出てるんじゃないかな。この世の何よりも尊い。神様、仏様、先祖様」


 んんっと……?最後は完全にまた由紀の世界に行ってしまったよね?

 ええと、とりあえずこのグループって、

「なんかすごいよくある少女漫画みたいな設定」

 主人公がいて、その周りにきらきら男子集団がいて――みたいな。

「お、分かってるじゃん美曲!皆ちょー美形なんだよ。視力回復するから!!」

 由紀……、なんかスイッチはいっちゃたのかな?

「あ~、美曲そんな顔で見ないでよww」

「そんな顔って?」

 変な顔してたっけ?

「若干ひいてる顔してるwま、しょうがないのかもしれないかもだけど。ヲタクって結局は“普通”の人とは違う存在だからね」


 “普通”かぁ。

 私が意識してること。

 平凡な生活が続くこととか、その他大勢にまぎれられるような存在であること、とか。


 そう思っていたのに。

「ふつうが全部じゃないと思うよ。ヲタクだからってひいてるつもりなかったし。あ、でもそう見えちゃったのは私のせいだからあんまし強くは言えないか」

 今、私なんて言った?

 『ふつうが全部じゃない』って、まるで私自身の奥底に眠っている言葉だったみたいに口からするっとこぼれ落ちた。

「っ!?」

 目の前にいる由紀が鋭く息をのんだ音がきこえた。

「由紀の好きって気持ちがいいなって少し嫉妬しちゃっただけだよ、変な顔になってたの」

 沈黙に耐えられずついつい余計なことをまたこぼれ落とす。

 こんなこと、だれにもいったことないのに。

「……そっか」

 震える息とともにきこえた彼女の声は喜びの色をほのかに灯していた。

 その理由は分からないけど、でも言ってよかった、ってなぜだか強くそう思った。



「会場にご来場の皆様、本日はSCAIRの握手会にご参加いただきましてまことにありがとうございます。

これより各ブースにて、アイドルたちとの握手会を開始いたします。まことに申し訳ありませんが、お一人様最大2分までとさせていただきます。

本日、天気が良くこれからまだ気温が上がる予報となっていますので、水分補給を十分に行い、日陰に入って休憩するなど熱中症に十分お気をつけ下さい。

それでは、皆様よい青春を!!」



ちょうどいいタイミングに放送が会場全体に響く。

よく通る、若い男性の声。この人の声、落ち着く色をしている。

「この声の人、だれ?」

「え?あー、スタッフさんのだれかでしょ、たぶん。それかアルバイトの人か。ま、とりあえず握手会始まったから、そろそろ行かなきゃ!はやく来た意味がなくなっちゃう!!」

 由紀の意識はもうアイドルたちに向かっているのに、私は放送していた人のほうが気になって仕方がない。

「ブース、近いところから――」

 何か話してくれていたのに、私はそれに対して

「おけ~」

って生返事して。

 その間に彼女は自分の推しのもとへ進んでいたみたいで、はっと気づくともうそばには彼女の姿がなく、少し熱が残った手をぶらっとさげた私だけがのこっていた。

よしっ!

次こそSCAIRのメンバーが登場します!!

美曲が握手するのは果たしてどのメンバーでしょうか?

お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ