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神隠し79

さて、ルマド(じっ)様執事に納得していただけたようなので、爺様執事にエスコートされながらヴァルハラ館へと。


う~ん、なんて王宮?

入って直ぐに大ホールは、まぁ、ね。

巨大なシャンデリア柱も、ご愛嬌。


でもさぁ…


「なんで…いきなり滝に小川?

 木が生えとるがなぁ~」


確かに元王宮だから玄関ホールが広いとは、予測はしていた。

だが、広さの規模が違ったようだ。


俺の予測を嘲笑うが如き光景が広がってんぞ。

無秩序ではない。

実に洗練された自然と調和する形のコーディネートがなされたインテリアが配され、玄関ホール(てい)とでも言えば良い空間が広がっていた。


余りな光景に唖然とする俺。

関心するアリンさん。

感動するヒューデリア嬢。


「これが、ヴァルハラ館幻想ホールですか…」

横でアリンさんが、聞き捨てならぬことを!?


幻想?なんですとぉー?


「聖女様が構想され、各々の時代が生んだ天才芸術家と建築家がタッグを組んで、常に進化する芸術空間…

 1度は足を踏み入れたいと、夢にまで思っていたんですの。

 感激ですわぁっ!」


2人とも知ってたようだな。

有名なのだろう。


日本でもホテルや旅館へ入った玄関ホールで、似たような演出はなされている。

まぁ、あれは、自然を模しているが人工物であることは、一目瞭然だ。


だが、こちらは規模が違う。

人工物内の自然でも、自然の中の人工物でもない、実に絶妙な調和がなされ、融合しているんだ。


圧倒され固まる俺へルマド爺様執事がな。

「ほっほほっ、ここが、ご自宅の玄関となりますので、馴れていただかねばなりますまいな」

そんなことをな。


これに?馴れろと?………

俺の思う玄関ちゃう、(たし)けてぇ~


玄関ホールを散策するように、エスコートされ移動する。

いや、玄関内を散策って、アータ…


ホールの壁際へ、緩やかなスロープの螺旋坂が…

えっ?これ、廊下?螺旋廊下ね。

なにそれ、新しい?螺旋階段は聞いたことあったけど、螺旋廊下ねぇ…


でっ、その生き物は、何?

「これは、コニーと申します、室内移動用の小型馬でございます。

 貴人の御御足(おみあし)の足しとなるべく待機させおき物。

 さっ、葵天、どうぞ」


いや、どうぞって、アータ…

額に螺旋角を生やした小型白馬…なんてユニコーン?


いや、俺さぁ、乙女じゃないよ?

処女じゃないし、永遠に処女を失うことはないが…成れることもないしな。


何を言っとんだろ、俺?


ユニコーンったら清らかな乙女しか乗せないことで有名だ。

いきなり攻撃されんよね。


つぶらな瞳で、こちらを見て来て、鼻面を擦り寄せて来た。

あら、可愛い。


っかさ、本当に可愛い、っか、小さい。

俺の腰辺りに背中と長椅子を模した鞍がさ。

いや、本当に、この子に乗るの?潰れない?


「コニーは丈夫ですゆえ、お気になさらずに、どうぞ、お座りくだされ」

ルマド爺様執事に促され、恐る々な。


意外と大丈夫なもので、俺の体重を余裕で受け止め歩きはじめる。

楽し気な歩に、こちらの気分も高揚する感じもな。


道中に設けられた寛ぎ処で休みつつ、俺へ割り当てられた部屋へと。

つか…俺、ここで暮らすんだよな?


遣って行けるんだろか?

不安………

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