神隠し90
ダイニングルームへ用意されたのは、一般的な朝食だった。
香ばしくトーストされたバケットのスライスへ、香草とニンニクを入れたバターを塗り、削りチーズが掛かったのがメインだな。
カリカリに揚げ焼きしたベーコンと、フワフワなオムレツ。
オムレツには、フレッシュトマトを刻んだ物と葉野菜、茸を軽くソテーした物が巻かれていたぞ。
それにスープ、ミルク、カットフルーツが付く。
朝食としては充分だろう。
美味しくいただくと、食後の珈琲が出てきたよ。
これは、うれしい。
焼きたてパンの薫りと珈琲の薫りには、目覚めの効果があるのだとか。
おかげさまで、更にスッキリとした目覚めへとね。
食事を終えてマッタリとしてある俺へエルドリア・メイド長がね。
「寝室でのご朝食もよろしいですが、朝餉処でご朝食も、時にはお食事くださいまし。
各朝餉処の厨師達も、お待ちしておりますので」
そんなことをな。
いや、ちょっと、待ってぇ~なぁ。
確か、さぁ…朝餉処、昼餉処、晩餐処と別れているにも関わらず、それぞれが、それぞれ、複数存在しているっと、言うことだったはず…
つまり、朝食を取る場所だけでも複数の場所が存在し、それぞれに調理人が待機していると、言うことだな。
でぇっ、各場所で働いている料理人達が、この層、つまり葵層の主である俺が来るのを待っているっと…
いやさぁ…まさか、それ全てを、巡れと?
う~ん、毎日、違う場所で食事をすれば、まぁ…ねっ。
気分は外食なんだが、それは自宅食と見做される訳で…
うん、訳分からん過ぎるぅ~
でな、明日からは、各食事処を巡りつつ食事することに…
決定ですか、さいですか。
そんなことはあったが、朝食が終わる。
でぇ、これから、何すんの?
何も予定は聞いてはいない。
これから…なにすんの?
あっ!休みなの!休みぃっ!
自宅が確定したってことは、部屋でゴロゴロってね。
うんね、今日は、部屋から出ないぞ、俺っ!
えっ!ダメ?
なんで?素敵な案だと思うんだけどさ。
え~っとぉ…色んな方から挨拶と言う名の面会依頼が?
断って良い?
あっ、良いの?
じゃぁさぁ、お断りの方向で。
んっ?上皇様と上皇妃様を含む皇族の方々?
それって、断ったらヤバイやつだよね?
えっ?天位は皇族より位は上だから、断っても問題は無いって?
いや…それは、さぁ…ダメなんじゃね?
他の貴族の方々からも…
う~ん…アリンさんとヒューデリア嬢の身請け先となったロルフ家とは、挨拶した方が良いのでは?っと思うが、ロルフ家は曹位7家の1つだ。
曹位の上に丞位3家が、その上に皇家となる訳だな。
そうなるとだ、ロルフ家へ挨拶を赦せば、曹位7家に属する他の貴族家に不満が溜まるだろうし、更に丞位3家にも不満が溜まるだろう。
俺は最高位だから、俺へ不満を告げる訳にもいかない。
だが、ロルフ家へ、その不満が向かう可能性がな。
とは言え、曹位7家と丞位3家の全10家の全てとの挨拶を?
皇家は別としてもさ、非常に面倒臭いんだけど…
そう告げるとさ。
「なれば宴席を設け、挨拶したい貴族を招待なさっては如何かと。
さすれば、1度に挨拶を終わらせることができまする。
いかが?」
いかが?って…宴席ねぇ…
敷居が高いが、個別に挨拶を行うのも、同じように敷居は高いよな。
それを1度に終わらせられるなら、それも良いのか?
少し考えてみようかな?




